服従

制作 : 佐藤優 
  • 河出書房新社
3.55
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感想 : 113
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206783

感想・レビュー・書評

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  • フランソワの孤独で憐れな感じがことごとく胸に突き刺さってきて、読むのが辛くなるほど気が滅入った。ミリアムの家族を見たときの彼の泣き出しそうになる気持ちなど特に…。
    そして父親の予想外の晩年を知ったことからの変化。
    フランソワの決断は、孤独から逃れることと、心に芽生えた微かな期待に対して夢見たんじゃないかと思ってしまった。
    2022年フランスにイスラーム政権誕生、という衝撃の内容。

  • 佐藤氏の解説「人間の自己同一性を保つにあたって、知識や教養がいかに危ういものであるかということがわかる」これがとても的を射ている。いつの時代も誰においても、内的生命力の衰えや心身の疲労疲弊は、人を危うい方へ誘う。新しく何かを行うのには、エネルギーが必要だから。力が衰えたとき人は服従をのぞみ、そこに幸福を見いだすのか。

  • # 服従

    フランスの大統領選挙で、極右政党とイスラーム政党の決選投票となり、負けた現政権政党はファシストよりはましだとイスラーム政党を支持し、イスラーム政権が誕生する。

    フランソワは無神論者で政治からも一定の距離を置く文学の教授であった。大学はイスラム教徒でなければ教鞭をとることができず、フランソワは解雇される。新しい学長から改宗を説得され、フランソワは大学に復帰する。

    サウジアラビアなどの産油国の支援がある新政権は資金力が高い。ブルジョア層は優遇され、容易に新政権に服従する。大学教授も例外ではない。

    政権が変わっただけで、ここまで急に法律や大学の制度が変わるものなのかと思った。女性のファッションまでもが突然変わっている。

    始まらないうちに終わってしまった感じで、やや物足りない。ある島の可能性の方が良かった。

    - - - - - - -

    デカダンス:<blockquote>十九世紀末に起こった、芸術の一派。フランス象徴派の、極端に洗練された技巧を尊んだ芸術家の一派。転じて、病的な感受性を重んじ、唯美的で背徳的な傾向。</blockquote>

    <blockquote>「『O嬢の物語』にあるのは、服従です。人間の絶対的な降伏が服従にあるということは、それ以前にこれだけの力を持って表明されたことがなかった。それがすべてを反転させる思想なのです。わたしはこの考えを私と同じ宗教を信じる人たちに言ったことはありませんでした。冒?的だと捉えられるだろうと思ったからですが、とにかくわたしにとっては、『O嬢の物語』に描かれているように、女性が男性に完全に服従することと、イスラームが目的としているように、人間が神に服従することの間には関係があるのです。</blockquote>(P.251)

  • おもてたんとちがーう!って感じ。
    キリスト教的価値観の転覆、というかイスラム教がヨーロッパを救う。という思考に驚いた。西洋知識人の中年のクライシス、緩やかに死んでいくことに対する恐怖と重ねる筆致は直ちにそういった価値観を賞賛する訳ではないだろうけど、うーん、問題作であることは確か、という感じ。政教分離が(表向きにしろ)当たり前と考える日本人としての受け止め方と、血生臭い歴史の結果、それを勝ち得たフランス国民の受け取り方は当然異なるだろうけど、現状にウンザリしているためにキリスト教でない宗教に対してその揺り戻しを期待する、という考え方は本当に恐ろしいことだ。この小説を読む限り大いにあり得ると思わされるだけに!

  • 出だし3ページで挫折。すみません。

  • 2022年フランスにイスラーム政権が誕生したという設定の小説。あっさりとイスラームに迎合するフランス教養人の姿。佐藤優の解説で理解が深まった。

  • テーマは秀逸なのに、中身がクソつまらない。
    86ページで挫折。

    フランスでイスラム政党が政権を握るらしい。

    こんな面白いテーマで、翻訳も悪くないのに、余計な話ばかりで飽きた。

    やっば海外ものは苦手だ。

  • 『ぼくは、自分が自死に近づいているという気がしてきた。絶望や、特別な悲しみを抱えているわけでもなかったが、単に、ビシャが語っているような、「死に抵抗する機能の総体」がゆっくり崩壊していると感じられたのだ。

    生きたいという欲求だけでは、平凡な西欧人の人生に次々と現れる苦悩と厄介事のすべてに対抗するには、明らかに十分でなかった。

    ぼくは、自分のために生きることはできなかったが、では、他の誰のために生きてきたというのだろう。ぼくは人間に興味を持っておらず、むしろそれを嫌っていて、人間に兄弟愛を抱いたことはなく、人類をさらに小さい枠に区切って、たとえばフランス人とか、かつての同僚などに限定したとしても、厭な気分になるだけだった。』

    フランス大統領選の前に。感想は政治的・宗教的な話なので控えます。

  • 河出ー!すきだー!

  •  フランス近未来小説? 穏健派イスラムが政権を取り、次第にイスラム化していく社会。知識人たる大学教授たちは、自らの幸福のために、改宗していく。

     フランスがイスラム化するかどうかはともかく、主人公にフランス知識人を代表させているとすれば、フランスの知識人たちは「知」よりも「痴」に生きているということ。本当のテーマは知識人の没落、というところではないか。

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。他に『ある島の可能性』など。

「2023年 『滅ぼす 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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