服従

制作 : 佐藤優 
  • 河出書房新社
3.55
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本棚登録 : 1073
感想 : 113
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206783

感想・レビュー・書評

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  • イスラムの政権ができる

    軽犯罪が減る 失業率が現象(女性の退場) 家族手当上昇 教育費を当てる 義務教育は12歳まで 職業教育が奨励 中等高等教育は私立へ
    2番目の妻を娶る

  • このディストピアはあまりにも唐突すぎる。イスラームとこのディストピアを結びつける説明がまったくない。
    この部分がこの小説のトゲ。

    以下引用

    チェスタートンとベロックが導入していた政治哲学の根本的な要素のひとつは「補完性原理」だった。その原理によれば、どんな実体(社会的、経済的、政治的)も、それより小さい単位の機関に任せうる機能を担ってはならない。教皇ピウス十一世は、回勅「クアドラゲシモ・アンノ」にて、この原理に次のような定義を与えている。「個人企業や工場が達成しうることを個人から取り上げて共同体に与えるのが良くないことであるように、より上位で大きな組織が、より下位の小さい単位によって効率よく実現されうる機能を剥奪することは、不公平で、真剣な悪であり、あるべき秩序を妨げる」。ベン・アッベスが思いついた新しい機能とは、この場合「あるべき秩序を妨げる」のは、国という大きすぎる単位による割り当て、つまり社会保障そのものであるという内容だった。p202

  • 近い将来、この本に書かれている展開は全世界で、とりわけ閉塞感で息詰まる寸前の日本でも起こるかもしれないと肌で感じさせる小説だ。日本人の一部はそれを恐怖と思い、他の一部は期待に胸を震わせるのなら、すでに日本社会は、また価値観は断絶しているのである。金属疲労したすべての資本主義社会への警鐘か。

  • フランスを舞台にした近未来小説。本当にあり得るかもと思わせる設定、流れの緻密さと、そこで生きる主人公の大学教授の生き方に対するなんとも言い尽くせぬ皮肉感。最後の選択の理由はそれなのか?!となるけども、実際そうなのかもな…と思う自分もいたり。この帰結がウェルベックのヨーロッパ的なもの、自由主義的なものに対する正直な印象なのかも。それがいいとか、わるいとかでなく。

  • 聖職者の教えを歴史人はどう解釈していったのか。
    今までも多くは男性が解釈し、文章化されて宗教として成り立っている。
    「服従」を読んで宗教というものを考えさせられた。
    多くの女性は、この本を読んでどのように感じるのか
    宗教的文化圏によってさまざまであろう。

  • 2022年、フランスにイスラム政権が誕生し、その流れが欧州・中東・アフリカを巻き込んで加速していくとしたら?

    第一級の扇動者かつ快楽主義者であるミシェル・ウエルベックの最新作。彼の作品はどれも高いクオリティを保っており、読んで損をすることはないが、本作もそのクオリティの高さに舌を巻く。

    ウエルベックの多くの作品がそうであるように、フランスにおける実在の人物や現代を出発点とする本作では、フランソワ・オランド率いる社会党とジャン=マリー・ル・ペン率いる国民戦線という左派の政治対立の中で、イスラム穏健派政党が躍進し、ついには社会党との連立という形でイスラム穏健派政党による政権が成立する架空のフランスの姿を描く。その歴史の中で、一人の文学者を主人公として、彼が属するアカデミックな世界がどのようにイスラム化の流れに対抗しつつも飲まれてしまうかを戯画的に暴きだす。

    ウエルベックの多くの作品においてはセックスが重要なモチーフとなるが、本作でも主人公の自由な性愛が描かれる。社会のイスラム化が進行する中で、大学教授の職を継続して得るために主人公がイスラム教への改悛を迫られるが、その決め手となるのが一夫多妻制であり、そこにはつまるところ、「キリスト教であれ、イスラム教であれ、結局男は快楽を求めるだけだ」というウエルベックの悪意が表れている。

    伝統的な西欧社会、来るかもしれないイスラム社会の双方に唾を吐き捨てるウエルベックの悪意はたまらなく美しい。

  • パリでのテロ事件が起こり、今読むべき本として読んだ。
    今回のテロ事件のため、この小説のように現実はいかないだろうが、ヨーロッパ特にフランスにおいてイスラムが勢力を増している状況はよく理解できた。

  • 出た時に話題になってるのは知ってたんだけど、ウェルベックって前に何か読んでちょっと合わなかった気がしてたんでスルーしてました。そこへパリの同時多発テロが起こって、ふらふらっと買ってしまいましたとさ。
    オモロい。極右vs穏健イスラムってのはなかなかにおもしろい思考実験。そしてイスラム政権下のフランスの描写の不気味さ。なるほどね、という感じ。
    唯一難を言うなら、解説佐藤優はないわ。何か読後感全否定されたような。普通に訳者解説でええやん。

  • 2022年にフランスにイスラーム政権が誕生するという仕立ての小説。主人公はなんともダメな大学教員で、他人事とは思われない展開。

    戦慄したのは下記の部分。知っていたことだけれども。
    「彼らは、通常の政治的に重要な点にはほとんど関心がなく、特に、経済をすべての中心に置くことはありません。彼らにとって不可欠な課題は人口と教育です。出生率を高め、自分たちの価値を次代に高らかに伝えるものたちが勝つのです。彼らにとっては、事態はそれほど簡単なのです。経済や地政学などは目くらましにすぎません。子どもを制するものが未来を制する、それ以外にはありえないのです。」(p.78)

    解説にもあるように、イスラームの脅威というよりは自滅するヨーロッパの物語だった。

  • 【選書者コメント】フランスで大学教授職を得るのは、少し日本とプロセスが異なるようだが、その難しさはあまり変わらないようだ。ウェルベックのSF小説。
    [請求記号]9500:647

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。他に『ある島の可能性』など。

「2023年 『滅ぼす 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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