- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334043186
感想・レビュー・書評
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第Ⅰ部 地べたから見たブレグジットの「その後」
ブレグジット決定及びその前後についての概要。ブレグジットを思い返す時に参考になるであろう、コンパクトにまとまった導入部。
第Ⅱ部 労働者階級とはどんな人たちなのか
タイトル通り、イギリスの労働者階級についてのレポート。特に著者(元々は著者の夫)の友人達6人へのインタビューはこの本の白眉だと思う。
第Ⅲ部 英国労働者階級の100年
オックスフォード大学の歴史学者セリーナ・トッドの著書『ザ・ピープル イギリス労働者階級の盛衰』(みすず書房)のダイジェスト版。労働者、と言うより、労働党の100年を追ったもの。分かり安くまとまっているとは思うが、1945年のピープルの革命を至上とし、労働党左派(と言う表現があるのか分からないが、日本でのかつての社会党左派の様な感じか?)に与する記載にやや偏りは感じる。
ブレイディみかこの著書を他にも読んでみたくなった。
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EU離脱(ブレグジット)を支持したイギリスの白人労働者階級とはどのような人達か、何を考えているかについて、歴史と身の回りの視点から論じる本。
イギリス有権者には、EU議会と英国議会について考え方の違いがある。前者は強く自国の利益を主張してほしいが、後者は現実的な運営を望んでいる。またEU離脱支持者は排外主義者と捉えられがちだが、トランプ支持者層とは重ならない。
第2部では、インタビューと社会調査の結果からみた白人労働者階級の実態を語る。前者のインタビューはあくまで著者の身の回りの人に対するもので正式の調査とは言い難い一方、個人的な長い付き合いを通じての厚みがある。後者は主にジャスティン・ゲストのエスノグラフィー調査の結果(p136)に基づく。
白人労働者階級はマジョリティの中の下層民であり、被排除感、無力感、被差別感を覚えている。アメリカとイギリスでは違いがある。ブレグジットを後悔はしていないものの、移民に関する考え方はアメリカより現実的で、文化より経済的動機がメインとなっている。問題は移民政策ではなく緊縮財政の方にあると著者は主張する。
第3部ではイギリス労働者階級の歴史。この内容はセリーナ・トッド『ザ・ピープル』[ https://booklog.jp/item/1/4622085143 ]のダイジェスト版のようなものだと筆者が書いているので、詳しく知りたければそちらを読むべきだろう。
戦前の家事奉公、1930年代の大量失業と家計収入調査への反発。あくまで上と下の戦いであったため、イギリスの労働者階級はファシズムに流れなかった。
1945年、チャーチル率いる保守党が選挙で敗れ、労働党のアトリー政権は1951年まで完全雇用の実現と住宅問題、NHS(国民保健サービス)に取り組む。1950-60年代消費が伸び格差が広がる一方、労働者階級が新たな文化の担い手として注目される。1960年代、労働組合の闘争が激化。
1976年にイギリスは財政破綻を宣言し、IMFの救済を受けための条件として労働党みずから緊縮財政方向に転換する。1979年サッチャー政権が成立、労働組合の衰退と格差の拡大につながる。1990年代以降は雇用の流動化が進み、労働者もまた自己責任論と人種で分断されるようになる。
アメリカとイギリスの違いはあれど、[ https://booklog.jp/item/1/4000613006 ]と驚くほど似ている。
まえがきの一文が良い。
「わたしは彼らのど真ん中に生きているのだ。/家庭の内外で彼らと生活している人間にとっては、単純に「理解の範疇を超えている」と上から目線で批判しておけば終わる問題ではない。なぜならわたしは、これまでも、これからも、彼らと一緒に生きていくからだ。/そんなわけで、よく理解できない事柄に出会ったときに人類がせねばならないことを、いまこそわたしもしなければならない、と思った。勉強である。(p7)」 -
社会で起こっていることを、できる限り適切に理解することの重要性。
イギリスの誇り高き労働者階級について。 -
1970年ごろの状態は今の日本とよく似ている。労働者が立ち上がった1920年の段階にまだ、日本はなってない。その英国でもまだ、左派は勝てない。働かない人には冷たい社会。働かないと、働けないの差は大きいのに、右派はそこをいつも一緒にして、働けない人をスケープゴートにする。
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津野海太郎の連載「最後の読書」で「勉強読書」の一例として紹介されて興味を持った一冊。
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BREXIT国民投票の結果が発表され。まさかの離脱決定。冒頭著者の夫が叫ぶところから始まる。しかし夫は離脱賛成に入れていたというのが面白い。激しく面白かった「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の著者が、英国の労働者階級が何を考えているのか、あるいはここ100年の政治を振り返り、英国社会を考察するという意外と硬い本。
なかなか面白かった。
英国のテレビ番組で、離脱派と残留派の家庭の奥さんを交換して、しばらく暮らしてもらうという企画の話が興味深かった。 -
今回は速読を意識して読んだため誤読してる可能性がある。もしそのような点があれば、指摘してほしい。 EU離脱で重要になるのは「白人」労働者階級である。 彼らは「白人」であることから「人種的」にはマイノリティーではないので、彼らが貧困層であるのは自業自得と見なされ、蔑まれてきた。 そして彼らが受けるべき支援を移民達と共有するため民間医療などがインフレを起こしてしまった。 つまりブレグジットは「白人」労働者階級の反乱なのである。それを排外主義、右傾化、レイシストと扱っていいのだろうか
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今更ブレグジットのことについて。
米国のトランプ現象と、英国のブレグジットはちがうものということはわかったが、「ニューマイノリティ」と呼ばれる忘れ去られた白人労働者の反乱という意味では似ているのかな。
日本の「ニューマイノリティ」ってなんだろうって考えて社会をみてみると、おもしろいかも。
「英国労働者階級の100年」はよく理解できた。近年の労働者階級に反乱は、新自由主義的思想が社会の隅々にまで浸透してたことで、右も左も政権交代をしても、生活が変わるわけでもなく、「裕福な支配者同士の、いわばエスタブリッシュメント層内部での争い」だっていうことに対する反乱。
ブレグジットの結果はそんな意味を含んでいたのかもしれない。
また20年前のブレア政権のとった政策も影響していたってことを知った。
やっぱり大事なことは、「社会のなかで置かれている立場について学び、理解しようと努めなければならない」のかな。 -
イギリスの戦前戦後からのせいじについてもわかりやすく整理している。