舟を編む (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
4.20
  • (1999)
  • (1902)
  • (747)
  • (107)
  • (26)
本棚登録 : 19192
感想 : 1471
  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334768805

感想・レビュー・書評

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  • 初三浦しをん作品。
    辞書づくりに翻弄する登場人物の真っ直ぐな情熱と愛情が伝わってくる作品。

    兎角、物語のテーマが善き。

    本を読むことがもっと好きになれるような作品はないか。

    ここに1冊あった。

    • akodamさん
      ゆうママさん
      コメントとフォローいただきありがとうございます!
      アコダムと呼んでください。
      私の本棚、ご覧になってくださってありがとうござい...
      ゆうママさん
      コメントとフォローいただきありがとうございます!
      アコダムと呼んでください。
      私の本棚、ご覧になってくださってありがとうございます。

      私こそ、ゆうママさんの本棚や感想を拝見させていただいております。特に舟を編むの感想は、笑いながら読ませていただきました。

      私も積読退治中の日々です。読みたい積読が少し解消されたら、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」読んでみたいと思います。ありがとうございます。

      改めてこれからもよろしくお願いします!
      2021/05/25
    • アールグレイさん
      こんばんは!
      やっと全てが片付き、一息です。
      ・・・・明晩はスーパームーン、だそうです。大きく見えるそうですが、お天気はどうでしょう?
      私の...
      こんばんは!
      やっと全てが片付き、一息です。
      ・・・・明晩はスーパームーン、だそうです。大きく見えるそうですが、お天気はどうでしょう?
      私のレビュー、舟を編む、お気に召しましたか?やばい、ら抜き言葉、斜めってるでしょうか?本当のことですから。
      三浦しをんさんですが、「風が強く吹いている」勿論いい本ですが、その前に「神去なあなあ日常」「神去・・・夜話」これは面白く、読むのが止まらなくなります。夜話が続編なので、忘れずに・・・アコダムさんのことだからもう読んでいるかしら?
      私は、コメントが好きなので御覚悟を。でも、面倒くさい、忙しいという時はどうぞそのままに。
      good night☆
      2021/05/26
    • akodamさん
      おはようございます!
      今宵、スーパームーンなのですね。
      こちらの天気は晴れとのこと。楽しみです。

      斜めってる!私は「斜めっちゃってる」と今...
      おはようございます!
      今宵、スーパームーンなのですね。
      こちらの天気は晴れとのこと。楽しみです。

      斜めってる!私は「斜めっちゃってる」と今でも使ってますよ。

      三浦しをんさんはまだ、舟を編むしか味わっていないので、ゆうママさんにオススメいただいた作品たちも、今後読みたいと思います。ありがとうございます。

      今日という日1日を、お互い楽しんで参りましょう!
      2021/05/26
  • 「舟を編む」を半分まで読んだ翌朝、つまり馬締のラブレター作戦のくだりを読んだ後、私はこんな夢を見た。

    私は若くて綺麗な女性と知り合いになる。そのあと労務者2人とも知り合いになる。そのあと知り合いの先輩から、「(先輩と同じアパートに住む)あの女性が(同アパートに住むあの労務者から)目をつけられて困っている、ひいてはお前は知り合いらしいから一緒に行って談判して欲しい」と頼まれる。(以上夢なので色々長いけどかなり端折りました)
    私はその古いアパートに赴くと、ちょうど彼女が保育所から子供2人を連れてアパートの2階に上がる所だった。
    「仕事帰りですか?」私は尋ねた。驚く彼女に「先輩がこの一階に住んでいるんで、訪ねてきたんです」と言い訳をした。子供はお母さんの知り合いとわかると「こんにちは」と、はもりながら天使の笑顔を見せる。
    一階の先輩は、同じく一階の労務者の部屋に入ろうとしている所だった。用件は伝わっているらしくすんなり部屋に入る。中はかなり整頓されている。労務者は仕事場で知り合い、部屋を折半して借りているらしい。話の流れから、単に可愛い彼女を真面目に口説き落とそうと「ちょっかい」に見える口のききかたをしただけのようだ。それでも私は2人に注意する。
    「(彼女はいま一生懸命生活を立て直している最中なのだから)乱暴な口のききかたをする貴方たちの相手をするのは不安なんです」
    「乱暴な」というワードに、かなりショックを受けているようだった。2人は了承した。
    そこで夢が覚めた。
    そして呟いた。「馬鹿らしい」
    何の資格があって、私はあんなことが言えたのか?私の方がよっぽどいやらしいではないか?

    この夢を書き記している間、「はもる」という言葉がどうも気になって調べてみた。ちゃんと辞書にあった。

    ハモ・る
    〘自ラ五(四)〙 (ハモは「ハーモニー」の略) 二つ以上の声部の声、または音が、ひびき合う。ハーモニーを生じる。
    出典 精選版 日本国語大辞典
    ※「新明解国語辞典第五版」には不記載。

    実はスマホ辞書では「ハモ・る」はカタカナにも漢字にも変換されなかった。日本語になっていないのか疑問に思ったのである。スマホが認識していなかっただけで、立派な「日本語」になっていたようだ。辞書はやはり素晴らしい。ちょっとした言葉の疑問が直ぐに氷解する。「ハモる」は、いまや音楽家のみが使う言葉ではなくなっているのである。それに見合う語釈がちゃんとされていた。

    え?何の話をしているのか?だって。
    そうだった!
    「舟を編む」と私の夢とどう関係あるのか、説明するべきだった。
    主人公馬締(まじめ)は、同じアパートに住む香具矢(かぐや)さんに恋をしている。その状況が、私に往年の名作「めぞん一刻」を思い出せ、アパートの管理人で美貌の未亡人たる女性に恋する男たちの顛末を夢の中で再現してしまったということらしい。つまり、この夢の中、2人の労務者どころか、先輩も私も、2階の子供連れの女性に恋をしていたということだ。「舟を編む」の第二章の終わりで、馬締の恋は成就する。しかしあまりにも不器用な成就であった。
    馬締よ、お前の恋は羨ましいぞ!
    その気持ちが、こんな変な夢に変化したということらしい。

    いったい私は何を読まされているのだろう?

    そう思った貴方、
    正常な感覚をお持ちです。
    本来本書は『大渡海』という新しい大辞書を編纂する編集部員たちの15年に及ぶ泣き笑いの奮戦記である。もちろん汲めども尽きぬ言葉を巡るアレコレの魅力が、この小説に詰まっている。

    一方で、これは不器用な男女の恋の物語である。この書評は、それを強調せんがために書かれたものなのであった。

    (せっかく遊園地の観覧車までたどり着いた2人が)
    「俺、遊園地の乗り物の中で、観覧車が1番好きです」
    少し寂しいけど、静かに持続するエネルギーを秘めた遊具だから。
    「私も」
    馬締と香具矢は、共犯者のように微笑みあった。(92p)

    それだけで終わってしまうデートは、多分私的にはツボだったのだろう。
    同僚の西岡の恋の顛末も共感できるものだった。
    言葉にならない、その共感が、夢の形で現れたことに、私自身全く驚いたのである。
    だから言葉にした。
    「馬締が言うには、記憶とは言葉なのだそうです」(267p)
    夢の顛末と感想と。

    恋が上手くいった秘訣は、やはりあの毛筆のラブレターに違いない。「漢文は読めない」と言っていたから、江戸時代の候文なのだろうかと想像していたら、文庫本巻末に「馬締の恋文 全文公開(西岡・岸辺解説付)」がありました。ナイス!三浦しをんさん。一読、うーむ、やはり我が教養でもわかりにくいけど、気持ちは伝わるな。参考にしよう(←いつ?誰に?)。

    よし。本屋大賞一位で、読むべき文庫本は「流浪の月」のみになった。春の「52ヘルツのクジラたち」文庫化までに読み遂げるぞ。

    • Macomi55さん
      kuma0504さん
      なんて言ってたんでしょうね。^ ^
      kuma0504さん
      なんて言ってたんでしょうね。^ ^
      2023/01/11
    • bmakiさん
      面白いお話ですね(笑)
      一つの物語として、このレビューを楽しんでしまいました(笑)

      私も物語ばかり読むので、夢が超大作になることがあ...
      面白いお話ですね(笑)
      一つの物語として、このレビューを楽しんでしまいました(笑)

      私も物語ばかり読むので、夢が超大作になることがあります。
      起きた時に、あー今の世界が小説になったら凄いのに!って思うことがあります。

      このレビューを読んで、小説読みさんの夢って、やっぱり壮大なんだなぁって感じました(^-^)
      2023/01/11
    • kuma0504さん
      bmakiさん、
      ありがとうございます。
      今回は壮大ではないんですが、
      夢を見ながら、コレ全部記録できたら映画一本できるのになあ、てことはよ...
      bmakiさん、
      ありがとうございます。
      今回は壮大ではないんですが、
      夢を見ながら、コレ全部記録できたら映画一本できるのになあ、てことはよく思います。
      で、気になってevernoteの「こんな夢を見た」で検索して10個ほどの「夢メモ」読んでみたら、
      コレが見事に面白くない!
      そんなモンです‥‥。
      2023/01/11
  • 何もない暗闇、混沌が支配する暗闇。今から138億年前、その混沌の中から様々な物質に溢れた星の海である宇宙が生まれた。今から46億年前、真っ暗な宇宙空間の中に地球が形作られ、様々な生物の源に溢れた水が集まって海が生まれた。そして、海から這い上がった生き物から分岐し、今から20万年前、現世人類の誕生とともに様々なコミュニケーションを育む言葉の海が生まれた。将来星の海を旅するのに星間図が必要となるように、海を旅するには海図が必要なように、言葉の海を旅するには辞書が欠かせない。果てしない大海原で行き先を迷わないように、自分の気持ちを正しく相手に伝えるために、私たちが言葉の海に生きていく上で欠かせないもの『辞書』。この物語は人が作った言葉の海を旅するために必要な『舟』となる『辞書』を作り上げていく人たちの物語。

    『俺はどうしたって、辞書を作りたい。俺の持てる情熱と時間のすべてを注ぎ込んでも悔いのないもの。それが辞書だ』辞書作りに自分の人生を捧げてきた荒木。でもそこに定年という壁が迫ります。『辞書は、言葉の海を渡る舟だ』という荒木、その荒木を『君のような編集者とは、きっともう二度と出会えないでしょう』と熱い信頼を寄せ監修を務める松本。荒木はそんな松本の思いを託せる後任者として馬締を探し出します。名前の通りの大マジメな彼を中心に、『大渡海』という見出しの数が二十三万語、二千九百数十ページにもおよぶ辞書の編纂が本格化していきます。

    『変わったやつ』といつも思われ、人とのコミュニケーションが上手くできない馬締。『いくら知識としての言葉を集めてみても、うまく伝えられない…。伝えたい。つながりたい。』と悩む馬締は、『満月の夜に生まれた』という下宿の大家の孫娘であり、板前修行を続ける香久矢と出会うことになります。『互いに邪魔されたくないものがあるからこそ、俺たちはうまくいくのではないかと、そういう結論に達した』という二人。二人の静かな、それでいてそれぞれの仕事にかける、真摯にひたむきで、静かな中に燃え上がるような熱い情熱が読んでいてとても伝わってきました。

    『有限の時間しか持たない人間が、広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎだしていく。真理に迫るために、いつまでだってこの舟に乗りつづけていたい』強い思いで辞書の編纂を続けていく馬締。今日もどこかで、人と人とのコミュニケーションの中で、新しい言葉が海に流れ落ちる一方で、今日もどこかで人知れず、人と人とのコミュニケーションの中から消え去り、蒸発して天に戻っていく言葉がある。それらを選別し、今を生きる人たちに使える舟を編んでいく仕事。そして、その舟を編むのに必要な、それを支える多くの仕事があり、多くのプロの見えない仕事がそこにはある。

    そして、13年という途方もない時間をかけて生み出されていく辞書『大渡海』。監修者の松本は辞書作りを『海を渡るにふさわしい舟を編む』ことであると考えました。『自由な航海をするすべてのひとのために編まれた舟』それが辞書であると。我々が電子辞書やネット上で言葉を検索していると、ついついその言葉だけに意識を傾けてしまいがちですが、その背景には圧倒的な言葉が、言葉の意味が詰まった辞書の存在があります。この辞書がある安心感に身を任せて我々は言葉の海を自由に渡っていくことができます。人が作った言葉という大海原を渡っていく。でも言葉の海は時代によってもその形を、その姿を変えていきます。決して同じ瞬間などありません。せっかく出来上がった舟も言葉の海の変化に合わせて絶えず改良が必要となります。言葉の海がある限り、言葉の海を渡っていこうとする者がいる限り、舟を守っていく人たちの仕事に終わりはないのだと思います。

    一方で、幾ら素晴らしい舟が用意されたとしてもその舟を走らせる漕ぎ手がいなければ舟は動きません。海を理解して、舟の操り方を学んでいく。もしくは、舟を理解して、海を進む方法を、海というもの自体を学んで生きていくこと、これは言葉の海を作り出した人間にしかできないことですし、やるべきことでもあります。

    星の海、水の海と違い、言葉の海は人間が自分たちで作ったものです。それによりコミュニケーションが生まれ、ヒトは人になりました。歴史として受け継いできた言葉の海。時代に合わせて変化し続ける海の中で、それを大切にし、守って育んでいく。舟の力を借りて次の世代に受け継いでいく。言葉の海に生きる者、そしてその助けとなる舟の存在。それは、今後も未来永劫、人の歴史が続いていく限り変わらないものなんだ、そう思いました。

    私事ながら、この作品がブクログでの感想100冊目となりました。本の中には今まで私が知らなかった言葉が溢れていました。本を読むようになって辞書を開く回数が大きく増えました。言葉の海の中で自分の航跡を振り返り、まだ見ぬ言葉の海に想いを馳せる。100冊目というその節目に、こんなにも言葉を大切にした、こんなにも言葉に触れていくことを愛おしく感じることのできる作品に出会えてとても良かったと思います。

    無限の言葉の海に触れる喜び、読書。節目の機会に、またひとつ新たな知見を得ました。舟を編んでくれている人たちの情熱に負けないように、そしてその舟に安心して身を任せながらこれからも言葉の海を進んでいきたい、そう思います。とても大切なことに気づかせてくれた素晴らしい作品でした。どうもありがとうございました。

    • さてさてさん
      shukawabestさん、ありがとうございます。
      なんだかすごいこと書いてますよね。確かに壮大です。今読むとちょっと恥ずかしいですが(笑...
      shukawabestさん、ありがとうございます。
      なんだかすごいこと書いてますよね。確かに壮大です。今読むとちょっと恥ずかしいですが(笑)
      この当時、2020年2月から6月って私の読書&レビューの修行期間だったんです。会社から帰って毎日本を読んで、レビューを書いて、寝て、起きて、会社行って、会社から帰って…ということを繰り返しました。五か月ほどの間に150冊を読んだ!という強烈な時代でした。今考えるとよくやったなあと。まさに拷問でしたね。夜明けだ!まずい!寝られなかったよーなんて日もありました。
      そして時は経ち、お書きいただいた通り水曜日に600冊目のレビューを上げる予定です。
      「舟を編む」、読み返したいですね。睡眠不足の読書じゃなくて(笑)
      どうぞよろしくお願いいたします。
      2022/11/13
    • shukawabestさん
      すごいですね。5ヶ月で150冊。働きながらのその冊数は、なかなか身体にひびくものがあると思います。

      言葉(声)が使われるようになったときと...
      すごいですね。5ヶ月で150冊。働きながらのその冊数は、なかなか身体にひびくものがあると思います。

      言葉(声)が使われるようになったときと、文字が使われるようになったときは、人類にとっての進化だったのでしょうね。今の言葉の変遷は進んでいるのかどうかわかりませんが。

      599冊目と600冊目、楽しみにしています。ありがとうございました。
      2022/11/13
    • さてさてさん
      shukawabestさん、はい、身体と目にきたような気がします。何事もやりすぎはよくないですね…。
      言葉、文字、思えば本を読み始めたのが...
      shukawabestさん、はい、身体と目にきたような気がします。何事もやりすぎはよくないですね…。
      言葉、文字、思えば本を読み始めたのがここ三年という私は文字にまだまだ触れたりないのかもしれません。急ぐのではなくじっくり触れていきたいと思います。
      こちらこそ、よろしくお願いいたします!
      2022/11/13
  • あの、すみませーん!「大渡海」はどこにありますかー??と思った方は私だけではないはず。

    辞書を作る過程で、これだけの行程があって、何年も何年もかかって、本当に沢山の人が関わってできているんだと初めて知りました。
    一見無機質に見える辞書の言葉にも、その関わっている達の拘りの表現やクセ?があって、書物としてそういう風に思いながら読むのも楽しいのでは、と思いました。
    家にある広辞苑を読んでみよう。

    物語の中に、なぜ世の中に言葉と解釈を載せる辞書が必要なのか、言葉が持つものとはということに気付かされ心に残りました。
    全部読み終わった後にこのタイトルの意味と込めた想いを知らされました。
    そして、文庫じゃなくて大きい方のを買えばよかった!そういうことなら!って後悔笑

    そして出てくる人の個性的なこと。愛なき世界でもそうでしたが、ほんと、みんな個性的で不器用で、愛しく優しい人たちの物語でした。まじめさん、映画を先に知っていたので、松田さんそのものを想像しながら読んでいました。キャストが松田さんありきの物語??ってくらい!
    私は西岡さんのこと、好きですよ。


    私、こういうコツコツ何かを一生懸命にしている職人みたいな人たちのお話が刺さると、最近気がつきました。

  • 好きだからこその情熱がひしひしと感じられるものや、
    何か一つのことに取り憑かれた人たちを描いた話に僕は滅法弱い。
    自分の「好き」を嬉々として語る人たちの話を聞くのは妙に楽しいし、
    僕自身好きなことなら何時間でも語っていられる。

    そう、この小説はまさに「好き」にハマった人たちの物語。
    辞書に魅せられ言葉に魅入られた人々の、
    静かでいて、熱い熱いストーリーだ。

    丹念な取材をもとに物語世界を構築することに定評のある三浦しをんさん。
    辞書作りという地味なテーマをこれほど面白く、最後まで読ませる技量はさすがだし、
    誰にも身近な存在であるはずの辞書だけど、今まで誰がどのように作っているのかなんて
    殆どの人が考えもしなかっただろう。
    しかし、まさかこれほど大変な作業だったとは…。
    本当に恐れ入った。

    定年間近まで人生を辞書に捧げてきた荒木。新しい辞書を作り上げるため後継者を探す彼はある日、大学院で言語学を学び出版社に就職したものの、慣れない書店営業に四苦八苦する馬締光也(まじめ・みつや)と出会う。
    言葉に対する類い希なるセンスを見出され辞書編集部に異動になった不器用な青年の、
    恋と辞書作りの日々がユーモアを交えながら真摯に綴られていく。

    主人公はひょろりとして背が高くひょろ長い手足を持て余し、ボサボサの髪の毛に銀縁メガネ姿の入社三年目の27歳、 
    馬締光也(まじめ・みつや)。
    友達も恋人もおらず、本を読むこととエスカレーターに乗る人を見ることが趣味だと言う、いわば変人。
    僕は先に映画を観たのだけど、文章がすでにアテ書きしたかのように松田龍平をイメージさせてニヤリとできたし、
    板前をする27歳の美人、林 香具矢(はやし・かぐや)に一目惚れし恋に悩むシーンは、微笑ましくてかなり笑わせてもらった。
    (人よりも言葉を知っているハズの馬締が、それを口に出して伝える術を知らない設定も、なんとも不器用で面白くて応援したくなるのですよ)

    他にも、傍目にはチャラいが自由な発想力と独自の着眼点を持つ西岡正志の章が良かった。
    言葉への感覚が鋭く、「好き」へ没頭できる才能を持つ馬締に嫉妬を覚えつつも、裏方に徹し彼を渾身の力でサポートする姿は、切なくも本当にカッコ良かったし、映画版でもオダジョーがハマリ役とも言えるいい演技を見せてくれた。

    もはや職業病だろうけど、馬締や荒木が会話中に自分や相手の言った言葉の新たな意味を発見して自分だけの世界にトリップしたり、普段何気に使っている言葉の由来を一人妄想したりする様は、
    言葉に敏感で文章に慣れ親しんだ読書好きさんなら共感しきりだろう。

    それにしても、言葉に込められた多様な意味を知ることで、
    一つの言葉の思いがけない広がりと
    そこに奥行きがあることに初めて気づかされる。

    「あがる」と「のぼる」や
    「おませ」と「おしゃま」の使い方の違い、
    「愛」の語釈は異性を慕う気持ちでいいのか?
    「河童」のイラストはとっくりを持っていたか否か?
    「右」や「島」という言葉の語釈は?

    その言葉を辞書で引いた人が語釈を読んで、
    「心強く感じるかどうか」まで思いを巡らせながら、
    馬締は一つ一つの言葉の語釈を考え、推敲していく。

    この一連のシーンを読んでいると
    今まで辞書というモノは機械が作ったかのような「無機質な言葉の羅列」だとなんとなく思っていたけど、
    本当は一つ一つの言葉には正解などなく、作った人によって微妙にニュアンスが変わるし、
    一つ一つの語釈にも作り手側の人間味や色や意志が詰まっているということに改めて気付かされた。

    馬締が作る「大渡海(だいとかい)」という辞書の名前と、
    「舟を編む」というタイトルに込められた、しをんさんの思いにも
    胸が熱くなる。

    広く深い言葉の海。
    辞書が言葉の海を渡る舟なら、
    時には舟を作った人たちに思いを馳せてみよう。

    誰かに何かを伝えるためにも、
    誰かと繋がり解り合うためにも、
    僕たちはもっともっと言葉を知り理解しなければ。
    日本語の奥深さに気付けば、本を読むことも改めて好きになるだろうし、
    言葉を知って使い方を覚えれば覚えるほど、
    人と繋がることが楽しくなるハズだ。

    好きを貫くことや全力を尽くすことの美しさを感じられる本だし、
    読後は必ず辞書を手に取り、
    馬締がこだわった「ぬめり感」や紙の質を確かめたくなります(笑)

  • 自分の役割を認識して、
    その役割のために全力で取り組む人たちが
    ここにはいました。

    こういう人たちと仕事が出来たら
    幸せだろうなと思う。

    全力で取り組むから信頼され、
    全力で取り組んでるから応援し、
    そんな人間関係が築ける様に、
    頑張ろうっと思えた。

  • がんばれ!あともう少しがんばれ!という気持ちになって読みました。

    人間の心の内や情景が、とても美しい日本語で描写され、実際にその場面に自分もいるような感覚になりました。

    この世に生み出された数々の言葉を考えながら、音や文字を表出していきたいという気持ちにさせてくれました。
    2022,2/5-6

  • とことん言葉と向き合った作品でした。
    言葉の力は絶大です。
    誰かを守ることができるし、励ますこともできる。
    誰かと繋がることもできるし、傷つけることもできる。

    果たして私は言葉を使えているのだろうか…。
    意識しだすときりがない言葉の海ですが、ふとそんなことを考えさせてくれる素敵な作品でした。

  • 長い年月をかける辞書編纂の作業…今まで想像もしてみませんでした。読後感が爽やか!初孫であった私の中学校入学祝いに、読書好きの祖父が『広辞苑』を贈ってくれたことを思い出しました。

    • ダイちゃんさん
      koalajさん、こんにちは。ダイちゃんと言います。広辞苑をプレゼントするとは、ステキな御祖父様ですね❗大切にして下さい。いいね!サインあり...
      koalajさん、こんにちは。ダイちゃんと言います。広辞苑をプレゼントするとは、ステキな御祖父様ですね❗大切にして下さい。いいね!サインありがとうございます。
      2021/08/19
  • 中学生からずっと、同じ国語辞典を手の届くところに置いています。もう、うんじゅうねん。最近は引くことも少ないですが、あると安心します。読み終え、紙のぬめりを確かめたのは言うまでもありません。何気なく使っている辞典がこれ程年月をかけ、手間と魂が込められ作成されているなど知りませんでした。
    言語学に興味があり、大学では辞書を作りたいと願望。入社し辞書編集部になり、どんどん辞書にのめり込んでゆく馬締(少し変人っぽい)。そんな馬締だが「伝え下手」という不器用さを気にしていた。そこに世渡り上手な西岡の登場。仕事で身近で関わるうちに、西岡は馬締の辞書に対する熱量に押され、「自分には何があるのか」と自問自答する。
    二人は良きパートナーとなる。年数が経っても。
    自分が持っていない個性、長所のある人の存在は、自分の世界を広げてくれる。又自分の良さも気づかせてくれるものだな、と感じた。
    お仕事小説はかたいイメージがあり、苦手意識はありましたが、知らない語釈もたくさんあり勉強になった。
    新しい国語辞典が欲しくなった。タイトルの意味がわかりました。なぜ舟なのか編むのかって思っていた。

    • アールグレイさん
      kazekaoru21さん、初めまして!
      ゆうママと申します!フォローを頂きありがとうございます。お名前、素敵ですね!私も、今になって安易な...
      kazekaoru21さん、初めまして!
      ゆうママと申します!フォローを頂きありがとうございます。お名前、素敵ですね!私も、今になって安易な名前をつけたことを後悔しています。ブクログ歴2ヵ月半程でしょうか。今まで、記録用紙に記していました。
      これから「その扉をたたく音」を読みます。その前に、「ブロードキャスト」のレビュー、これが書く内容が頭に浮かばないのです。湊かなえ「ドキュメント」はブロードキャストに繋がりがあると聞き、再読したものの・・・・いつもなら、読みながら思い浮かび、メモをするのですが・・・・kazekaoruさんは、今何か読んでいますか?
      (^_^)/
      2021/04/29
    • kazekaoru21さん
      ゆうママさん、こんばんは、初めまして!
      こちらこそフォローをありがとうございます。私は一年前から登録しました。それまでも図書館にはよく行っ...
      ゆうママさん、こんばんは、初めまして!
      こちらこそフォローをありがとうございます。私は一年前から登録しました。それまでも図書館にはよく行ってましたが、それ程読めてはいなくて(趣味の欄には一応、「読書」とは書いていましたが)。辻村深月さん湊かなえさんがお好きなのですね。リバースはドラマでみました!私はこの作家さんが!という程読み込めてなく、直感で手あたり次第(取り合えず評判のよいものとか)。川上弘美さん宮下奈都さん桜木紫乃さん重松清さん山本文緒さん…とか好みですが、他にも読みたい作家さん沢山!下の名前がひらがな(あるいはカタカナ)の作家さんとか(最近よくお聞きするので)、いろいろ読んでみたいです。あちこち手を付けると広く浅くになってしまうのが悩みでもあります。図書館へ行けば借りてしまう(積読は溜まる)^^;これも悩みです。今は長編を休み休み読んでいます。正直いうと挫折しそうになりました。あと半分くらいです(タイトルは内緒にしてください^^;)。
      名前のこと、ありがとうございます。ゆうママさん、とてもかわいいですよ!私のほうは、早まった(やってしまった)!という感じ、こっぱずかしい、後悔です(汗)
      コメントありがとうございました^^
      2021/04/29
    • アールグレイさん
      早速のお返事ありがとうございます。私はコメント好きなので、ご覚悟を、笑 こっぱずかしくなんてありませんよ。私も何年か前までは厚みのある本は苦...
      早速のお返事ありがとうございます。私はコメント好きなので、ご覚悟を、笑 こっぱずかしくなんてありませんよ。私も何年か前までは厚みのある本は苦手でした。永遠の0、罪の声は、せっかく図書館の予約順番が回ってきたのに、息子に頼んで返してしまいました。道尾秀介さんの「カラスの親指」絶対いいです。読み始めてすぐに引き込まれます。良い本が読めるといいですね!
      o(^-^)o
      2021/04/29
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著者プロフィール

三浦しをん1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、12年『舟を編む』で本屋大賞、15年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞を受賞。その他の著書に『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『木暮荘物語』『政と源』『ののはな通信』など。『あやつられ文楽鑑賞』『ビロウな話で恐縮です日記』『本屋さんで待ちあわせ』などエッセイ集も多数。

「2022年 『子どもお悩み相談会 作家7人の迷回答』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦しをんの作品

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