雨の中の涙のように

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  • 光文社
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  • / ISBN・EAN: 9784334913618

感想・レビュー・書評

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  • アイドルグループ出身の人気俳優の堀尾葉介を巡る8作の連作短編集で、全体でもひとつの話を織りなしています。
    主人公の葉介は芸能人ですが、浮ついた芸能界の話ではありません。

    最近、作者の遠田潤子さんのお話を何作か続けて拝読したのですが、遠田さんの作品はイメージとして「寒風吹き荒れる日本海の海」のようなお話が多かったように思いますが、この連作短編集は短編として読むと、葉介と市井の人たちとの交流を描いた「明るいぽかぽかとした春の日差し」みたいなお話もありました。
    でも、全体のストーリーとしては音楽で言えば「短調」だと思いました。
    最新作なので、何の前知識もなく読みましたが、今までの作品より現代的で映画に関連した話も多くお洒落なかんじがしました。
    葉介は子供の頃は、女の子のような顔をした、いじめられっ子でしたがデビュー後は、最後まで明るい好青年で、どのストーリーも引き立てていたように思います。
    葉介の父と母も主要な登場人物ですが、二人共存在感があり、特に母親のはかなげな姿が印象的でした。

    映画のタイトルを意識された各章のタイトルが素敵なので載せておきます。
    第一章 垣見五郎兵衛の握手会
    第二章 だし巻きとマックィーンのアランセーター
    第三章 ひょうたん池のレッド・オクトーバー
    第四章 レプリカントとよもぎのお守り
    第五章 真空管と女王陛下のカーボーイ
    第六章 炭焼き男とシャワーカーテンリング
    第七章 ジャック ダニエルと春の船
    最終章 美しい人生

    • まことさん
      猫丸さん。

      でも、ちょっと怖いシーンもあります。
      やっぱり遠田さんです。
      猫丸さん。

      でも、ちょっと怖いシーンもあります。
      やっぱり遠田さんです。
      2020/10/04
    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪

      読み終えました。すごい良かったです。

      こんな遠田作品も新鮮で好き。

      私は卵屋さんと炭焼き男の章が特に心に残り...
      まことさん♪こんにちは♪

      読み終えました。すごい良かったです。

      こんな遠田作品も新鮮で好き。

      私は卵屋さんと炭焼き男の章が特に心に残りました(≧︎ω≦︎*)
      2020/10/28
    • まことさん
      くるたんさん。こんばんは。

      ちょっと怖いシーンもありましたが、よかったですよね!
      私は、最初、主人公は、垣見五郎兵衛だとばっかり思っ...
      くるたんさん。こんばんは。

      ちょっと怖いシーンもありましたが、よかったですよね!
      私は、最初、主人公は、垣見五郎兵衛だとばっかり思って、第二章で、「なんで出てこないんだろ?」と間違えました(^^;
      2020/10/28
  • 心地良い一冊。

    何度もこれ遠田さん⁇と確認したくなるぐらい心地良い連作短編集だった。

    一話一話、とりたてて激しい展開はない。
    でもしとしと降る雨音のBGMが欲しくなる雰囲気で読ませてくれた。

    七人の誰もの人生の1ページにも関係している堀尾葉介。
    明日への希望のひと風を心にそっと吹かせていくような彼の存在が良かった。

    そして迎えた最終章が秀逸。

    降りしきる雨。
    それはまるで彼がずっと抱えていた心のよう。
    その心の雨に向き合うかのような姿に目もしっとり濡れる。

    うん、こんな超マイルド遠田作品も新鮮で良いな。好き。

    • まことさん
      くるたんさん。

      このお話は、私も好きでした。
      くるたんさんのレビューも素敵ですね!

      私は今『蓮の数式』を読み終えたばかりですが...
      くるたんさん。

      このお話は、私も好きでした。
      くるたんさんのレビューも素敵ですね!

      私は今『蓮の数式』を読み終えたばかりですが、あのダークな世界観も悪くないと思ってしまいました。明日レビューします♪

      2020/10/28
    • くるたんさん
      まことさん♪こちらにもコメありがとうございます♬
      最終章、苦しみから光を見つけるような姿はやっぱり遠田さんらしくて良かったですね+.+゚d(...
      まことさん♪こちらにもコメありがとうございます♬
      最終章、苦しみから光を見つけるような姿はやっぱり遠田さんらしくて良かったですね+.+゚d(´∀`*)グッ!!

      数式は私は未読の作品、まことさんのレビュー楽しみです♬
      2020/10/28
  •  どれもこれも素晴らしい物語だった。最後の章を読むまでは。

     堀尾葉介というスターと関わりのあった人物のそれぞれの物語。8つの短編集。

     どの章にも堀尾葉介は登場して、いかに素晴らしい人物かが描かれていて、堀尾に関わった人物もみな素晴らしい生き方の一歩を踏み出すことができるようになる。

     私も堀尾葉介は純粋に素晴らしい人物だと思っていた。でも、最終章を読んで、堀尾はずっと堀尾葉介を演じていたんだなと思うと切なくなった。

     車椅子の生活になり、翼と話している時の葉介はやっと本当の自分になれたんだなと思えた。

     この小説のレビューとしては関係のない話になってしまうが、この小説にはたくさんの映画が紹介されている。どれも面白そうで、これから観るのが楽しみだ。

  • 遠田潤子の連載短編です。
    いつも凄まじく暗い過去を持つ主人公の長編なので
    とても新鮮でした。

    色々な年代で堀尾葉介という有名な俳優に関わった
    人々が主人公となる短編でしたが、それぞれが悩みを抱え未来へ一歩踏み出していく希望に満ちた話。

    堀尾葉介自身の人生は本人が語る事がないので、やはり遠田潤子らしくなんだかゾワゾワします(*_*)

    ラストで堀尾葉介の人生も救われて爽やかな結末に
    ちょっと驚きました笑

    遠田さん…こんな作品もありなのね!

  • 人々を魅了するオーラを放つ大スター堀尾葉介とどこかで接点のあった人々の人生が描かれた短編連作。
    後悔と哀しみを抱え、過去に縛られて佇んでしまった人々が、一歩前に踏み出す8つの物語は心に染みる。
    読み進めるうちに堀尾葉介の実像が浮かび上がり、背負ってきたものの重さに愕然とする。救いを得るために払った犠牲は決して小さくないが最後、葉介自身は悟ったように明るい。人はつらい想いをした分、優しくなれるのか?人々を魅了する葉介のオーラは、彼の心の有り様が滲み出ているからなのか。

    雨の日の切ないシーンが多い。
    雨の日の思い出は、雨が降ると思い出すとある。最後の章、雨の日に過去とシンクロするような出来事が葉介に起こる。
    「想い出も時と共に消える。雨の中の涙のように」タイトルになった映画の台詞。
    雨の中で流される涙は誰にも気づかれない。もしかしたら自分自身もどれだけたくさんの涙を流したか気づいていない時もあるかもしれない。
    雨が重要なモチーフとなり、閉塞感や肌寒さ、切なさが雨のように心に降り注ぐ物語だが、つらい想い出はいつか消えていくのだと、読後感の雨のイメージは包み込むように優しかった。

    • まことさん
      koringoさん。こんにちは。

      いつも、いいね!ありがとうございます。
      私も、この作品を読みました。
      korinngoさんのレビ...
      koringoさん。こんにちは。

      いつも、いいね!ありがとうございます。
      私も、この作品を読みました。
      korinngoさんのレビュー素敵ですね!
      雨のところの描写がなんとも言えません。
      こんな素敵なレビューが書けるなんて…。
      うっとりしてしまいました。
      ただ、レビューが素敵だったのをお伝えしたくて、コメントさせていただきました。
      たいした、レビューは書けない私ですが、これからもよろしくお願いします(__)
      2020/10/28
    • koringoさん
      まことさん
      過分なお言葉ありがとうございます。
      まことさんのレビューも拝読してました。良いお話でしたね。
      まことさんを始めレビューを書...
      まことさん
      過分なお言葉ありがとうございます。
      まことさんのレビューも拝読してました。良いお話でしたね。
      まことさんを始めレビューを書かれている皆さんのお陰で良い本に出逢えることに感謝しています。
      まことさんのレビュー、これからも楽しみにしています。よろしくお願い致します。
      2020/10/28
  • 十代でアイドルデビューした後に俳優に転身し、圧倒的なスター性を持つ、堀尾葉介。完璧な容姿のみならず、どこまでも謙虚で周囲への心配りをし、演技にも真摯な努力を怠らない。
    そんな彼のオーラにふれた人々はみな、少なからぬ衝撃を受け、人生に新しい光が射すような思いになるのだった。

    幼い頃から壮年となるまでの堀尾葉介に、さまざまな形で出会った人々を描く短編が9章に、最終章として葉介自身の物語が置かれた連作短編集。


    『銀花の蔵』では、個々の出来事は重く過酷でありながら、周囲の人々の優しさを見失わず「へらへら笑って」いた銀花の明るさが作品を照らしていた。
    本作では、完全無欠なスターのオーラを持つ堀尾葉介という人物が、さらに圧倒的なパワーで強い光と闇を放つ。

    別の作家の作品かと思うような明るい希望に満ちた短編。
    けれどその明るさをもたらしてきた葉介…というか、彼のオーラで人生を照らされそれぞれに幸福な方へ歩む人々を、どこか醒めた目で見つめる葉介自身の闇が吐き出された終章に、のけぞる。
    けれど、葉介自身が子供の命を救い、不自由な身体になってなお俳優として前に進むというラストに、また驚き。

    これまでずっしりと重い長編ばかりだった遠田潤子さんとしては初めての連作短編集という形式であることも手伝って、初めて手に取った人にも十二分に面白く、映画好きな読者にはさらに楽しめると思う。

    古くからのファンとしては、驚くほどの変化だけれど…
    ぐいぐい読まされる力、心理描写の生々しさは変わらず、読書の楽しみが損なわれることは無かった。

    この頃、容赦のない悲惨で過激な描写が、ときに過剰に感じる作品が多くなってきたような。
    信じられないような現実の事件よりも、小説はさらに衝撃的であろうとするのかもしれないが。

    デビュー作から、悲惨な世界をディープに描いてきた遠田作品が、ここにきてふいに明るい方向へ向いたような…
    以前は、真っ暗だった世界に一条の光…だったのが、全体の明度が上がった世界で、ごくごく限られた暗いスポットの輪郭が際立つようになった?
    色合いは変わっても、コントラストのはっきりした印象的な作品なのに変わりはない。
    これまでの作品も、この作品も、良かった。

  • 『雨の中の涙のように』刊行記念|遠田潤子インタビュー「このラストシーンで正解です」 | 本がすき。
    https://honsuki.jp/pickup/39665.html

    雨の中の涙のように 遠田潤子 | フィクション、文芸 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334913618

    • まことさん
      猫丸さん。

      この本も、昨日読み終えたばかりです。
      今までの遠田さんの作品(まだ3,4作しか読んでいませんが)より雰囲気が爽やかなかん...
      猫丸さん。

      この本も、昨日読み終えたばかりです。
      今までの遠田さんの作品(まだ3,4作しか読んでいませんが)より雰囲気が爽やかなかんじでしたよ。
      明日にでもレビューします。
      2020/10/03
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      レビューお待ちしています!
      まことさん
      レビューお待ちしています!
      2020/10/03
  • 遠田潤子の連作短編って珍しいです。他に無いような気がします。
    最近ではそこまで主人公を絶望の淵に叩き込んで棒でつつくような本は減りましたが、この本はさらに普遍性が出てきました。初期の病的に主人公を痛めつける方向を好きだった人にはちょっと物足りないかもしれないけれど、とても良い本でした。

  • さまざまな人たちの人生の断片を描いた連作短編集。人間関係につまずき傷ついて、前に踏み出せずにいる人たち。彼ら彼女らの人生にほんの少しだけ関わる一人の芸能人・堀尾葉介。眉目秀麗で圧倒的なオーラを持ち、誰にでも好感を抱かせる才能と努力の人。人間的に完璧に思える彼に関わることで変化を迎える人たちの姿がとても優しく描かれています。
    というと「感動できるいい話」といった印象だし、実際そうではあるのですが。それだけでもなく辛辣で痛々しい部分も多いです。だからこそ優しさが沁みるのでしょうね。そしてすべての物語に関わる堀尾葉介。彼の人生に何があったのか、という部分も大きな謎であり、彼自身がいったいどんな人なのか、という部分にも興味を抱かされます。何もかもを手にした完全な人間のように思えるけれど、きっとそれだけではあの数々の思いやりを見せることはできないのだろうなあ、と最終的には思いました。
    お気に入りは「ひょうたん池のレッド・オクトーバー」。一番要になる物語で、そして一番「いい話」ではないのですが。だからこそ印象的でした。そこに続く最終話の「美しい人生」もまた苛烈でありながら、美しい物語です。


  • 遠田潤子さんの小説を初めて読みました。

    かつてのアイドル、かつ演技派の俳優であり、
    役者の堀田葉介の幼少期に関わった人たち
    それぞれの物語。

    どの話でも、それぞれの人に表と裏があり、
    どう生きるのか向き合っている人生が
    ありました。

    誰もが主人公なんだと思えた一話一話です。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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