蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • たくさんの人が高評価の中
    私はそこまで楽しめずでした。


    音楽の表現力は素晴らしく臨場感に溢れていました。
    あれだけたくさんの演奏を違った表現であらわしていたこともすごいと思います。



    しかし、本選までとても長く、中盤でお腹いっぱいになってしまいました…
    私に音楽の知識がなかったからかもしれません。

  •  まったく知らない世界のお話だったので興味深く読めた。
     世界的なピアノコンクールの仕組み、コンテスタント(出場者)の過ごし方、精神状態。さらには、審査委員、ピアノ調律師、ステージマネージャ、マスメディア、そのコンテストに携わる多くの関係者の多彩な視点、モノローグで立体的に作品が創り上げられていた。誰の視点からの表現が面白かったかと言えば、審査員かな。とにかく誰の視点に自分を置くかで作品の楽しみ方も変わってくるのかもしれない。それくらい多彩な登場人物たちだった。

     未知の領域なので、並行して予習(?)もしながら読み進む。著者恩田陸は3年に1度のリサイタルを4回に渡り取材、12年をかけて周到に準備をしたそうだ。その思い入れの大きさは、長編となった本作の文量によく表れている。
     主要登場人物の4人のピアニストの心情も、個々人につき具に語られる。実際のリサイタルを4回分、全部の演奏を聴いているうちに演奏者の気持ちも理解できるようになったと著者は言う。あとは描き分けの工夫と、曲ごとの解釈と味付け次第か。

     恩田陸の作品は『まひるの月を追いかけて』が最初。その時、人物の心の動きや行動を、思いもよらないハッとするような文章で表現していて感心した覚えがある。本作品も、音楽という聴覚で感じるものを、著者がどう文章で表現するかが楽しみであった。
     それが成功したかどうかの判断は人それぞれ、難しいところだ。それこそ、音楽を聴いての感じ方は千差万別。そもそも元の楽曲を分かっていないと、その文章表現が的を射ているのかどうかも判らないと来たもんだ(苦笑)
     なので、途中からYoutubeを聴きながら読んでみた。クラシック音楽と読書の相性は、すこぶるよろしく気持ちよく読み進められたが、果たしてその音楽を文章で言い表せていたかとなると「?」が浮かぶ。なにより、こりゃいかんと思ったのは、「鬼火」とか「雨の庭」と言ったタイトルの付いた曲。それを「まるで鬼火がチロチロと・・・」とか、「雨が降って温度が下がったように・・・」とか、それってタイトルから安易に想像しただけじゃないの? 音だけ聴いて本当にそう思える?鬼火が見える?私しゃそうは聴こえないよとか、いろいろ意に沿わない、共感できない誇張したかのような比喩が散見されて止めてしまった(後半、オケとの合奏では、作者も表現しきれなくなったか、曲にまつわる比喩が少なくなって聴きながら読めたけど)。

     ともかく各出演者の演奏ごとに、ライバル、審査委員、恩師、友人が、それぞれの視点で、曲解説(解釈?)や、演奏者の心情の推察、あるいは当人による感慨、回想などが織り込まれ、1次から3次までの予選、さらに本選と重厚に物語は展開していく(著者が取材した浜松国際音楽祭の構成の通りに進む)。
     神童、秀才、復活を賭けるかつての天才、努力の一般人。その4人を軸に話は進むが、最終的に誰を優勝させるかは著者自身も最後の最後まで分からなかったという。ならば、最後は、その演奏を文章で表現しきったとき、その表現の巧みさ、いかに描き切れたかで決まるのかなと楽しみに読み進む。
     その時、かつて漫画家水島新司が代表作『ドカベン』で明訓高校の初の負け試合となる弁慶高校戦を描いたときのエピソードを思い出していた。主人公山田太郎の第1打席は、敵の策略にハマりピッチャーゴロかフライの凡打とする予定だったそうだ。だが、その打席の打撃シーンを描いた時、腰の入った見事なフォームが描けてしまったのだとか。「これはもうホームランにするしかない」と筋書を変えてしまったというから面白い。
     本書も最後はそうした文章力の、誰の演奏をどう描けるかで決まるのかと楽しみにしていたが… (これから読む人は、果たしてどうだったか確かめてください)。

     スポーツ漫画の例を、つい思い出してしまったけど、私より先に読んだ読み友の感想も、「スポーツ試合のような気分で読んでました、終盤になるとキャプテン翼みたいな。」
    だった(笑)
     そうなんだよなー、ちょっと文学の香りはしなかった。表現、筋立て、結末含め、どこか漫画チック。努力の一般人の結果にしても、ライバル(憧れ人?)に「また、どこかで」と微笑んで語られ、「やはり、始まりだった。」と納得するだけで十分。今後、彼はその「また、どこかで(一緒に演奏しましょう)」という一言を糧に、飛躍成長してくのだろうと想像することが楽しいのであって、「はい、ほらね、彼にもご褒美を用意しましたよ」的な蛇足は要らなかったな~。 どこか感動を安売りしているようで「ったく、近頃の小説は!」って、ついつい愚痴りたくなる。

     そう、途中でヤな予感もしたのだ。ライバルの演奏を聴いた感想をこう述べる場面がある。

    「ふと、最近のハリウッド映画はエンターテイメントではなく、アトラクションである、と言った映画監督の言葉を思い出す。チャンの演奏は、なんとなくそれに近いような気がする。」

     映画だけじゃなく、最近の小説もそうだよ、この作品はそうならないよね、と一瞬そんな思いがよぎったのだったが、どうも「ハイ、ここ感動するところ」「ここで泣いてね」みたいな安易な展開が、あぁ今風の作品だなと思ってしまった。
     
     そんなことで、悪くない作品なんだけど、スポーツ漫画的な安易な感動とカタルシスを、お手軽に楽しめる(文量の割には驚くほどサクサク読める)、現代的には、一流のエンターテイメント作品であった(アトラクションとまでは言わないよ)。

  • ピアノが好きだけど、合わなかった。
    音が全然聞こえない。
    演奏を聞いて泣いた事もあるし、ピアノで弾いた曲もいっぱい課題曲にも章題にも出てきたのに。
    自分と曲の解釈が合わなかったんだと思う。
    「ここ軽いから楽しい」「ここの音聞いた瞬間目が覚めちゃう」とか、そんな自分の大好きなピアノの要素がなかった。
    「曲のイメージ」ばっかりで、一瞬一瞬の音がない。

    描写を音楽に絞っているから、音楽が合わなければ合わない本だと思う。物語はまあ大体分かってる通りに進む。
    音楽も「天才!凄い!」みたいな繰り返し。
    主人公最強のライトノベルみたいな軽さ。

  • 優しい物語。
    良い作品だと思うが自分には合わなかったのでこの評価。

    以下、合わなかった点
    ・同じことの繰り返し
    天才が演奏する→他のピアニストが衝撃を受け、うわ凄いなあなどと思う→観客スタンディングオベーション。
    3回ある予選から終わりの本戦までずっとこれ。飽きる。

    ・いい人しかいないので予定調和な展開
    作中嫌な人が一人も出てこない、優しい世界。トラブルも起きない、優しい世界。

    ・コンテストなのに勝ち負けに拘ってない
    天才三人がそんな態度なので、最後の結果発表はどうでもよく感じてしまった。

    他に、明石が初めて登場する章がもの凄い読みづらかったり、このピアノコンクールやピアニスト達がいかに凄いかを繰り返し書かれていたりでけっこう冷めた。
    観客の喜び方がほとんど一緒なのも飽きた要因。悲鳴のような歓声、鳴り止まぬスタンディングオベーションなど。


    作者はこの作品にもの凄い情を込めてるのだと思う。それ故にキャラクターを誰も傷つけまいとし、なんのハプニングもない話になったのだと感じる。
    作者のキャラに対しての優しさが自分には過保護に感じたのが、作品にハマれなかった一番の理由だと思う。

  • うーん、なんだかなぁ。。。

    同じピアノのことを書いた小説なら、
    羊と鋼の森の方が好きだと思った。
    この話は音楽が天才のためのものになっている。
    どんなに毎日練習して努力したって、
    音楽の神様に愛された天才には敵わないんだよ、
    と言われているみたいでね…。
    大体、遊牧民みたいな暮らしをしていて家にピアノがなくて
    行った先々で練習してたっていう子が
    本選まで残るっていうのはさすがに無理があるんじゃなかろうか。
    その時点でリアリティではない、小説の世界だなと思う。
    明石さんの描き方はすごく好きで泣いてしまう箇所もあった。
    私も誰かに師事しないといけない、とは思わないし
    生活者としての音楽家がいたらいいなとも思う。
    けど、結局彼は奨励賞止まりじゃないか。
    それじゃ、本当の意味で勝ったことにならないよね。
    おとぎ話の世界の出来事みたい。

  • ・『のだめカンタービレ』みたい。
    ・リアリティがない。登場人物たちが練習しなくても超絶技巧が弾ける天才ばっかり。『のだめ…』の方がリアリティがあるかも。
    ・それは試みだったのかもしれないけれど、音に関する記述がほとんどないから、軽く感じてしまう。
    ・彦麿呂の食レポを延々と聞いているかのような…
    ・山盛りのソフトクリームを食べたかのような読後感。
    ・「帰ってきた、帰ってきた」としつこいので最後は「おっことぬしか!」と突っ込んでしまった。
    ・頭のなかでクラシックを鳴らして楽しんできたのに、最後の最後の「耳をすませば」の一行で頭のなかが「カントリぃーロぉード♪」になってしまった。
    ・直木賞、あんまり合わないけれど本屋大賞とダブル受賞というので買ってみた。でもやっぱり直木賞って感じだった。
    ・二段組、ふと戻りたい場所を探すのに疲れる。

  • 音楽を文字で表す、という試みは、興味深かったけど、ちょっと長いかな汗

  • 第一次予選、第二次予選、第三次予選、本選と同じようなことの繰返しに感じられて途中で飽きてしまい後半は流し読みしてしまいました。

  • 前評判高かったせいで期待値上げすぎたんだろうけど…。評判通り2段組みの厚い本の割に読みやすい。というか読み易すぎる…。なんか各登場人物のキャラの立たせ方とか、コンクールの流れとか、「のだめ」や「ガラスの仮面」の小説版かって感じで。さらっと読めちゃったけどあの二つの漫画読んだときみたいな「え、次どうなっちゃうの?」感もなかったかな…。

  • 最後まで読めなかった

    音楽という耳で感じるものを、言葉で表現していてそれはたしかに凄いのかなと思った
    しかし、続きがなんとなく読めてしまう気がして、途中で、やめてしまった

  • 好きな音楽のジャンルではなかった為、途中で読むのを断念した

  • イメージ力、想像力が弱い自分には、情景描写が多く、しんどかった。

  • コンクール出場に4人のメンバーが挑む。
    ピアノから奏でられる音が活字になって表現される。夫々の恩師の元、受け継いだ力が発揮される。

  • 図書館で300人待ち。頑張って飛ばし飛ばし読みました。ガラスの仮面も、舞台のところは飛ばすタイプなので。長かった。

  • 初期の作品は読んでいたが、近年次第に遠ざけていたものの、W受賞ということで手に取った。
    漫画を読むようなスピードで読み進めているうち『ピアノの森』の既視感があっていただけなかった。
    終盤の失速もあり、ハライチ岩井勇気の名言「1を増やすのが得意なだけでゼロから1を作れない」が頭を過ってしまう。
    ピアノの~を読んでいなければ、別の読後感になっていたかと思うと残念。

  • 日本で開催されるある国際ピアノコンクールの始まりからラストまでを、複数の参加者と審査員の視点から描いた作品。音楽家の世界とか、ピアノコンクールってこんな風に開催されるんだと、とか、こんな世界に足を踏み入れたことのない人間にとっては新鮮でした。それに、演奏されている音楽を文章で表すというところがこの小説の見せどころなんだと思う。確かに、読みながら音楽が流れる雰囲気を感じられる、気がする。しかし、やはり門外漢にはちょっとつらい。数々のクラシック音楽のタイトルを聞いただけで思い出せるようであれば良いけど、門外漢には音楽を文章だけ読まされるのが繰り返されるのはやはりつらい。それにちょっと長すぎる。二段組みで500ページは。結構長い年月を掛けて連載されてきた作品のようなのだが、一気に読んでいるとピアノが演奏される度に同じような表現が出てくるのに疲れる。登場人物達は若者が多いので仕方ないのかもしれなけど、喋り方もなんだか軽くてみんああんまり区別出来ないし、おじさんにはちょっとついて行けない。登場人物達があまりにも天才ばっかりなのもどうなのかな。みんなピアノ弾きながらどっかに行っちゃってるみたいでちょっと怖い。残念ながら小説としては大して面白くなかった。

  • 一次予選あたりまでは非常に面白く読めたが、段々と描写がくどい様に私には感じた。
    ただ、そこまでクラシックを嗜まない私でも、なんとはなしに作中に出てきた曲目を聴いてみたくなり、実際に何曲か試聴した。
    クラシックを普及させる。それが作者の本懐ならば、まさしく私は嵌ったのかもしれない。

  • 描写が凄かったけど、凄すぎて逆に飽きるというか。
    ただ本屋大賞だし、素晴らしい本っていうのは絶対そうだと思うけど自分はなんかついていけなかったのが残念。

  • 恩田さんの受賞作はどうも苦手。
    恩田陸という作家の描く世界は基本的に好きなんだけど、受賞する作品には私の中にある「恩田さんらしさ」が見当たらないからかな。
    「六番目の小夜子」も「夜のピクニック」もあんまりやったんで、今回も熱気が落ち着いてから図書館で借りてみた。

    そして、やっぱり「私的にはイマイチだなぁ」と思った。


    以下、がっつり否定的です。好きな方は読まないでください。



    綺麗にまとまりすぎているんだよなぁ。
    文章は綺麗だし、この分量を飽きずに読ませるのはさすが。
    でも、何が足りない。恩田さんならではの「不穏さ」が。

    あの「何かがある」「得体の知れないものがいる」「気持ち悪いことが起こる」的な感じが全然なくて、最後まで綺麗にまとまって……。
    恩田さんが書かなくても良くない?と思ってしまう。
    そして、こういうふうに綺麗にまとめなくちゃ大きな賞を取れないのか、と思うとまたモヤモヤ。


    もっと「ええ?!そこで終わる?!」って言うのが読みたい。最近なら「エピタフ東京」みたいな。

  • 展開は読めるしセリフも凡庸だしやたら長いし、なにより登場人物の名前が薄っぺらい少女漫画みたいのばっかりで吹き出しそうだった。
    ただ演奏の模写は、なんか賛否両論分かれるような気がする。
    自分は退屈で全然駄目だったけど、はまる人はドはまりしそう。
    蜜蜂王子の演奏みたいに、評価がどっちかに分断されるみたいな。

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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