82年生まれ、キム・ジヨン (ちくま文庫 ち-19-1)

  • 筑摩書房
3.82
  • (77)
  • (152)
  • (101)
  • (12)
  • (5)
本棚登録 : 2091
感想 : 148
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480438584

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 韓国の歴史にも無知だし、韓国ドラマでしか韓国という国を知らなかった私は驚きの連続だった。
    なんというか、女性蔑視がひどくてびっくり。
    兄や弟を学校に行かせるために働くって何?
    なんで女というだけで、そんな言われ方されないといけないの?衝撃だったけど、ちょっと待て。
    日本でも程度の差はあれ、同じではないか。
    男女平等だとは思わない。
    体の作りがそもそも同じではないから何もかも、平等にしろとは思わないけど、もっと女性を一人の人間として考えて、同じ人間なんだと思って欲しいと思ったなぁ。
    男性にこそ読んで欲しい本かも。

  • KーPOPが大好きで、ふと帯に書いてあることが気になり手に取った本。
    私は本書のキム・ジヨン氏よりほんの数年遅く生まれたが、日本ではここまでの生きづらさは感じなかった気がする。
    韓国の女性がいかに苦しい人生を送ってきたかが顕著に書かれている作品だった。
    読むのに時間がかかったけど、こういう話は興味があるため、また時間があったら読み返してみたい一冊。

  • この本は性別や環境、境遇によっては、論点を理解できない人が多いかもしれない。理解できないで済ませるならまだしも、この物語の彼女達に、怠けているのでは?あなたが弱いからだ、という言葉が放たれることがなければいいなと願ってしまう。職場を見ていても、世間を見ていても、主婦や子持ちの女性へ向けられる声は韓国だけでなく日本でも同じだなと思う。
    例えば、子どもが生まれると生活がどう変化するのか、という話に対して...
    キム・ジヨン「失うもののことばかり考えるなって言うけど、私は今の若さも健康も、職場や同僚や友だちっていう社会ネットワークや、今までの計画も、未来も、全部失うかもしれないんだよ。だから失うもののことばかり考えちゃうんだけど、あなたは何を失うの?」
    キム・ジヨンの夫「僕は、僕も...僕だって今と同じじゃいられないよ。何ていったって家に早く帰らなくちゃいけないから、友だちともあんまり会えなくなるし。接待や残業も気軽にはできないし。働いて帰ってきてから家事を手伝って たら疲れるだろうし、それに、君と、赤ちゃんを...つまり家長として...そうだ!扶養!扶養責任がすごく大きくなるし」
    この会話から二人に大きな違いがあることは、わかる人にしかわからないし、キム・ジヨンの夫はつらさの比べっこがしたいのだろうか?とも思う。彼女が子どもの頃からどんな努力があったのか、周りはその背景を知らない。やっと手にした仕事、立場をキム・ジョンは、結婚、出産によってなぜこんなにも失わなければならないのか。彼女の今までの努力や、これからのキム・ジヨンという一人の人間の社会的人生も、大切なそれらを失うのなら、結婚も子どももいらないとする女性は多くいるのではないでしょうか。自分が生き抜いてきた大切な時間は自分のすべて、自分そのものだから。彼女達のその大切なものを尊重せず、失うものがある未来にも価値があると諭すような絵空事も綺麗事も、批判や差別をするのはとても稚拙なことだなと思った。ただそれは「知らない」からできることだし、性別に関係なく、それが自分なら苦しくてつらい状況だとも感じるだろう。世間は、社会は、それでもどうってことないような顔をして、これからも流動的な日常を送るのだろう。精神を病むほどの自己犠牲に応えるそれが愛情で、女らしさ、男らしさというのなら、その社会で生き残ることがとても恐ろしいことに思う。お互いを尊重し合い、上等な社会とはなんだろうと、周りを見れば、気づいている人は、特に若い世代には本当は多いと思う。だからこそ生きづらいのかもしれない。
    この物語は、小説の中だけの話ではなく、ごく身近な私たちの物語なのかもしれません。

  • 私自身も82年生まれで、学生の時には当たり前すぎて気づかなかった事にたくさん気づけた。 
    確かに生徒会長とか当たり前のように男だったしいつも男から座ってたなーと。
     
    妊娠した性別が女だったら堕胎するとか、、男は誰から産まれてきたと思っとるんじゃ!怒
    って言いたくなる…。 

    少しづつでも世界が変わるといいな。 
     
    解説にあった、この本に出てくる男性には名前がないって言うミラーリング、、すごいな。 
    説得力ある

  • 女性だから受けてきた不平等や理不尽に浴びせられる誹謗中傷にふれた作品。今の日本でも少なからずあるかもって思うこともちらほら。出産に関しては女性にしか出来ないけど、子育てに関しては一緒にできるよね。「手伝う」てなんですか。あなたの子でもあるでしょと共感止まらず100イイね押したくなった。けど日本では女性の方が親権について裁判では有利だったり、情状酌量も認められやすかったりで刑期も短かったりするわけで。男女平等って難しいね。

  • キム・ジヨンの人生をやたら解像度高く追うことで当たり前に生きていて、おそらくは違和感を感じつつも見逃していた女性差別がこれでもかってくらい知らしめられる。(韓国の話だけど少し日本と似ているところがある)
    本としては導入少し入りづらいけどわりとすらすらよめた。
    個人的には結構かたよってるなーとか、ちょっと説教くさいなとか思う部分はありつつも、知らないことも知れて読めてよかったな、という読後感。
    女性である自分自身も、こういうことあったな、というトラウマ的なものが思い出される。こういう本がベストラーになることが韓国や世の中を知ることにつながった。(女だったら墮胎するという価値観には驚いた。)
    男性がよむべきなのかも。

  • 日本でも2つの性を同時に指す場合、「男女」という単語を使う。「女男」という単語はない。

  • 【キム・ジヨンというペルソナ設定】
    82年生まれの韓国人キム・ジヨンという「ペルソナ」について。

    そして彼女を生み育てた母、祖母、姉、サークルや会社の先輩について。

    マーケティングやデザインプロセスで、「ペルソナ」の設定は不可欠だけれど、

    社会制度では、どこまで具体的にターゲットを想定して設計しているのかな、とふと思う。

    キム・ジヨン氏が、特に女性として経験するさまざまな試練は、彼女だけが経ているものではなく、多くの共感を得た作品であったことからも分かるように、とても象徴的なのだと思う。

    私自身は、このストーリーの設定から10年先に生まれ育っていて、もちろん国は日本という違うもあるけれど、

    過渡期のどこに自分を位置づけられるか、少し考えたりした。

    一人ひとりにストーリーがあり、キム・ジヨン氏の経験は、一事例。

    男性を中心とした意思決定者が組むこの社会の制度、規範について、本を通して語る時代がやっと来たのかもしれない。韓国で。世界でも。

    日本と韓国を単純に比べて進んでいる、遅れている、ということはできないけれど、

    韓国では1987年に男女雇用平等法、1999年に男女差別禁止法が制定されている。

    日本でも1985年に男女雇用機会均等法が成立し1997年の改正で女性差別禁止規定が強化されたとある。

    女性の権利を推進する世界の潮流に乗せて作られた法制度は、どこまで個々の社会の現状に対して機能しているのか。

    この本で突きつけられるキム・ジヨン氏というペルソナを前に、私たちの社会制度、社会規範がどうずれているのか、どこで不具合を起こしているのか、人間のニーズに沿った設計になるようにどう修正できるのか、個人のレベルを超えて、社会で共に考えていく必要があると思う。

  • 韓国のとある女性の物語。韓国での女性の生きづらさが語られている。
    一言で「生きづらさ」といっても、過去と現在で2種類あると、解説を読んで納得した。
    前者は、男性を助ける性・男性より劣る性として、女の子と分かった瞬間中絶されたり、兄や弟の学費のために自らの進学を断念するなど。同じ人間なのに男性と女性で違うからって、なぜこうも奪われてばかりなのかと思う。
    後者は、女性嫌悪。女性が不当に恵まれているのではと、例えば、育児中に公園で休憩していると「ママ虫」と言ってあたかも旦那に寄生する害虫のような言われをする。
    ああ、どちらも生きづらい。

    こんなことを思われること自体が間違っているのに、社会全体がそうだと、それがあたかも正しいことのように感じられてしまう。本当に危険。
    かすかな疑問や違和感に蓋をせず、言葉にすることが大事。誰かの人生を生きているのではなく、自分の人生を生きているのだから。

  • 映画が秀逸で、前向きなラストも好感を持てたのだけど、より辛辣と聞いて原作を読んでみたくなった。リアルなラストが印象的でずっと心に残った。

    自分が女性としてこれまで仕方がないなと思ったり、自然なことと受け入れてきた数々の出来事が、実は女性たちの古来から長年に渡る我慢と諦めの積み重ねによる処世術の集合体だと気付かされ、誰を責めるでもなく淡々とした文体は女性のみならず世の中のあらゆる構造に対して気付きと問いを投げ掛けて、考えてみればこれほどシンプルなテーマをやっと扱えるようになった人類の文明の進歩を感じた。

    これは映像によるところが大きいけど、主人公の限界はイタコ的なシャーマニズムによって表現されて、最も効果的な形で観る人の心を抉る。
    恨の文化の洗練を感じた。

全148件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

チョ・ナムジュ:1978年ソウル生まれ、梨花女子大学社会学科を卒業。放送作家を経て、長編小説「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年8月)。大ベストセラーとなる。2018年『彼女の名前は』、2019年『サハマンション』、2020年『ミカンの味』、2021年『私たちが記したもの』、2022年『ソヨンドン物語』刊行。邦訳は、『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子訳、ちくま文庫)、『彼女の名前は』『私たちが記したもの』(小山内園子、すんみ訳)、『サハマンション』(斎藤真理子訳)いずれも筑摩書房刊。『ミカンの味』(矢島暁子訳、朝日新聞出版)。『ソヨンドン物語』(古川綾子訳、筑摩書房)が近刊予定。



「2024年 『耳をすませば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

チョ・ナムジュの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×