- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480815736
感想・レビュー・書評
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うーん、
終章以外は要約で読めば十分だな
くらいのテンションで読んだ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブレイディみかこさんの新作は、2014年に実際に起きた事件(出来事?)を題材にしたフィクションだ。公営の宿泊所を追い出されたシングルマザーたちが、ロンドンで空き家となっていた公営住宅を占拠したというもの。彼女たちはホームレスでもあり、幼い子供を抱えて路上生活をするわけにもいかず、まさに切羽詰まった状態だった。
役人や政治家は杓子定規なことしか言わないのはどこの国も同じだ。そんな彼らに、社会の底辺にいるもっとも弱い立場の彼女たちが一矢報いるのは爽快だ。
運動は共感を呼び、多くの支援者たちに支えられる。このあたりの描写は感動的だった。
ただ、小説としては弱いかな。事実の重みは十分伝わってくるけれど、小説である必要があまり感じられなかった。
NetGalleyにて読了。 -
アナーキーとは何か。
特別な人たちが行なっている?
暴力的な行為?
この作品では、そうではないことが描かれている。
リアルな現場を舞台にしたフィクションで、
ノンフィクションを読むより、イメージしやすく、読みやすかった。
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やるか?やるべきか?ではなくやらなければいけない時があると立ち上がった、勇気あるシングルマザー
大きなものに流されて人間の尊厳さえも奪われそうになった時、おそらく自分は押し潰されるであろう。
相手をリスペクトする事ももちろん大事だし、あるがままの自分を尊重する事も大事だと思えた作品でした。 -
抗議運動って、日本じゃ中々ないので、ピンと来なかったのですが、日本人の女性キャラがいる事で、彼女には感情移入できました。この作者さんの息子さんをネタにしたノンフィクションの方が面白かったです。
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2013年にロンドン東部で実際にあったホームレスで若いシングルマザー達による公営住宅の空家占拠・開放活動を元にしたフィクション。
長くイギリスで暮らす作者だけに、登場するシングルマザー達の怒り、悔しい思いや、彼女等の活動をサポートする昔の活動家達の応援したくなる思い、そして現地駐在の日本人若手女性新聞記者が初めは戸惑い乍も次第に理解し影響を受けていく様等が、リアリティ持って伝わってくる。
そんな事(行政に対する反対運動を繰り広げる事)したって世の中何も変わらない、という常識的諦念を突き破って社会の最下層にいる弱者たる若いシングルマザー達が裁判で勝利を掴み、更に活動を続けるという感動的ほぼ実話であるという事だけでなく、現在の行き過ぎた資本主義によって生じている社会の歪みに対して斎藤幸平さんが説く社会的コモンを充実させる事の有用性、正しさについても感じさせるストーリーであったと感じる。
それは、①記者の史奈子が占拠の現場で所有権について悩む一方で人々が修理等のサービスや物を無償でやり取りして回っている事②彼女達が占拠した公営住宅は何年も空家状態だったにも拘らず開放していなかったのだが、これは行政からすればより高く売ってジェントリフィケーションに繋げたいからであり、この発想はもう資本主義の負の面に毒されていると言え、行政が本来目指すべき「全ての住民が屋根のある場所に住める様に、手頃な家賃の住宅を提供すべき」事が出来ていないのが実態だったりする事、等から感じた。 -
ロンドンの占拠事件をモデルとした小説です。私と同年代のシングルマザー達が地方自治体の予算削減の為にホームレス・シェルターから退去を迫られたことに疑問を持ち声をあげる姿に感銘を受けました。
世界には家を失い故郷を追われる人々が存在する事を知ってなんともやるせない気持ちになりました。
住宅不足、家賃の高騰、世代間格差、都市部のジェントリフィケーション、女性の貧困問題、反緊縮……この本を読むまでは知らなかった(+_+) -
ネットなんかじゃダメなんです。
フィジカルに集まって生きることをサポートし合う「場所」が要る。
同じシングルマザーでも、一枚岩になれないところがリアルだった。年代も他のことでも違う立場でもできる範囲でサポートするひともいれば、同じシングルマザー、家なしの立場でも攻撃に回るひともいる。
人間のすることって、駄目なことだらけだけど、その中に、ポッと捨てたもんじゃないところがある。 -
うう、ブレイディみかこ節効いてる。ノンフィクションのようなフィクションだった。本当にあったお話をベースに書かれているようで、リアル。いつも書かれているエッセイもいいけれど、こんな話も良いな。セリフが刺さった。
p.35 人間だからだよ。私ら、見つけたみたいに、お上の都合であっちこっちに行かされて、いつまでも小突き回されるだけで良いわけがない。生活保護を受けていようが、ホームレスだろうが、私らだって人間なんだ」
p.55 だって、誰かが何かを始めないと、誰かが戦わないと、何も変わらないだろう。いつまでたっても同じことの繰り返しで、何も変わらない。それでいいわけないだろ。
p.207 貧しいということは、単にお金がないと言うことだけでは無いからだ。それは、それが理由で他の多くのものまで奪われてしまっている状況だ。今知っていること以上の何かを教わる機会や、こことは違う新しい環境に出会うチャンス。自分に対する自信とか、明日や明後日の生活への安心とか、他人を信頼する勇気。ドロシーが靴を片方奪われたように、私たちは片方しかない。靴で歩いてきたのも同然なのかもしれない。
ジェイドの父親はいつもつま先が破れた靴を履いていた。
父親壊してしまったのは、生活保護で生活していることに対する恥の意識だった。そして、それに追い打ちをかけるように冷たくなっていた。近所の人々の視線。貧しいことや、体を壊して働けなくなった事は、ふんであって、恥だと思うべき罪ではないのに、父親は家族やテレビで喋っている人に毒好きながら、本当は自分自身を罵倒していた。社会の役に立てなくなった。脳無しだと自分で自分を差別し、ゆっくり殺そうとしていた。根腐れして枯れていく大木のように、ずっとテレビの前に座っていた。父の後ろ姿が浮かんだ。尊厳だ、と思った。あの後ろ姿が剥奪されたものは人間の尊厳だったのだ。
少しばかりのリスペクト。それを勝ち取るためにジェイドは明日、裁判所に立つ。リスペクトもないところに尊厳は無いから。尊厳のないところで人は生きられないから。
p.213 「今、いきなり彼女が尊厳とか言うので、…ちょっと考えたんですけど、私たちがロージズっていう名前を名乗ったのも、そういうことだったんだと思います。薔薇は人の尊厳を尊重する花だから。住まいは人の尊厳です。ねぐらのないに人々に住まいを与える事は、人間の尊厳を守ること。人は誰だって安全で温かい場所で、眠り、子を育てる権利があるんだと信じること。区長だろうと誰だろうと、この薔薇を踏みつける事は許されません。戦ってきます」 -
登場人物が多く、初めはとっつきにくいと思ったが、史奈子と幸太が出てきてから、感情移入しやすくなった。史奈子とともに、知らなかったことを学ばせてもらった。
声を上げないと、いないものとされてしまう社会的弱者たち。貧しい階層に生まれると、あるいは一度つまずくと、男は酒に走って暴力を振るい、転落する。尊厳を失ったのを忘れたいためなのだろう。そこから脱出するために若い母親たちが立ち上がったのはすごい。