リスペクト ――R・E・S・P・E・C・T (単行本 --)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480815736

感想・レビュー・書評

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  • アナキズムは国や宗教などの政治的な権力に対し、個人の自由を訴える思想で、既成概念を壊す革命児、異端児という印象があった。

    本文には、「人間は自由であるべきなのに、社会や国に縛られることで自分で何かをしなくても与えてもらえる状態に満足して何も考えられなくなる」とあった。
    これを読んでハッとさせられる人は多いのではないだろうか。
    社会や世界で起きている問題は決して他人事ではなく、明日の自分かもしれないし、もしくはもうすでにその問題の渦中にいるのに気づかないことは多い。
    なにかしらの行動を起こす権利は誰にでも平等にある。しかし、個人の問題が集団の問題へと拡大したとき、私的なものが公的になったとき、「きっかけ」を忘れてはいけない。原動力となった核がなくなれば、ただの張りぼてだ。

    「旅の途中で私たちが奪われたもの。自分に対する自信。他人を信頼する勇気。ドロシーが西の魔女に片足の靴を奪われたように、私たちは片方しかない靴で歩いていたも同然だ。」
    「尊厳のないところで人は生きられない」

    この本の中で低所得シングルマザーたちが訴えていることは「人権」だ。
    人間には等しく人間らしく生活する権利があるということ。これは日本国憲法でも謳われている。自分の言葉で自分の思いを語る自由が脅かされたら、私たちは社会に、他人に自分の尊厳を主張するべきなのだろう。
    自分が自分を「リスペクト」できること。これが大事なのだ。

  • 2014年。東ロンドン。カーペンターズ居住区の実際の占拠事件が題材。公営の住居を追い出せれるシングルマザーたち。遊休の空き家があるというのに。民間住宅は高過ぎる。家賃の安い見知らぬ土地へ行けという。運動が始まる。思わぬ数の支持者たち。助け合い。占拠はひと月に及ぶ。抵抗は実る。…アナキストと新聞記者。架空の邦人カップルの登場で日本人にも身近な出来事であることを感じさせる。理不尽も「あきらめて受け入れる」。その繰り返しでは国そのものが疲弊する。まもなくGDPが世界4位となる。凋落に甘んじてばかりはいられない。

  • ロンドンで実際に起きた公営住宅占拠運動をモデルとした小説。公営住宅に空きがあるのに追い出される、何も出来ないから何でもお上が思うままに出来ると思われる。これは近い将来の我々を問う物語かもしれない。

  • 2013-14年に実際に起きたロンドンのジェントリフィケーションに端を発する占拠運動をモデルにした小説。近年いくつかの映画・ドラマでも描かれてきた問題なので題材それ自体の真新しさは薄いが、そこに日本の新聞社の支局をサイドストーリー的に絡めることでメディアへの批評性も持ち合わせているのが面白い。私も含めてこういった作品やニュースを見聞きしても「ふむふむ、そんな問題が世界では起きているのか。勉強になるなぁ」で終わってしまう読者にも静かに牙をむく終章、特に史奈子の選択に頬を叩かれる。そういう意味では個人的に幸太のキャラクターと行動力も意外と刺さってしまった。

  • 最近は日本でも耳にする貧困問題。
    この事件の事は知らずにいた。お話としてはグイグイ読めるんだけど、事実をベースにしてる事で色々と考えさせられた。

    どこか遠い事だと思っていたけれど、ごく普通のシングルマザーが暮らせない衝撃。
    ほんの少しのリスペクトが欲しいという彼女たちの話を読み、過去に騒ぎになったからか、生活保護に対して自分の中に偏見があることを感じ、恥いる。
    特別にだらけた人たちとかではなく、そこにいるのは普通の人であり自分だってラッキーなだけでいつどうなるのか分からないという恐ろしい現実はすぐそこにある。

    住んでなきゃ働けないし、働かなきゃ住めない。
    さらに言えば働いても住めない家賃設定と空き家に溢れた公営住宅。
    何か間違っている。
    一つの街は、富裕層だけで回るのか?
    低賃金の仕事をしてる人たちがいなければ回らないのではないか。

    相互扶助で回る街。
    シナコと同じく、それでも所有権の問題もあるよなと引っかかりおぼえてしまうけど、今の政治に突きつける一つの形だなと思う。
    期間限定だったからかもしれないけれど。

    住まいがある事の安心感。
    当たり前と思っていたけれど、定住し帰る場所がある事はなんと幸せな事だろう。
    未来ある人たちが、働いても住めないなんておかしい。

    リスペクトがなくなったから。尊厳がなくなったから、生きる力がなくなり、背中が丸まってしまう。
    ブレイディさんの描くパワフルなシスターフッドのストーリーは読みやすく問題提起をしてくれた。

  • admiration felt or shown for someone or something that you believe has good ideas or qualities.

    politeness, honour, and care shown towards someone or something that is considered important.

    A feeling that something is right or important and you should not attempt to change it or harm it.

    the feeling you show when you accept that different customs or cultures are different from your own and behave towards them in a way that would not cause offence.

    エンパシーからリスペクトへ。
    あなたはあなたでぼくはぼくでバランスが取れたら
    それは、ナイスだと思う。予想より良かった。
    何かを守るとき、想うとき、人は強くなる。
    移動中で、読み終わり。

  • 自分たちでできることを、できないって思い込めば思い込むほど、支配する者たちの力は強大になる。登場人物のこのセリフを読んだときに、雷に打たれたような衝撃が走った。自分の現状を変えたいのならば、自ら動かなければと強く思った。

  • 住んでいたホステルからの退去命令が出て、行政相手に抗議行動を起こすロンドンのシングルマザーとその仲間達が描かれ、その顛末もおもしろいけど、取材する日本人ジャーナリストが自我に目覚めていく過程もよかったです。

  • ロンドンの住宅事情の厳しさがよくわかった。実際に低賃金の労働者はどのように暮らしているのだろう?

  • 実話を元にしたシングルマザーたちの連携と闘い。公的権力に声を上げて大きなうねり運動に発展していく。まず不当なことには声を上げることだと教えられた。

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著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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