イヴの末裔たちの明日 松崎有理短編集 (創元日本SF叢書)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018382

作品紹介・あらすじ

究極の選択を前にしたとき、人間はその魂を試される――さまざまな“究極”の場面に遭遇した人々がそれぞれ選びとる未来の物語。長く未解決だった数学予想の証明に取り憑かれた青年と、暗号解読に人生のすべてを捧げた冒険者の行く末を追う「ひとを惹きつけてやまないもの」、自分は未来人だと主張し、材料も資料も足りない刑務所内で未来に帰るためのタイムマシン製造に勤しむ受刑者の哀しい決断「未来への脱獄」など全5編。

感想・レビュー・書評

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  • 「未来への脱獄」☆☆☆
    主人公が収容された刑務所の同じ房には未来人を自称する男がいた。ある日、その男がタイムマシンを設計している事実を知り、主人公は制作に協力し未来への脱獄を計画する。
    男は未来を変えるために過去を変えに来たので、この作品では過去を変えると並行世界が生まれるのではなく、時間軸は一つで過去を変えると未来が上書きされる設定だと思われる。
    しかし、最後の「壁の数字1をみつけた自分、2をみつけた自分……」という記述は並行世界の存在に触れているようだ。
    男が過去に戻るたびに未来は上書きされていくので1をみつけた自分も2をみつけた自分もいないことになっていくと思うのだが、どういう時間軸の捉え方をしているのだろうか?

    「ひとを惹きつけてやまないもの」☆☆☆☆
    19世紀のトレジャーハンターと、ビール予想という難問に挑む21世紀の数学者の物語が交互に語られる。それぞれの謎を追う男たちはどういう結末を迎えるのか。
    実在する難問とリアルな数学者像がよかったが、何より途中で物語の方向が全く変わってしまうインパクトがすごかった。ギャグマンガのような突然の方向転換にはじめは戸惑うのだが、その先の展開でも数学者の生きざまが見えてくるのがおもしろい。

    「イヴの末裔たちの明日」☆☆☆
    AI技術の発展により、人間の技術的失業が始まった世界。主人公は事務の仕事を失い、生活費を稼ぐために治験バイトに応募する。投与される薬は確率薬理学によるもので、人間の「運」に作用するものらしい。

    「まごうかたなき」☆☆
    突如現れた魔物を討伐するために、1人の役人と1人の囚人、そこに4人の村人が志願して旅立った。
    著者は「ひとを惹きつけてやまないもの」を代表に、物語の始まりからは想像できないような展開を描くことが多いようだが、この作品も同様。魔物を討伐するはずが、各人にはそれぞれの思惑がある。方向転換は面白いのだがちょっと虚しい物語すぎた。

    「方舟の座席」☆☆☆
    地球滅亡の危機から逃れるために、世界の富豪たちは宇宙船で地球を脱出していた。そこに、富豪ではない普通の女子大生である麗が乗せられていた。それは孤児であった麗を援助していたあしながおじさんによるものだったが、彼にはある思惑があった。
    「ひとを惹きつけてやまないもの」と繋がりのある作品だが、こちらの作品にはあまり深みがないので不釣り合いのように感じてしまった。

  • 2019年10月創元SF文庫時を歩く書き下ろし時間SFアンソロジー:未来への脱獄、2019年4月 東京創元社Webミステリーズ:人を惹きつけてやまないもの、2018年12月東京創元社Genesis一万年の午後: イヴの末裔たちの明日、書き下ろし:まごうかたなき方舟の座席、の5つの短編を2019年11月創元日本SF叢書15として刊行。イヴの末裔たちの明日のラストで示された未来は、凄い衝撃だった。

  • 未来製作所流れで、松崎有理さんのファンになり、読了( ・∇・)!
    言うなら?私立文系?なウチ的に、理系の方の小説てのはとても新鮮。
    「未来への脱獄」
    「ひとを惹きつけてやまないもの」
    「イヴの末裔たちの明日」
    「まごうかたなき」
    「方舟の座席」〜の全五篇。

    ネタバレになるので言えないけど(言いたいけど)、結びの五篇目?
    方舟の座席が1番好きです(=´∀`)人(´∀`=)
     
    良書!
    星新一さんや田丸雅智さんや松崎有理さんは、武漢ウイルス蔓延のこの二ヶ月、とても楽しませてくれました!
    ありがとうございました!

  • 「ひとを惹きつけてやまないもの」は混乱した。キスチョコたちは何がしたかったのだろう。

  • 探り探りでネタバラシの作品があるのは、どうしてだろう?できれば読者が自分で気づいてほしいという親心かな。

  • SF短編集。正直理系は苦手、だし、ちょっとわかりづらいところもあったのだけれど。かなり楽しめました。
    お気に入りは表題作「イヴの末裔たちの明日」。いつかこんな時代が来るかもしれない……? そして「まごうかたなき」がかなり愉快な話でした。ああ、そういうことだったのか、とすとんと腑に落ちて。ブラックな読み心地も好み。
    「ひとを惹きつけてやまないもの」とそれに続く「方舟の座席」、実はなかなかに苦手なジャンルかな、と思っていたのだけれど。案外読めましたし、読み始めたら面白かったー。食わず嫌いはダメですねえ。ただし、理解できているかどうかは……不明(苦笑)。「未来への脱獄」も読み終わった後しばし考えましたが。ちょっと頭がぐるぐるです。

  • 独特のシニカルさとブラックさが効いてます。
    年明け最初の一冊、なかなかの好スタート(^^)

  • 松崎有理の短編集。
    この間、アンソロジーに収録されたと思ったら、こんなに早く1冊に纏まるとは思わなかったなぁ。
    どれも面白い短編なのでどれか1作を選ぶのは難しいのだが、矢張り表題作には思い入れがある。

  • 表紙がなんとなく可愛いなぁと思って手に取ってみましたが、中身は全然可愛くないSF短編集。

    最初はちょっぴり小難しくてむむむ?となりながら読んでいましたが話が進むにつれてその世界観に慣れ、気づけば止まらなくなっていました。

    なんだかクセになる、そんな感じです。

  • 近未来SF
    一部連作 中短編集

    誰しも経験がある「あの時こうしていれば良かった」「あの時があって今がある」など人生のターニングポイントを、地球滅亡、解雇、刑務所など独特の退廃感でシニカルに描いた物語。

    絶望的でありながら、尚、人間に寄せる期待を込めた作品。

    貴方も私も、この本が転換地点になるかも知れない。

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著者プロフィール

1972年茨城県生まれ。東北大学理学部卒。2010年に「あがり」で第1回創元SF短編賞を受賞。著作に同作を収録したSF連作集『あがり』のほか、『架空論文投稿計画』『5まで数える』『イヴの末裔たちの明日』などがある。

「2022年 『シュレーディンガーの少女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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