赤朽葉家の伝説

著者 :
  • 東京創元社
3.82
  • (391)
  • (466)
  • (519)
  • (49)
  • (10)
本棚登録 : 2800
感想 : 557
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488023935

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 物語は3部構成。鳥取の旧家に生まれた主人公瞳子の視点で、第1部は戦後〜昭和中期までの時代を背景とした祖母万葉の語り話、第2部は昭和中期〜後期に生きた母の毛鞠の話、第3部は主人公瞳子が、万葉の死に際に残した謎を解明する話。

    初めての桜庭一樹だったが、山の人の捨て子で赤朽葉家の千里眼奥様となった万葉の不思議な力と、全てを受け入れる強さが魅力的で、戦後復興期という時代背景も重なり、独特の雰囲気を醸し出していて読んでいてワクワクした。

    第2部は、赤朽葉家の大奥様タツと万葉の存在感は良いのだが、この時代は私自身が知っているせいか、主役である毛鞠についても、時代背景にも違和感があり、一生懸命レディースやって漫画家やって力つきて死にました...という流れについていけなかった。

    第3部は定職にもつけない瞳子が謎解きしながら成長して行くという展開なのだが、やっぱり主役は万葉。瞳子が悩んでいるような気配はあるが、深刻そうな雰囲気はなく、わざとイマドキの子の悩まなさを書いているのかは分からないが、どうもピンと来ない感じ。

    全体的に第1部が良かったので、☆4つ。毛鞠の話(特に漫画家時代)は無くても良かったのでは???と感じるが、通して独特の雰囲気があり、その世界に浸れたので面白い本でした。

  • 千里眼奥様万葉さん、がんばったなぁ
    久々に、むさぼるように読んだ本かもしれないな

  • 赤朽葉家という大屋敷の歴史を、戦後から時系列順に追った長編小説。
    桜庭一樹さんは「少女には向かない職業」以来2度目でしたが、こんなにも魅せる文章を書くイメージはありませんでした。
    特に毛鞠という女性の一生を描いた第2章が面白かった。
    基本的にバイオレンスで殺風景なストーリーながらも、どこか常にユーモアを持たせているので、いい意味で軽い。
    けれどしっかり個々に魅力を感じ、しっかり感動させられました。

    あと予備知識無しで手にとったので、眈々と続く赤朽葉家の物語の中で、なぜ3章のタイトルが「殺人者」なのだろう、という緊張感が前2章を読んでいる間中つきまといました。
    実はミステリーなのですが、それを全く感じさせなかったことにも驚き。
    ただ、オチが今ひとつだったことが少し残念です。
    本作はミステリーとして評価を受けているのでしょうか?
    個人的には万葉、毛鞠、瞳子までの赤朽葉家3世代の振り切れっぷりだけで最後までいっても十分満足できたと思います。
    何にせよまた、期待できる作家が現れて嬉しい…。

  • ただ一言。読め。

  • 面白い設定で、不思議な雰囲気をかもしだした作品。

    登場人物の名前がイイね~

    万葉、泪、鞄、毛毬、百夜など。

    長編だけれど、いったいこの先どうなるのと思いながら読み進めた。

    あっと驚く結末ではないけれど、読む過程が楽しめたし納得のいく結末だった。

  • 読み応えがありました。
    いくつか読ませていただいたこの方の作品の中では、一番好き。

  • 重厚で読み応えがあった。直木賞の「私の男」より面白かった。赤朽葉万葉が好きだなあ。

  • 赤朽葉万葉と赤朽葉毛毬及び赤朽葉瞳子の女性3代の生涯が描かれている。

    原日本人の末裔という説もある「サンカ(山人)」出身である赤朽葉万葉が孤児ながら、昭和初期より鉄鋼会社を経営する赤朽葉家に嫁入りするところから物語は始まる。

    3部構成のうち2部までは『昭和』の匂いがプンプンする内容で、世の中の変遷が肌感覚で実感できる。

    3部はようやくミステリーっぽい展開になるのだが、何しろ関係者は死人ばかりなので、中々展開がしずらい様子。

    読後に思い悩んだのは、桜庭さんは何を伝えたかったのか?という点。

    1日考えた現時点での推測は、『伝説のサンカ人が昭和から平成への時代変化の中で、特殊能力を失い一般大衆と同化しつつある』ということを伝えたかった・・・?

    なお、赤朽葉瞳子は中学高校と吹奏楽部に入部し、トランペットパートであった。

  • 墓地には花が咲き乱れ、古い墓石は苔むして、土の湿った匂いが漂っていた。赤朽葉本家の立派な墓石にまっすぐ向うと、見覚えのある痩せた中年男が立っていた。 三城だ。
    ――三城かぁ、昔、妻と二人で松本の三城牧場へキャンプに行ったんだよな。ユタカと瞳子のような年に。僕も若かったなあ。
     ごめんなさい。関係なかったですね

     わたしたちは、その時代の人間としてしか生きられないのだろうか。たたらの世界をめぐるこの村の男たちも、女たちも、生きたその時代の、流れの中にいた。人間というものはとても不器用なものだ。わたし自身を振り返っても、まったくどうしてこんなにもだめなんだろうと自分でもわかっているのに、そういう自分からなかなかうまく抜け出せない。変わるって難しいことだ。成長するって、たいへんなことだ。だけどわたしは、がんばって生きていくぞ、と思う。
    ――還暦を過ぎた今は、孫悟空が三蔵法師の手の周りを飛廻っていたように、人間って不器用だと感じる(悟る)ようになった。
    これって成長したのかな

  • 圧倒的な筆力で読ませる女系三代クロニクル。

    なかでも桜庭一樹の作家性が爆発した感のある第二部は素晴らしいというしか。

全557件中 71 - 80件を表示

著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜庭一樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×