まるで天使のような (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488247096

感想・レビュー・書評

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  • 携帯電話が登場する前の近代アメリカを舞台に、無一文になった主人公がカルト教団施設に訪れるところから、殺人事件の調査をする話。
    中盤までは不誠実な主人公がいつ投げ出すのかな? と思ったいたんですが、中盤以降ヒューマンドラマの色が濃くなるとぐっと面白くなりました。
    登場人物が多いので読者の自分が事件を追いかけきれるか不安ではありましたが、何とか人物表を見返しながら完走。
    ミステリーなので事件が主ですが、土埃のする描写が没入感を高めてくれる一作でした。

  • 面白かった!
    時代の流れで多少陳腐化したところ(カルト教団、犯人の動機、女性キャラの扱いなど)はあるが、執筆当時は相当斬新だったのではないかと思われる。また、それを超えたところに「も」面白さがあるため、今読んでも十二分に楽しめる。
    ダメ男もジョークに満ちたオサレ会話も得意ではないが、そんな私がジョー・クインのキャラを楽しめたのは、作者&訳者がかなりの手練れだったからではないだろうか。
    「最後の一撃」として知られているのがある種不幸で、現代のすれっからし読者のほとんどにとっては、おそらく最後の「1行」とはならないだろう。が、最後の20ページかそこらとしてなら充分「目玉ボーン」になりえるし、熟練して濃やかな作者の筆は、カタストロフ級のネタを単なる「目玉ボーン」で終わらせておらず、しみじみとドラマを楽しめる。
    おとなのための1冊である。

    2020/1/10〜1/11読了

  • マーガレット・ミラーは「ミランダ殺し」に続いて二冊目。
    「半身」を探したが見つからなかったので、これを読んでみた。

    予想に反して最初は随分淡々とした流れで、静かなミステリという印象だった。
    暑い夏を避けて部屋に引きこもって読むのに何かぴったり来る感じがよかった。
    最近読んだ特捜部Qも これも新興宗教団体の話で、北欧もアメリカも同じように人は宗教に救いを求めている。平和であってもなくても心の波立ちを鎮めるには祈りと実践なのだろうか。

    主人公は元私立探偵のジョー・クインという。ギャンブルで文無しになってヒッチハイクをして拾われ、迷い込んだ山の中の塔があり、孤立している宗教団体があった、中には30人に満たない人々が自給自足の生活をしている。一夜の宿と食事を求める。そこで元看護師の「救済の祝福の修道女」から120ドルでオゴーマンという男について調べるように頼まれる。

    なぜ隔離された生活の中で、120ドルを隠し持っていたのか、なぜ男の安否が気になるのか、クインはこの謎を解いてみたいと思う。

    150キロほど下りた小さな町でオゴーマンという男の足取りを調べ始める。皆が知り合いという変化のない生活を続けてきた人々は噂話に事欠かない。だが深く入り込んでみると、車の事故の後で姿を消したオゴーマンをまだ探し続ける妻、週刊誌を出している情報源のジョン。不動産会社社長のジョージ、横領を続けていて今は服役中のその妹、いわくありげな美人の共同経営者、過保護な母親と息子、登場人物の数は少ないが、それぞれ何かいわくありげで、そんな噂の中でも、オゴーマンはどこにも居ない、消えてしまっている。

    そして修道女に犯人から手紙が来てオゴーマンが5年前に死んでいることが分かる。

    さらに修道女が毒殺され、新入りの信者が塔の最上階から飛び降り自殺、凄惨な出来事から捜索の方向が見え始める。

    そして、ついに最後の三行で明かされる真実が驚きと悲哀を残し、これこそマーガレット・ミラーらしく全ての話が繋がる。

    手がかりを追ううちに、人々の裏の顔も見え、ふと立ち寄った町ではあるが、深いつながりも生まれクインの人生も変わっていく。

    気楽なギャンブラーだった男が人々のふれあいとともに心境が変化していく様子や、宗教団体が崩壊する有様など、人の生き方が運命的であればあるほど、それを変えさせる出来事が、偶然に、不意に訪れることを素直に時間を追っていく方法で書いている。ありきたりでない話であるがを興味深く読んだ。
    読みやすい新訳に出会えたのはラッキーだった。

  •  タイトルはいまひとつ意味不明だが中身はまずまずおもしろい。カジノですってんてんになった私立探偵クインが怪しげな山中の宗教団体に紛れ込み、そこの修道女の依頼で人探しをすることになるのだが、当の本人は事件に巻き込まれて行方不明だし、何やら同じ時期に銀行員の不正使い込み事件が起きていて、共通の関係者と接触するうちにどんどん深みにはまっていって...という話。登場人物や筋書きははわかりやすいのだが、何人か出てくる修道士が重要な役回りなのに出番が少なくて個性がいまいち把握しにいのが難点。読んでいくとああこういうことなんだろうなというところに落ち着くので、ラスト三行の驚愕の結末、という使い古された惹句にはだまされない。それよりも本作の魅力はクインと相手との軽妙な会話だろう。まるでひと昔前の探偵もののようなおかしみのあるやりとりだ。作品自体は確かに古いのだが、新訳ということなので、これは訳者が芸達者なのだろうな。前にも書いたけど翻訳物は作者とならんで訳者の力量が重要だ。一人称をぼく、おれ、わたし、わし、のどれにするかで全然印象が違う。昔の二流ハードボイルドを読んでいるかのような懐かしさ。なんといっても本書の魅力はそれに尽きる。

  • ミステリ

  • 確かに面白かったのだが、訳の古めかしさがかなり読みづらくしていた。ブクログ内の評価が高かったので読み続けられたが、そうでなければ投げたすところだった。新訳で読んだらもっと高評価になるかな。ラストがすばらしい。

  • CL 2017.5.11-5.18

  • ミラーとは思えないコミカルなノリと、クインのシニカルな言動に笑わされ一気読み。最後まで面白かった。もう少し掘り下げて欲しかったエピソードもちらほらあったが、後日談なんて書いたら余韻がぶち壊しになるだろう。

    肝心の謳い文句『最後の一撃』は、途中で気が付いてしまったので何ら衝撃がなく、まだページがあると思って捲ったら解説だったことの方が驚きだった。

  • 面白くさくさく読めるのはやはり翻訳力だと思う。黒原敏行翻訳はワタシには当たり翻訳です。最後の衝撃はまぁまぁ衝撃でした。あの人が!? みたいな。ミステリーなので内容ははぶきます。

  • エンジンサマーの<しゃべる灯芯草>みたいな塔の人達のネーミングが気にはなったが、最後の一撃には脱帽です。

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