だれもがポオを愛していた (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.78
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本棚登録 : 207
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488420017

作品紹介・あらすじ

諸君はアッシャー家の崩壊を見いだすだろう-予告の電話は真実を告げていた。錦秋のボルティモア郊外で、日系人兄妹の住む館が爆発し傍の沼に崩れ去った。妹は謎めいた言葉をのこして息絶え、兄の遺体もまた水中深くに。ほどなく、棺に横たわった美女の歯が無惨に折り取られる『ペレニス』、斧で頭を割られた被害者が片目の黒猫ともども壁に塗り込められる『黒猫』、各々の小説に見立てた死体が発見され、事件は更なる混迷を呈していく…。E・A・ポオ終焉の地で、デュパンの直系というにふさわしい探偵が本領を顕わす。ポオの言祝ぎが聞こえる、オールタイムベスト級本格ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • tamasan7 さんのレビューから読みたくて。『アッシャー家の崩壊』うろ覚えでも面白かった!見立てのような事件の息もつかせぬ展開と、可愛いニッキとナゲットら愉快な捜査官達とのやりとり(名前もワザと変に?)、W✳︎✳︎教授の論文など読みどころ満載。

    • tamasan7さん
      111108さん

      コメントありがとうございました!
      レビューを読んでいただいて、さらに読みたい!と思ってくださるなんてとても嬉しいです!
      ...
      111108さん

      コメントありがとうございました!
      レビューを読んでいただいて、さらに読みたい!と思ってくださるなんてとても嬉しいです!
      本作の存在は知り合いに聞くまで知らなかったのですが、レベルの高い本格ミステリで、こんな隠れた名作があったとは!とびっくりしました。
      これからも何卒よろしくお願いいたします。
      2021/05/24
    • 111108さん
      tamasan 7さん
      お返事ありがとうございます!
      またレビュー参考にさせてくださいね!
      tamasan 7さん
      お返事ありがとうございます!
      またレビュー参考にさせてくださいね!
      2021/05/24
  • エドガー・アラン・ポオの『アッシャー家の崩壊』を新たな解釈で再構成したミステリ。

    日系人実業家、エイブ・アシヤ氏がボルティモアで購入した沼沿いの屋敷が爆破により崩壊した。屋敷には、エイブの弟の子どもであるロバートとメアリアン兄妹が住んでいたが、メアリアンは謎の言葉を残して死に、ロバートの遺体も沼から発見される。さらに、ポオの小説『ペレニス』『黒猫』に見立てた死体が屋敷周辺で次々と見つかったため、警察の捜査は行き詰まってしまう。
    アメリカに住む父を訪れた日本人外交官のニッキは、父の友人の息子でボルティモアの警察官であるナゲット・マクドナルドから情報を得て、この不可解な事件の謎に挑む。

    翻訳小説風の語り口に登場人物の冗談のような名前で、一見軽めのパロディのように見せかけて、実は極めて論理的に『アッシャー家の崩壊』の新解釈を展開する。この硬軟取り交ぜた感じが本書の大きな魅力である。
    翻訳小説風というのもポイントで、舞台が日本なら警察の捜査にリアリティがないと物語が嘘くさくなってしまうところ、アメリカの警察が舞台なので、部外者のニッキがぐいぐい捜査に入っていっても「そういうこともありなのかな」となんとなく納得してしまう。

    題名から推察できるとおり、本書はポオが大好きな人向けの小説なので、ポオの小説、特に『アッシャー家の崩壊』を全く読んだことのない人にはさすがにおすすめできないが、代表作を一度さらっと読んだ程度の私くらいの者ならミステリとして十分楽しめる。
    読み終えた後は、ポオを改めて読み直したくなること間違いなしである。

    • 111108さん
      b-matatabiさん♪

      この前コメントいただいた時本書読み終えたとのことで、レビュー楽しみにしてました!

      そうですね〜ふざけた名前や...
      b-matatabiさん♪

      この前コメントいただいた時本書読み終えたとのことで、レビュー楽しみにしてました!

      そうですね〜ふざけた名前やノリから軽めのパロディかと思ったら、かなり本格的なミステリー で読み応えありますね。エピローグも『アッシャー家の崩壊』考察という体で作者の思いを語らせてますし、ポーに惚れ込んで書かれたが伝わってきますね♪
      2024/03/09
    • b-matatabiさん
      111108さん、コメントありがとうございます。
      アメリカの警察はニッキを信用し過ぎ、とは思いましたが、それでも違和感なく読めるのは、翻訳...
      111108さん、コメントありがとうございます。
      アメリカの警察はニッキを信用し過ぎ、とは思いましたが、それでも違和感なく読めるのは、翻訳小説っぽくしたからかな、と思います。

      前に111108さんがおすすめしてくれた、ポアロの『カーテン』を解釈し直した法月綸太郎シリーズの『カーテンコール』を読んだときと同じすっきり感を味わえました。
      2024/03/10
    • 111108さん
      b-matatabiさん♪

      確かに翻訳小説風なのがニッキの活躍ぶり?をいかしてて良かったですね。
      法月さんの『カーテンコール』あれも論理的...
      b-matatabiさん♪

      確かに翻訳小説風なのがニッキの活躍ぶり?をいかしてて良かったですね。
      法月さんの『カーテンコール』あれも論理的でありながらポアロ愛に溢れていて、読んで楽しかったですよね!原作のオマージュ作品としてどちらも好きです♪

      2024/03/10
  • んーーすごい!
    作者の名前も聞いたことがなく、この本自体ミステリ研OBから聞くまで知らなかった。
    こんな隠れた?本格があったとは!

    正直、ストーリーに盛り上がりはそこまでなく、犯人も意外ではあるものの地味である。犯人が指摘されてからは、特にどんでん返しもなくすんなりと終幕する。
    しかし!犯人に辿り着くまでのニッキの推理がクイーンばりにロジカルである。犯人や動機などにあまりスポットを当ててないことからも、そんなものは二の次で、ロジックこそが主役という感じ。
    クイーンは有名どころしか読んだことがないが、ニッキの推理を聞いてると、あーークイーンがいると感じた。

    また、エピローグのアッシャー家の崩壊の考察がすごすぎる。
    幻想小説という仮面の裏に実は人為的な犯罪が潜んでいたなんて。あんなふうに、自分の作品を探偵のような目で読んでる読者がいるなんてポーも嬉しいだろうな。

    • 111108さん
      tamasan 7さん はじめまして。

      勝手にお名前あげてしまいすみません。

      でもtamasan 7さんのレビューでこんな面白い本と出会...
      tamasan 7さん はじめまして。

      勝手にお名前あげてしまいすみません。

      でもtamasan 7さんのレビューでこんな面白い本と出会えて本当に良かったです!

      いまさらながらこの本からクイーンやポオをもっと読みたくなりました。

      これからも本棚参考にさせてくださいね!

      2021/05/23
  • 最後の「アッシャー家の崩壊 を犯罪小説として読む」というエッセイがこの作品のキモであり、改めて「アッシャー家の崩壊」を読み直してみたいと思わせる、面白い内容でした。一読の価値有り。

    本作はアメリカ人の刑事さんが書いた文章を翻訳する、という設定なので、翻訳独特な言い回しとか、読みづらい感じとか、文章が如何にもそれっぽく書かれていて、本当に海外の翻訳小説を読んでるような気分が味わえました。

  • どうしてこんな作品を今まで見落としていたんだろう、と個人的に忸怩たる思いでした。ただでさえ見立て殺人大好きなのに、しかもポオって!!! それもアシヤ家が文字通り崩壊というスケールの壮大すぎる見立てに愕然としながら感激です。
    もちろん、謎解きの論理もしっかり堅実な本格ミステリでした。あくまでも事実のみを検討するニッキのストイックな探偵ぶりもいいのですが。個人的には動機等から突き詰めるのも嫌いじゃないんだけどなあ、と思っていたら。
    ……なんたること。動機もインパクトのあるものでした。こういうちょっと狂気な路線がやはり好きです。そしてポオの「アッシャー家の崩壊」の謎までこれで解けてしまうだなんて! まさしく目からウロコの一冊です。

  • 実に手の込んだミステリーで、新本格を先取りした時代の先を行きすぎた作品だ。ポオの作品分析も、巻末の有栖川有栖氏の解説も面白い。

  • 本日の読書会覚書。

    今月は課題書以外ミステリに手を出していなくて、しかも昨日夕方から課題書を読み始めるわやわやさ…。

    もっと、こう、気を引き締めたいと思います。

    つい、文字書いたり絵を描いたりするとそっちに比重が掛かりぱなしになってしまうので。

    読み始めると乗るんですけれども。

    そんな感じで一読しかしてなかったけれど臨んだ読書会でした。

    ざっくり感想。





    「きみはもう少し人間たちに関心を向けるべきだと思わないかい?人間関係、動機、陰謀、そんなものにさ」と言われた探偵役が

    「デュパンは『モルグ街の殺人』でそんなことしなかったわ」って返す。

    ココのやりとり、心拍上がるほど好き。



    タイトルからの通り、ここで求められているのはホワイダニットではなく、ポオであること。



    一貫してポオに捧げられ進む物語という宣言文みたいな返しにギュッと来る。

    何故そうしたかではなく、実際の振る舞い、物証から立ち上がる可能性の範囲から理屈で詰めて浮き上がらせた現実を受け入れるというアプローチは、成程モルグ。







    被害者がポオに心酔していたこと、それを厭うていた妹さえもその呪縛からは逃れられずに守りたい人を護る為に『ユーラルーム』と口にする。



    実行犯は意図がなかったにもかかわらずポオの作品をなぞり、そして真実の糸口はポオの作品の中に。

    『ユーラルーム』を最初私も物証と考えアナグラムの可能性を考えたけれど、確かに文中で探偵役が目を見開いたように、それは“詩“として読まねばならず、どこまでもポオの作品を味合わされながら引き摺り回す作品でした。



    そういう意味で『だれもがポオを愛していた』というタイトルの解釈をして良いのだろうと思いながら読むエピローグ。

    そこで信じられないものを目にして私はのたうつ羽目にwww



    エピローグに作中作として乗せられた某教授の『アッシャー家の崩壊』に関するエッセイ。



    十数ページにしか満たないエッセイ。

    物語は全体で400ページ近くなんですが、その40分の1にもならないこのエッセイの濃密さよ。

    そのアッシャー家に関する考察の深さに密度に、この論考を世に出すために逆算して『だれもがポオを愛していた』というミステリが書かれたのではと、私は勇み過ぎかと思いながらも確信していたりします。



    むしろ、そうであって欲しいくらいの力強さを持った論考。

    凄すぎた…!

    そして、ここまで読んだ上で『だれもがポオを愛していた』というタイトルに至るべきだと。

    だれよりも愛していたのは、翻弄された登場人物以上に、作者だったんだなぁと。

    作者さんの他の作品は寡聞にして未読なのですが、勝手にそう思って胸打たれました。



    そしてそして、何よりもう!って思ったのが、先月の課題書が『ポー作品集』だったのですが、その後今月『だれもがポオを愛していた』を選書なさる先輩方の用意周到さがもうすごい。



    本当に、選書お任せしてひたすら先輩方のおすすめで引き摺り回して欲しすぎます。

    良き先達は、です、うん。

  • ポオの墓近くの沼のほとりに建つアシヤ邸の爆破事件で死亡したアシヤ兄妹。さらに、その近くの小屋で見つかった事件関係者二人の遺体。
    ポオの著作『アッシャー家の崩壊』『ベレニス』『黒猫』に基づく連続見立て殺人で、探偵役は、事件記述者である警察官の友人の娘の更科丹希(ニッキ)。ニッキの探偵手法は、人のつながりや動機よりも、物証に重点を置いたデュパン流のもの。
    爆破予告電話や、妹のダイイングメッセージ『ユーラルーム』、ポオの未発表手紙の行方、一時失踪した元使用人夫妻、失踪したその娘と恋人の行方、殺された仲買人の女の足取り等、複雑な要因が絡み合っていて、事件の構図はかなりややこしい。
    ニッキはポオ研究家の教授の話を聴くことで、真相にたどり着いているが、正直必然的で唯一無二の真相とは言い難く、作品中で示されているデータだけで読者が真相を推理することは難しいとは感じる。
    小屋の窓ガラスが壊されていたこと、ドアの錠が壊されていたこと、色々な場所の指紋が消されていたことなどから紡ぎだされるニッキの推理は鋭い。その推理から導き出される棺の移動に関する真相は、ポオの某作品の真相と密接な関わりがあり、なおかつ意表を突くものであり、とても面白く、感心した。
    登場人物の間で交わされる会話は、アメリカ人らしいユーモアにあふれていて、読みやすい作品。
    エピローグでは、作中に登場するポオ研究家の教授による『アッシャー家の崩壊』の解釈が示されていて、こちらも興味深い内容だ。

  • 新本格前夜のミステリ、と紹介されていたが、確かにうなづける。ポオの小説の見立て連続殺人という、若干の幻想的要素を持ちつつ、謎は論理的。言い回しもアメリカの翻訳小説風で面白かった。また、ポオのアッシャー家の崩壊を犯罪小説として読み解く一編も秀逸。

  • 諸君はアッシャー家の崩壊を見いだすだろう―予告の電話は真実を告げていた。錦秋のボルティモア郊外で、日系人兄妹の住む館が爆発し傍の沼に崩れ去った。妹は謎めいた言葉をのこして息絶え、兄の遺体もまた水中深くに。ほどなく、棺に横たわった美女の歯が無惨に折り取られる『ペレニス』、斧で頭を割られた被害者が片目の黒猫ともども壁に塗り込められる『黒猫』、各々の小説に見立てた死体が発見され、事件は更なる混迷を呈していく…。E・A・ポオ終焉の地で、デュパンの直系というにふさわしい探偵が本領を顕わす。ポオの言祝ぎが聞こえる、オールタイムベスト級本格ミステリ。 (「BOOK」データベースより)

    結構期待して手に取ったのですが、うーんイマイチ。
    面白いには面白かったのですが、主人公(だよね、多分)のニッキが好きになれない。
    途中の言動・行動も最後の謎解きも、なんかイライラする。
    全体的に読んでいて心地よくない。

    どんなに陰惨な事件が題材でも、有栖川氏の作品は読んでいて心地よい。
    文章が肌に合うのです。

    この作品は合いませんでした。
    普通に面白く、途中でいやになることもなく最後まで読んだのですけどね。
    私がポオを読んだことないのがいけないのかもしれませんが。

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著者プロフィール

平石貴樹(ひらいし・たかき)
1948年函館生まれ。作家、東京大学名誉教授。1983年、「虹のカマクーラ」で第七回すばる文学賞受賞。
著書に『松谷警部と目黒の雨』『松谷警部と三鷹の石』『松谷警部と三ノ輪の鏡』『松谷警部と向島の血』(創元推理文庫)、『アメリカ文学史』(松柏社)、
翻訳にオーエン・ウィスター『ヴァージニアン』(松柏社)、ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』(共訳、岩波文庫)などがある。

「2019年 『一丁目一番地の謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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