戦場のコックたち (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 153
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488453121

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めから中盤までは、軍の名前や戦争の言葉で読みづらく、目立った展開もなく…うーん??って思ったけれど、終盤にかけて、戦争の小説なんだと思い知らされる感じと、主人公の心境が痛いように伝わってきた。☆2→4いう感じ。

  • 鮎川賞も落ちたもんだ。これで受賞作? 

  • 本屋大賞2016年7位、このミス2016年版2位。第二次世界大戦終盤のヨーロッパ戦線を舞台とした連作短編の戦争小説。そういえば、自分が子どもの頃はノルマンディー上陸作戦とか戦争映画がいっぱいあってTV映画でも良くやってたなと思い出した。75年程たった今またこういった本を書こうとするモチベが凄い。精緻な状況描写や心理描写で戦争の悲惨さや異常さをリアルに再現している力作。中身が詰まっている分重すぎてなかなか先に進まなくて苦労した。途中の謎解きもいまいちピンとこないし。まあ、2,3意外性のある展開は面白かった。最後の編になってやっともりあがってきたけど、やっぱ自分にはしんどかった。終戦のローレライとか綾辻を最初に読んだときは全然進まなくって断念したけど、ずーとしんどくて最後まで行けたらそれなりに達成感得られる系のやつあんまり好きじゃない。20日ぐらい時間かかかったし、ほとんどしんどい時を過ごしてしまった。

  • バンドオブブラザーズなどの戦争映画や、戦場であり得たであろうミステリーを織り交ぜ、残酷で醜悪な戦場・戦争を描いたフィクション作品。
    戦闘シーンで表現力が乏しいところがあったが、ストーリーとしては十分成立していた。
    名探偵であるクールな主人公の相棒が死ぬのはマジか?と思わせるが、戦友たちとの再会で締めくくるラストは感動的でよかった。
    当事者でない日本人が書いたヨーロッパ戦線の物語ではあるがあなどれない。

  • 著者の初長編。本作で直木賞の候補にもなった。
    『戦場における〝日常の謎〟』という非日常的な設定がユニークで面白かった。当然ながら、舞台は戦地のため、『さっきまで隣にいた戦友が死んでいる』といった状況下にも、当然、陥る。その中の『日常の謎』は、主人公を始めとする登場人物が、何とか正気を保とうと足掻いているようにも見えた。
    ところで、デビュー作『オーブランの少女』を読んだ時は、本書のように歴史もののミステリが初長編として刊行されるとは思っていなかった。次に出た『ベルリンは晴れているか』も第二次世界大戦末期を舞台にしている。こっちも単行本で買ってしまうべきだろうか(でも判型変わるのはイヤだなぁ)。

  • 勝手にタイトルと帯からグルメ関係の日常の謎ものという割と軽い感じの話を想像して読み始めたけど、完全にそれとは違った読後感だった
    前半こそそういう雰囲気もあるけど、謎解きは主眼ではなく一人の普通のアメリカ人の戦争体験を丁寧に描いたものと感じた
    翻訳かと思えるほどの詳細な記載のなかで、想像を超えた悲惨な体験がえがかれ、徐々に失う日常や戦友たちの記憶がずっしりとのしかかる そんな重厚な読書体験だった

    ある世代以上にとって海外に触れる窓口の大半が翻訳の小説や新聞記事、洋画であり、翻訳調であることはまさにそうしたリアリティーを伴う

  • デビュー短編集『オーブランの少女』が良かったので、次の作品を期待していた深緑野分、文庫で読むので3年ぶりになる2冊目の本がこちら。分厚くてびっくり。やや幻想よりだった『オーブラン~』とうってかわってこちらは戦場を舞台にした連作ミステリ風長編。背景になる世界史を詳細に調べ上げてそこにミステリを絡めてくるあたりも、デビュー作からの作風の幅広さも、私の中では早くも深緑野分はポスト皆川博子。

    舞台は第二次世界大戦中、1944年6月のノルマンディー上陸作戦を皮切りに各地を転戦していく合衆国軍のコック(特技兵)ティムが主人公。同じくコックのリーダーで冷静沈着なエド、同僚の陽気でお調子者のディエゴ、フランケンよばわりされてるダンヒル、おしゃべりな補給兵のオハラ、口は悪いけど機転の利く衛生兵のスパーク、イケメンで調達上手なライナス、作家志望の通信兵ワインバーグら、個性豊かな仲間たちと、戦地の日常の中で起こるちょっとした謎を解き明かしていく。

    とはいえ、場所はあくまで戦場。なので当然ティムは望まずとも敵を殺さねばならず、戦地の民間人も犠牲になるし、仲間たちも次々と命を落としていく。命が無事でも心が壊れてしまう者もいて、戦争がもたらす悲劇の多様性も描かれている。

    生い立ちも出自もさまざまなキャラクターたちがこういった特殊な状況の中で友情を育む部分だけが心癒された。主人公ティムのニックネームは「キッド」素直で子供っぽく根が善良な彼ですら、戦場ではそれなりに荒むけれど、そんな自分を自覚し反省する度量があるから彼は「まとも」で、彼の戦友たちはそんな彼の普通さに救われていたのだろう。

    実際の探偵役を担うエドも魅力的なキャラクターだったけど、個人的にはライナスがお気に入りでした。イケメンだからじゃないよ!(笑)それぞれの登場人物にそれまでの人生がありドラマがある。けれど戦争は一瞬であっけなく彼らからその後の人生を奪ってしまう。その容赦なさを十二分に描き出してあって、なおかつ読みものとしての娯楽性もあり、寡作だけど深緑野分はずっと追いかけていきたい信頼に足る作家と確信。

  • 翻訳本ではないが、第二次世界大戦末期のアメリカ兵の話。主人公の男の子がすごくいい子。悲惨な戦場の様子をやわらげてくれる仲間同士のやりとりがじわっとくる。いつかまた読み返したくなる作品。

  • 臨場感あふれる描写、詳細な書き込み、魅力的なキャラクター、ミステリとしての面白さ。
    これらを兼ね備えつつも、決して単なるエンタメ小説ではないと感じました。

    本作はノルマンディー上陸作戦に始まり、第二次世界大戦のヨーロッパを進軍するアメリカ陸軍のコック兵、ティムの視点で進みます。

    次第に語られる登場人物たちのバックグラウンド、主人公たちの過酷な体験、戦場で目にする凄惨な光景。
    読み進めていくとやがて、戦争はなぜ絶えないのか、人間はなぜ憎悪し合うのかという命題に突き当たります。
    非常に重厚な一冊でした。

  • 一つ前に読んだ物よりもこちらの方が良く思えた。映画のように映像が立ち上がってくるようだった。重く苦しい感情が揺さぶられたし、気分良く終わる話ではないけど、物語として完成されていると思う。

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著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。その他の著書に『分かれ道ノストラダムス』『カミサマはそういない』がある。

「2022年 『ベルリンは晴れているか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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