アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 84
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488541040

感想・レビュー・書評

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  • C・A・スミスの第三短編集!すごくいい!第一短編集とどちらがいいかと言うくらい。第二短編集があまり面白くないな~と思っていたので少し不安だったのですが、これは良かった。リリス、ラミアのでてくるのが好き。蟾蜍のおばさん、恐いんだけど、なんか可笑しい^^降霊術奇譚はどれも好き、分裂症の造物主・・・これはショック。世界の真理に言及してる??凄い、凄い。この中に登場する、美しくも悍ましい世界に魅入られた人々は、自分たちの分身であり、作者の分身でもある。異界を覗きたいと思う人は好きになる本です。素晴らしい。

    • ななこさん
      日向さん、こんばんは~♪どれも面白かったですね。蟾蜍のおばさん、笑えました!当人は相当ショックでしょうが…(笑)アヴェロワーニュの媾曳あたり...
      日向さん、こんばんは~♪どれも面白かったですね。蟾蜍のおばさん、笑えました!当人は相当ショックでしょうが…(笑)アヴェロワーニュの媾曳あたりも記憶に残っていますね~全体的に恋に結びついたものが多くて新鮮な感じがしました^^
      2012/07/21
    • 日向永遠さん
      nanacoさん、こんばんは★やっぱりスミスは面白いです。文章によるところも大きいですね。詩人・・わかります。ラミアの登場回数が多くて良かっ...
      nanacoさん、こんばんは★やっぱりスミスは面白いです。文章によるところも大きいですね。詩人・・わかります。ラミアの登場回数が多くて良かった?です。
      2012/07/22
  •  フランス中南部に位置する土地、アヴェロワーニュ。キリスト教が浸透する一方、その裏では異教の神々に面妖な怪物、土着の信仰や魔術・妖術が人々の生活を脅かし、または潤していた。
     本書はそのアヴェロワーニュを舞台に、妖術師が術を行使し、人獣を襲う怪物が現れ、人々がそれを退治しようとする話が集められた連作短編集である。ヒュペルボレオスより後という時代設定のため、スミスは時に事態解決のキーアイテムとして、ヒュペルボレオス時代の魔道士エイボンが残した書物や遺品を登場させることもあった。
     グロテスクながらも詩的な描写。欲望と愛欲こそが人を生き生きとさせることを感じさせる表現。、必ずしもヒロイックな結末を迎えるとは限らない、スミス流のユーモアが効いた物語。町の人々から蔑まれた妖術師が死体を寄り集めて作り上げた巨人を使って彼らに復讐しようとする『イルゥルニュ城の巨像』や彗星から訪れたと思しき怪物が人獣を襲いまわる『アヴェロワーニュの獣』など12篇の他、クトゥルフ神話の影響を強く感じる妖術師もの6篇、計18篇を収録。
     アヴェロワーニュが舞台の作品の特徴は他の2作品とは異なり、作品の多くが中世・近世(12~18世紀)を時代背景としているために日本発ファンタジーに慣れ親しんでいる人からすれば比較的受け入れやすいこと、そしてそれが何年の出来事なのかが明記されているので、実際の出来事や実在の人物と、絡めようと思えばできることだ。クトゥルフ神話×ファンタジーの小説またはシナリオの創作を考えている人は、本書と『クトゥルフ・ダークエイジ』が良き参考書となるはずである。

  • 地元の図書館に蔵書されておらず、読めていなかった三冊目
    の短編集を古本で入手して読破。

    タイトルにあるアヴェロワーニュを舞台にした短編は、前に
    読んだ別の短編集「イルーニュの巨人」に収録されている
    作品が多く、やや残念。その分、後半に「降霊術奇譚」と
    してまとめられた作品が面白かった。やはりC.A.スミスの
    短編を読むのならば同じシリーズでまとめて読むのが良い
    ようで。

  • 世界観が非常に好み。ダークファンタジーとも呼ぶべき陰惨なにおいに満ちた短篇集だが、よこしまなハッピーエンド(?)もあることで、作品全体を包む血塗られた暗さがいっそう増している。文章はやや装飾が過多のため、人によっては読みにくさを覚えるかもしれない。
    「アヴェロワーニュの媾曳」は既視感があるので、どこかで読んだのだろう。

  • スミスの作品を読んでいると、いつも何故かやましい気持ちになります(笑)
    そう、禁止されている本をこっそり読んでいるみたいな……。
    あまりにもおぞましくグロテスクなのに、ふとした時に感じる美しさ。
    ちょっとクセになるんですよね~。

    一作目の「ゾティーク~」ほどのインパクトはないのですが、安定した面白さ。

    「イルゥルニュ城の巨像」が好きです。
    死体を使って……というのが、想像するとちょっとアレですが。

    詩人と娘が美しき女に惑わされ城に導かれる「アヴェロワーニュの媾曳」
    どことなく人間の姿に似た植物マンドラゴラの恐怖を描いた「マンドラゴラ」
    失業中の主人公が見つけた新しい仕事は……「妖術師の帰還」

    このあたりが特に好みでした。

  • ・クラーク・アシュトン・スミス「アヴェロ ワーニュ妖魅浪漫譚」(創元推理文庫)は「ゾティーク 幻妖怪異譚」「ヒュペルボレオス極北神怪譚」に続く訳者大瀧啓裕によるC・A・スミスの短編集である。先の2冊は架空の地の物語であつ た。今回のアヴェロワーニュは実在の地名ではないが、フランスの一地方を指す地名であるらしい。架空と言へば架空の地名である。しかし、 前2冊が全くの想像上の世界であつたのに対し、こちらは現実世界をモデルに持つらしい(大瀧啓裕「解説」413頁)。それがスミスの意図 するところであつたかどうかは別にして、この点が作品に大きく影響してゐる。一読して明らかなのだが、アヴェロワーニュの物語は人間的で ある。あるいは世俗的と言はうか。例のクトゥルー神話と関係があつても、決して神中心の物語、敢へて言へば、神話にはならない。あくまで 人間が中心の物語である。更に言へば、本書には妖魅浪漫譚なる書名がついてゐるが、この妖魅なる用語は必ずしも適当ではない。妖といふ字 には妖艶につながるイメージがある。日夏耿之介の「吸血妖魅考」もこのイメージをねらつたものと思ふが、ここではこれはじやまである。さ ういふものを持たない用語で、ごく単純に怪奇とでもつければ良い。魔法もここから出てくる。物語に於いて、中世ヨーロッパと魔法は密接に 結びついてゐる。アヴェロワーニュもまた魔法の跳梁跋扈する世界である。妖しいよりは怪しいのである。怪奇で浪漫だからこそ人間なのであ る。
    ・正確にはアヴェロワーニュの物語ではないのだが、本書の最後に「降霊術奇譚」と題された6編の短編がある。ここに「分裂症の造物主」と いふ一編がある。これはパロディーであつて、「造物主、神は一人しか存在」(355頁)しないが、その「神は二重人格、ジーキルとハイド のようなものにちがいな」(同前)いといふ内容である。端的に、神と悪魔は裏表、である。召喚される悪魔ビフロンスは異形である。しかも 逢ひ引き中に召還されたから機嫌が悪い。主人公はそれを電気ショックで神に戻さうとする。しかし失敗、精神病院送りとなる。サタンはそれ を確認すると、「わたしはしばらく出かける」(364頁)といふわけで「地獄の小さな裏口に達し」(同前)、そこから「敷居を超えて天国 に入っ」(同前)ていくのである。これは神ではない。裏表のある、正に人間である。少々極端だが、アヴェロワーニュもかういふ世界であ る。「アゼダラクの聖性」もこの種の物語であらう。「ウェヌスの発掘」の修道士を抱擁してゐたウェヌス、「アヴェロワーニュの獣」の修道 院長、さうして「怪物像をつくる者」の大聖堂の怪物像、これらもまた同様の存在であらう。クトゥルーの神々の如く、善に徹することも、悪 に徹することもできぬ存在である。そんな中で、「イルゥルニュ城の巨像」は悪に徹してゐる物語であらう。師ナテールとその弟子ガスパー ル、これが悪と善である。ナテールは死に際して、己を巨人に造りかへようとする。成功したかに見えたがである。転向したガスパールはそれ でも善に徹したのであらう、至誠天に通ずである、ナテールの野望を阻むことができた。これなども転向があり、そして教会は無力であるがゆ ゑに、神ではなく人間の物語である。このやうに、アヴェロワーニュは前2冊と比べると格段に読み易い。これは私が俗人であるといふだけの ことかもしれない。それでも「幻妖怪異譚」や「極北神怪譚」の間にはさまれば、かういふのは息抜きになる。人間は、世俗はおもしろい。結 局はさういふことである。私は短編集「イルーニュの巨人」を思ひ出しながら読んでゐたのであつた。

  • 同じ創元推理文庫の「イルーニュの巨人」と収録作品がほとんど被っていて残念。訳はこっちのほうが好みでした。グロテスクな死の世界は変わらず、非常に魅力的。

  • 何故か最初のタイムスリップのが一番お気に入りw
    いや、ああ言うのって可愛いよね
    わざと効果強めるなんてさ

    後でちゃんと感想書こう

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著者プロフィール

1893年、米国カリフォルニア州に生まれる。若くしてその詩作が注目され、18歳で詩人ジョージ・スターリングと親交をはじめ、彼を介しアンブローズ・ビアスに評価される。1922年にH・P・ラヴクラフトの知己を得、彼の勧めで「ウィアード・テールズ」誌に寄稿。29年から同誌を中心に、独自の幻想世界を描いた物語を精力的に発表。代表作に「魔術師の帝国《1 ゾシーク篇》」「魔術師の帝国《2 ハイパーボリア篇》」(アトリエサード)などがある。1961年歿。

「2020年 『魔術師の帝国《3 アヴェロワーニュ篇》』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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