裏側からみた美術史

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532260965

作品紹介・あらすじ

ルネサンスや印象派などメジャーなジャンル以外でも、美術史の中にはかなり刺激的で興味深いエピソードがあふれている。一風変わったトピックの中から炙り出される意外な逸話。凡人に嫉妬した天才、ヌードが取り締まられるとき…美術史の教科書には載っていない異色の掌編20話。カラー口絵つき。

感想・レビュー・書評

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  • その名のとおり「裏側からみた美術史」。美術を、より私たちに近いところ(社会的側面)から見た感じ。個人的にはカラヴァッジョの話とアンディ・ウォーホルの指名手配犯写真の話がGOOD。サクッと読めます。

  • 文字通り裏側からの視点で、
    よくある美術本とは違う面白さがありました。

  • 資生堂の「花椿」で連載された「美術史ノワール」をまとめた美術エッセイ。
    「美術史」などというと難しいのかな?と思ってしまうけれど、サクサクと読めて、でも美術とその歴史の背景などもわかりやすく書かれていて面白かった。

    こういった本を読みつつ美術館で絵画鑑賞すると、また絵の見方が違ってくるから面白い。

  • 20140120

  •  まぁ、ネタとしては面白い。


     一つだけ、「死刑囚と美術」に載ってた一文を読んで涙が出ました。


     31歳の死刑囚が、刑の直前に色紙にしたためた句で


     「綱よごすまじく首拭く寒の水」



     このような心境に達した人間が、まだ31歳と言う若さにして命を絶たなくてはならない現実に、やるせなさを感じました。

  • 「芸術家の晩年と絶筆」などは、たいへんに興味深かった。「語ることができることとできないこと」もとても納得がいく考えだった。私も自分の作品について語るのは苦手で、いつも説明は最小限にとどめたいと思っている。作り手にとっては作品そのものが”ことば”であり、作品がすべてだと思うからだが、その辺りを文章で表してもらえた気がして、読みながら何度も首肯した。

  • [図書館]
    読了:2011/12/23

    う~ん、なんでだろう、面白くない。
    語り方が偉そうなんだよなぁ。

    そのわりに、エピソードの語り口は平板。カラヴァッジョの性格破綻っぷりなんて、全然伝わってこない。「へー、そういうことがあったんだ」で終わってしまう感じ。

    また、p. 24にてこんなことを述べている。

    「そもそも芸人というものは素行が悪くても許されるという風潮があった。多少、世間の常識とずれていても大目に見られるものであった。(中略)作家や芸術家も同じである。酒やドラッグ、女色に溺れ、借金を重ね、家庭を犠牲にして常に醜聞にまみれているのが当然という感覚なのだ。しかし、芸術家や芸人といえども、そうした無頼やアウトローは許されない世の中になってしまったのだろうか。」

    この人が能天気にこんなこと言えるのは、自分が「犠牲にされる家族、女、関係者」になることなんて夢想だにしていないからだろう。

    井上ひさしは、筆が進まないとき妻の顔を変形するまで殴ったという(三女の談)。作者の言葉は、井上が書けないときに「奥さん、あと二、三発殴られてください」と言ったという編集者と、何も変わりはしない。
    自分だけ安全なところから、偉そうに「何でこんな世の中になってしまったのか」と言える傲慢さに腹が立った。

    しかもその4ページ後では、「もの書きも俳優も、文章や舞台がすべてであって、私生活や人間性をそれと混同してはならないと思う。」と述べている。
    作品と私生活は独立別個のものだというのなら、「芸術家の無頼やアウトローには寛容である」世の中である必要なんかないだろう。
    「私生活がひどいからって作品まで貶めるな」と言うのなら、「作品が素晴らしいからって私生活まで称揚するな」と言うことだ。

    要するにこの人の言っていることは矛盾しているのだ。p. 24で言っていることは、「素晴らしい作品を作っているんだから素行が悪くても大目に見てやれ」ということだ。それが、「作品と私生活や人間性を混同する」ことでなくて何だというのだ。


    最後に、美術を扱う本として一番ひどいな、と思うのが、口絵はカラーだが、本編に挿入される絵は白黒、しかもコントラストなどの調整をまったく考えられていない白黒になっていること。このため、
     p. 85 伝レンブラント「黄金の兜の男」
     p. 86 伝ゴヤ「巨人」
    どちらも黒くつぶれてしまって、全然良さが分かりゃしない。

    さらに、言及だけされて載っていない絵も多いし。読んでいて面白くない。

  • 裏側からみたほど、画期的な視点とは思えない、凡庸かつライトな美術啓蒙書である。しかし、ところどころ興味深い記述もある。

    例えば、作者の人格と作品の無相関についてや、ピエタの意味についてなど、なるほどと思わせるものがある。とりわけ、良作だったのは、「語ることができることとできないこと」の章で、作品記述の意義がいかんなく表現されている。そこから3つ抜き書きを。

    ・何が表現されているかに始まり、それがどのような様式で表現されているか、そうした様式がどのような効果を生み出しており、全体の雰囲気はどうなのかといったことまで、正確に言葉に移し替える必要があるのだ。
    ・最近、展覧会場で貸し出している音声ガイドにしても、作者や主題について語っているが、作品そのもについてはほとんど語っていない。
    ・見たものを正確に言葉に直すことに成功している文章は、必ずやその作品の深奥にふれており、作品の本質と力を分析した優れた評論になっているものである。

  • 雑誌『花椿』での連載を集めたもの。そうせいか、本格的な美術史の本というより、美術に関する短めの読み物をまとめたものという感じ。民衆芸術への注目といった点は宮下氏らしいところで、自分の知らないことが多かった。

  • 美術に関するエッセイを1冊の本にしたもの。なので、内容に統一はないが、作者の美術を見る眼を様々な角度から察することができる。

    ヌードについての話はとても興味深かった。江戸時代、西洋人たちは日本人が男女ともに講習の場で裸をさらしているのを見て驚いたという。明治維新が起こると、国を挙げて文明化を推し進めたため徐々に裸=野蛮という構図が広がる。近頃の話でも、思えば私の小さい頃は公衆の場で授乳する人がちらほらいたが、今は皆無だ。

    一方、裸を見る機会が減るのと比例して、現代では(美術とは言えないものが大半だが)ヌード写真のオンパレードとなっている。そして日本では肉体美を追求するのではなく、漫画を代表する男性の考える理想の肉体が追求されている世の中になりつつあると思った。

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著者プロフィール

宮下 規久朗(みやした・きくろう):美術史家、神戸大学大学院人文学研究科教授。1963年名古屋市生まれ。東京大学文学部美術史学科卒、同大学院修了。『カラヴァッジョーー聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞など受賞。他の著書に、『バロック美術の成立』(山川出版社)、『食べる西洋美術史』、『ウォーホルの芸術』、『美術の力』(以上、光文社新書)、『カラヴァッジョへの旅』(角川選書)、『モチーフで読む美術史』『しぐさで読む美術史』(以上、ちくま文庫)、『ヴェネツィア』(岩波新書)、『闇の美術史』、『聖と俗 分断と架橋の美術史』(以上、岩波書店)、『そのとき、西洋では』(小学館)、『一枚の絵で学ぶ美術史 カラヴァッジョ《聖マタイの召命》』(ちくまプリマー新書)、『聖母の美術全史』(ちくま新書)、『バロック美術――西欧文化の爛熟』(中公新書)など多数。

「2024年 『日本の裸体芸術 刺青からヌードへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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