粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書 19)
- PHP研究所 (2010年4月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569777863
感想・レビュー・書評
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局所最適集合による全体最適化は、ロバストシステムの参考になるのでは、と感じた。
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読みやすい文章です。参考になります。
生き物(生存システム)に興味をもつきっかけになる一冊だと思います。
高校生のころに読みたかった。。。 -
粘菌の集合体は、迷路も解くし、カーナビの最短経路に近しい道も見つけ出す。
んー、それぞれは単細胞なのに、集合体では解いてしまう。
なんか、すごい。 -
イグ・ノーベル賞を受賞した粘菌研究者による本。
内容非常にわかりやすく書かれており、粘菌の魅力が伝わってくる。
研究自体は非常にしっかりしたもので、知性とは何かというものを考えさせてくれる。
生物も化学反応の塊にすぎないということが良く意識でき、生物以外の研究者にも身近に感じられる内容であった。
こういう科学書は読んでいて非常に楽しくお勧め -
それ知性でなくて物理現象では?と思っていたが、最終章でやられた。そもそも人の知性だって物理現象の積み重ねでできてんだから、じゃあその境目ってどこよっていう。人類全体を通してみたとき、実は物理現象に沿ってるかもっていうフラクタルも新しい。生物学・物理学・哲学が楽しめる一冊。★4
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粘菌という単細胞生物に、私たちと同じものを感じる。
もともとはここから始まったんだ。
私たちは私たち自身を一つの塊みたいに感じているけど、本当はたくさんの物質から出来た集合体だ。
その一つ一つが生きていて、私たちの毎日を無言で手助けしてくれていることに気づく一冊。
やっぱり、人は1人じゃ生きれないんだ。 -
危険最小化経路を最短性と連結保証性の関係を考慮して粘菌が経路を導きだすことには驚いた。最短性だけでも高度な知能を感じるが、それ以上となるとやはり「知性」とでも言っていいのではないかと思う。粘菌の自律分散性のメカニズムの考察は「生物現象は物理現象(機能)」と論じる著者の考え方を表し、物理的なことが色々述べられ、難しかったですが、説得力のあるものに思えました。
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これはすごい、面白い。
「すごい面白い」でもあるし、「すごい」かつ「面白い」でもある。
イグノーベル賞を一度ならず二度も穫ったのは伊達じゃない。
科学を楽しめる人なら、本書を楽しまずにいられない。
Biologists はもちろん、Computer Scientists であればなおのこと。
本書「粘菌 その驚くべき知性」は、2008年認知科学賞、そして今年2010年交通計画賞を受賞した Ignobel Laureate 本人による、驚くべき生物の驚くべき能力の紹介。
目次
第1章 単細胞の情報処理
第2章 粘菌とはどんな生きもの?
第3章 粘菌が迷路を解く
第4章 危険度最小化経路探索とカーナビへの応用
第5章 餌場所ネットワークの多目的最適化とインフラ設計
第6章 周期変動の予測と想起
第7章 迷い、選択、個性
第8章 intelligenceと知性
まだ前回受賞の迷路を解く粘菌の記憶もさめやらないうちに、今度は交通網の設計。「単細胞知性体」というと、今や古典ともいえる「ブラッド・ミュージック」が思い出されるが、あちらはフィクションでこちらはノンフィクション。そしてあちらは遺伝子改変によって人工的に知性を与えられたヒト白血球だが、こちらは天然の粘菌。
ブラッド・ミュージック
Greg Bear
[原著:Blood Music]
ところがこの粘菌、とらえどころがないのはその姿形にとどまらない。かつては生物の分類の根であった界(kingdom)のどれに所属すべきかがいまだにきちんと定まっていないぐらいなのだ。
P. 42
五界とは、多細胞体制である「動物界」「植物界」「真菌界」(カビやキノコ)、それに単細胞体制である「原生生物界」と「モネラ界」の五つです。モネラ界とは細菌類のことで、原核単細胞です。原核とは、細胞内に核というはっきりした構造物がなく、DNAが細胞中に分散している細胞をいいます。
粘菌は、原生生物界に入れられています。原生生物界はおおむね真核細胞です。真核とは、核を持っているという意味です。
ただ、粘菌は、動物や真菌にも近い性質を有しており、五界説への納まりはよくありません。粘菌の分類を専門にしている研究者(国立科学博物館の荻原博光氏)は、「五界に住処なし」と印象的に表現しています。これは、粘菌のライフサイクルを見るとよくわかります。
これが、そのライフサイクル。
たしかに動物なのか植物なのか、それどころか単細胞生物なのか多細胞生物なのかさえ定かではない。
このとらえどころのなさに、南方熊楠をはじめ、実に多くの人々が魅了されて来たのも無理はない。こういうのもなんだが、粘菌を「メインメカ」にしたアニメがないのが不思議なぐらいだ。もっとも本書でも言及している「風の谷のナウシカ」では、粘菌は腐界そのものであるのだが。
これだけでもすごいのに、まさか、いややはり「知性」まであるとは。
これが本書の主題である。そしてその主題を追うに従って、著者と読者は「知性とはなにか」という命題に向き合わざるをえなくなる。
P. 180
日本語でいう「知性(智性)」と、英語の「intelligence」では、そもそも、その意味するところが食い違っていても不思議ではありません。これは私の勝手な想像ですが、彼らは「intelligence」を、神様が人間だけに与えたもの、と捉えているようです。
一応両国語を話すものとして、著者の想像は完全に正しいと申し上げておく。"Smart Bomb"はあっても"Intelligent Bomb"はない。たまごっちでも充分"smart"だが、それを"intelligent"と呼ぶ英語話者はまずいない。
しかし論文の掲載者は、"Primitive Intelligence"という著者の論文の〆の言葉を残した。査読者の一部からは添削の指示があったにも関わらず。大英断だと思う。
確かに迷路を解くという作業はコンピューターにもできるし、実際我々は日々カーナビにやらせているし、 Computer Science の学生であればダイクストラという名前をいやでも覚えているだろう。シュタイナー木(Steiner tree; ウィキペディア日本語版にないのにちょっと驚き)を見つける方法に至っては、それどころかシャボン玉の膜を使う手法さえある。生物どころか機械ともいえない道具でも同じことができるとあっては、粘菌をIntelligentと呼ぶのははばかられるのも無理はない。
しかし私は、「誰もプログラムしていない」のに、彼ら粘菌が自らの生存のために問題を解くことに、Intelligenceを感ぜずにはいられないのだ。
Conway's Game of Life、日本ではライフゲイムの宇宙という単純な遊びがある。詳しくはリンク先を見ていただくとして、この単純な遊びがチューリング完全であることが、今年実証された。「理論的に可能」であることは「ライフゲイムの宇宙」も指摘していたが、実際に Universal Turing Machine が作られ、そしてあなたのPCの上でもその様子が簡単に再現できるのだ。
同書をお読みの方であれば、実際に作られた UTM on Game of Life が、Conwayや同書の著者の予想よりはるかにコンパクトであることに驚かれるのではないか。そのサイズ、わずか12699×12652セルである。
粘菌の知性がそれより遥かに上であることが、そこからも予感される。
Intelligentと呼ぶにふさわしいほどに。
次に著者が穫るのは、イグ抜きのノーベル賞かも知れない。
今年、それが証明された。
粘菌と著者から、今、目がはなせない。 -
粘菌に餌を与えると、あたかも意思があるかのように合理的な
動きをすることに着目して研究している結果やなぜ?
という疑問にわかりやすく解説している。
また知性に対する日本人と欧米とのとらえ方の違いについての
記述箇所は文化それも、無意識レベルで受ける感覚の違いと
とらえると、欧米の知性に対する感覚が分かって面白いと思った。
この本を読んでいるときに、著者は2010年の自身2度目の
イグノーベル賞を受賞した。 -
[ 内容 ]
「知性とは発達した大脳皮質をもつ生きものだけが持てるものである」。
この常識に日本人研究者が「待った!」をかけた。
脳はおろか、細胞同士をつなぐ神経系もない、単細胞でアメーバ状生物の粘菌が迷路で最短ルートを示し、時間の記憶を持ち、ハムレット的逡巡を見せた後、ある判断をする。
立派に知性を持つといえるのではないか!
この驚きの結果は、いま世界中で注目の的。
知性とはなにか、意識とはなにか、身体とはなんなのか、大きな波紋を投げかけている。
[ 目次 ]
第1章 単細胞の情報処理
第2章 粘菌とはどんな生きもの?
第3章 粘菌が迷路を解く
第4章 危険度最小化経路探索とカーナビへの応用
第5章 餌場所ネットワークの多目的最適化とインフラ設計
第6章 周期変動の予測と想起
第7章 迷い、選択、個性
第8章 intelligenceと知性
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]