- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620108322
作品紹介・あらすじ
主人公の竹脇正一(まさかず)は、昭和26(1951)年生まれの65歳。商社マンとして定年を迎えたが、送別会の帰りに地下鉄の車内で倒れ、集中治療室に運びこまれた。
同期入社で今や社長となった堀田憲雄の嘆き、妻・節子や娘婿の大野武志の心配、幼なじみの大工の棟梁・永山徹の思いをよそに、竹脇の意識は戻らない。彼らを見守る看護師・児島直子は、竹脇と通勤電車で20年来の顔なじみでもあった。
一方で、竹脇本人はベッドに横たわる自分の体を横目に、奇妙な体験をする。マダム・ネージュと名乗る老女と食事に行き、静と呼ぶことにした女性と夏の入り江で語らう。集中治療室で隣のベッドにいる患者・榊原勝男とは銭湯に行き、屋台で酒を飲む。
最初は彼女たちのことを妻の知り合いだと考えていた竹脇だが、やがて、死に至るまでには肉体から解放された不思議な時間を経験するのではないかと考え始めた。そんな時間を彷徨いながら、竹脇は自らの過去と思わぬかたちで再会する――。
感想・レビュー・書評
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決して奇を衒っている訳でなく、素朴で誠実な、美しい文章でした。
ある1人の定年直後の男性を取り巻く人達(本人も含む)の多視点による展開。
1人目の堀田の視点からの始まりも引き込まれました。
ファンタジーに分類されると思うのですが、登場人物はそれぞれが訳ありであったり、不思議であったりするのですが全てに非常に体温を感じる、現実味があり、終始じんわりと暖かな読み心地でした。
畳み掛けるような最終章は胸がどんどん熱くなるのを抑えられませんでした。
なんの先入観もなく読み始めたのですが、全ての人が素敵で、設定としては突飛だったのかなとあとから思うところもあったのに、あまりにも自然に心に響き、染み入り、これまで味わった事の無い満たされた、幸せな、前をむこうと思える読後感でした。
カバーのイラストも読後に見るとさらに素敵に感じたし、出てくる全ての名も無き人たち、風景、時代、地下鉄、それぞれがまるで目の前に存在するかのように身近に感じられました。
峰子、児島さん、マダムネージュ、入江静さん、
文月、節子、かっちゃん、トオル。茜、タケシ -
心を大きく揺さぶられる一作。
生死の狭間を彷徨う男の一生を旅する。
何が幸せなのか、一人の一生に詰め込まれた様々な出逢いと出来事。
これは回想なのか、彼の作り上げたストーリーなのか。
最後の最後に怒涛の事実の連続、自然と涙がこぼれてきてしまう。
普通に家庭を持て、日々を過ごせる事の幸せを噛み締める。 -
ラストでなぜか涙が出た。
荒唐無稽なファンタジーなのに。
やっぱり浅田次郎先生。 -
綺麗な文章だなぁと思った。。
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今までの「生」に関する価値観が少し変わったように思います。
母は、ともに幸せになるたった1つの方法をとった、それが最善策だったんだと、ボロボロ涙がでてきました。 -
浅田さん、このテーマで書くのは何回目になるのだろう。お馴染みのキーワードがたくさん散りばめられ、今までどこかで読んだことがあるような雰囲気の物語。それでもやっぱり最後はまんまと術中にはまり、フィナーレに向けての怒涛の攻撃に胸が熱くなりました。良い台詞も心に沁み入りましたが、涙を流すまでには至らず。同じテーマでも作品毎にそれぞれ味わいが微妙に違う、変奏曲のようなものなのでしょうか。まさに職人芸の世界だと思いますが、マンネリと取られないように頑張って欲しい。
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彼岸の入り口では、会いたかったのに会えない人たちに会えるのかなぁ。それもまた楽しみだ。
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ラスト、ページをめくっては、とにかく泣いた。