意味と無意味

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622019404

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  • メルロ=ポンティ初期の論文集。セザンヌへの興味、ゲシュタルト心理学への接近は相変わらずだが、この時期はサルトルやボーヴォワールと共に雑誌をつくり、実存主義陣営の一角としてはりきっていた時期のようだ。サルトルを擁護する文章も幾つか載っている。
    「映画と新しい心理学」ではゲシュタルト心理学を援用しつつ、映画に関しては「映画は映像の総和ではなく、時間的形態だ」(P79)といった刺激的な知見があらわれている。
    第3部は「政治」を巡るエッセイが集められており、こういったものは『シーニュ』の後半にも多数あったが、メルロ=ポンティの政治論にはあまり興味がない。というか、当時のフランス、ヨーロッパの情勢に詳しくないので、あまりついて行けない。
    彼はマルクス主義にしょっちゅう言及しているが、批判的に距離を取っている部分もあって、「マルクス主義者」というレッテルを貼ることはできない。メルロ=ポンティにはいつも、こうした「曖昧さ」があって、この人の思想をわかりにくくしていると思う。
    興味深かったのは「戦争は起こった」で、1945年、終戦直後に発表された文章であるが、ドイツに占領されたパリでの状況をなまなましく語っており、そこに出くわした一人の知識人としての戸惑いを正直に表明している。
    このへんの(現在につながる)20世紀ヨーロッパの歴史というものも、ちゃんと把握しておきたいなと感じた。

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著者プロフィール

1908年生まれ。エコール・ノルマル卒業後、多くのリセーで教えるとともに、エコール・ノルマルでも教壇に立つ。戦後リヨン大学、ソルボンヌ教授を経て、1952年コレージュ・ド・フランス教授となる。1945年サルトルとともに雑誌『現代』を主宰し、実存主義の運動を理論的に指導したが、1952年サルトルと決裂し同誌を去る。1961年不慮の死。著書に『行動の構造』(42)、『知覚の現象学』*(45)、『ヒューマニズムとテロル』(47)、『意味と無意味』(48)、『哲学への讃辞』(53)、『弁証法の冒険』(55)、『シーニュ』(60)、『眼と精神』(63-4)、『見えるものと見えざるもの』*(64)などがあり、初期論文集『知覚の本性』*の編訳書、遺稿を中心に編まれた『フッサール「幾何学の起源」講義』*などがある。〔*の邦訳書は法政大学出版局より刊行〕

「2015年 『知覚の現象学〈改装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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