〈こっくりさん〉と〈千里眼〉・増補版 日本近代と心霊学 (青弓社ルネサンス 7)

著者 :
  • 青弓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787292575

作品紹介・あらすじ

1970年代のオカルトブームによって広く知られるようになった心霊現象の数々。現在では多様なメディアがこれらのアイテムを物語に取り込み、消費している。では、これらを束ねる「心霊」という解釈格子は、はたしてどこからやってきたのだろうか。

明治半ば以降、一気に広まった不思議な遊び「こっくりさん」、人々を熱狂させた催眠術、透視をめぐる論争を巻き起こした千里眼事件を掘り起こし、それらに通底していた心霊学と科学の相克を描き出す。

「信仰」「迷信」「心」と「科学」のあわいに発生して、多くの人々の耳目を引いた明治期のオカルト現象から、日本の近代化の一側面を照らす怪異研究の古典を復刊。千里眼事件の再検討や大正期の催眠術の受容、「こっくりさん」の戦後を扱った論考を増補し、東雅夫氏による解説も所収する。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:147A/I17k//K

  • 武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000247830

  • 明治半ば頃から巷に流行したこっくりさんに始まり、催眠術、そこから透視能力「千里眼」が現れ、各界の学者達が科学的に調査分析を行う筈の流れが、徐々に科学を離れて心霊術・宗教の方面へと進んでいく様が分かりやすくまとまっていて良かった。

    明治~大正頃の文学作品を読むと普通にこれらの思想ありきの前提で書かれている作品が多々あるので(例えば芥川のドッペルゲンガーなど有名ですが)、そういった時代の背景みたいなのを知りたかったのでとても参考になりました。

  • なぜか知らないが興味を持ってしまうことの1つがオカルトだ。



    著者によると、「霊」を呼び起こしているのは、「近代」という制度の弊害である。西洋思想が明治時代に入るまでは、「霊」は日本民族の土台としたのが柳田国男だった。




    現代の「科学」に重きをおく世界と、「霊」の存在を疑わなかった時代とでは、越えられない壁がある。




    いつから「こっくりさん」が始まったのか気になるが、諸説ある。その中でもよく知られているのが明治の妖怪博士と呼ばれた井上円了の説明だった。




    1884年頃、伊豆下田沖で難破したアメリカの帆船乗組員が、下田にいる間に人々に伝えた。下田にいた各地の漁師たちが、この遊びを広めた。




    こっくりさんの弊害がマスコミで騒がれるようになったのは、1970年代以降になる。空前のオカルトだブームで、五島勉「ノストラダムスの予言」や小松左京「日本沈没」がベズトセラーになった。そんな中でこっくりさんも小・中学生を中心に大ブームになった。




    1980年代になると少女たちがこっくりさんに関心を持つ。その担い手となったのが、美堀真利「コックリさんの不思議」や、「ハロウィーン」などのオカルト雑誌の創刊ラッシュだ。




    著者いわく、おどろおどろしい恐怖のイメージは脱色される。誰にでもできる不思議な体験が少女たちのツボにはまったようだ。





    著者の一柳廣考(いちやなぎひろたか)は、日本近現代文学・文化史が専門だ。大学院生だったときに、ある先生が「最初の著作には気をつけなさい。一生縛られるから」と話していたことを覚えていたと述べている。




    まさにその通りになっていた。




    歴史の教科書には登場しない世界なので貴重な資料だ。

  • 『魔法: その歴史と正体』を読んだ流れで読んでみたかった。満足。
    青弓社ルネサンスはこれが初めてなのだけど、「ルネサンス」にふさわしい一冊な気がする。他のタイトルも気になる。
    154頁「眉かくしの雲」に脱力。それ雲じゃなくて霊……。

    文明開化期、西洋から科学を取り入れることによって急速に進んだ近代化。それを契機に生じる「精神」への傾倒、現代のオカルティズムにも繋がる「物質」と「精神」の捻じれを照らし出す試み。
    日本の近代化の流れ、科学の直輸入元の西洋の歩みについて、焦点を絞りつつ詳しく述べられていて読み応えがある。こっくりさんと千里眼はそれぞれ大きく扱われているけど、そのものというより、そこに照射される「精神」指向を探る内容なので、端からオカルト傾倒(肯定ないし否定をする立場)の意識で読むと当てが外れるかもしれない。特に「千里眼」のほうは「千里眼事件」という触れ込みがあるから、ついミステリのように答えを求めてしまいたくもなるのだけど、この本としてそれは別の話。
    著者の本領は文学、文化史とのことで、著名な作家やその著作を取り上げているところがとても嬉しい。作品発表の背景まで踏まえた真面目な読み方はあまりしたことがなかっただけに、この心霊学興隆の観点はぜひ覚えておきたい。

  • ーー1970年代のオカルトブームによって広く知られるようになった心霊現象の数々。現在では多様なメディアがこれらのアイテムを物語に取り込み、消費している。では、これらを束ねる「心霊」という解釈格子は、はたしてどこからやってきたのだろうか。
    明治半ば以降、一気に広まった不思議な遊び「こっくりさん」、人々を熱狂させた催眠術、透視をめぐる論争を巻き起こした千里眼事件を掘り起こし、それらに通底していた心霊学と科学の相克を描き出す。
    「信仰」「迷信」「心」と「科学」のあわいに発生して、多くの人々の耳目を引いた明治期のオカルト現象から、日本の近代化の一側面を照らす怪異研究の古典を復刊。千里眼事件の再検討や大正期の催眠術の受容、「こっくりさん」の戦後を扱った論考を増補し、東雅夫氏による解説も所収する。ーー

    こっくりさんが米国生まれで(テーブル・ターニング)、明治時代には既に日本でも流行っていたことに驚いた。昭和生まれの私の時代も一時期こっくりさんが流行し、我が中学校の教室でこっくりさんをやっていた生徒が2階の窓から突然飛び降りるという事件が起こり、すぐに禁止された。その当時、つのだじろうが「恐怖新聞」「うしろの百太郎」を連載し、ユリゲラーのスプーン曲げや映画「エクソシスト」などがマスコミを騒がせていた。
    また、本書では1900年代初め、御船千鶴子の透視(千里眼)、長尾郁子の念写など東大教授を巻き込んでの「超能力」ブームの経緯も解説しており、この手の話に興味のある人にはおすすめです。
    とはいえ、1994年に書かれた第1部と2020年の第2部の多くは重複しており、わざわざ2つ掲載する必要性はマニアでなければ不要の産物。
    また、こうした怪奇現象への著者のスタンスがイマイチわからない(商売道具として肯定派なのか現実路線で否定派なのか曖昧)のも困ります。

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著者プロフィール

一柳廣孝(いちやなぎ ひろたか)
1959年生まれ。横浜国立大学教育学部教授。日本近現代文学・文化史。『〈こっくりさん〉と〈千里眼〉』(講談社)、『催眠術の日本近代』(青弓社)、『無意識という物語』(名古屋大学出版会)、『怪異の表象空間』(国書刊行会)。

「2022年 『「日本心霊学会」研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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