FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822289607

作品紹介・あらすじ

2019年7月、著者来日! 各媒体で紹介され、更に注目を集めています。

ファクトフルネスとは データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。
世界を正しく見る、誰もが身につけておくべき習慣でありスキル、「ファクトフルネス」を解説しよう。
世界で100万部の大ベストセラー! 40カ国で発行予定の話題作、待望の日本上陸

ビル・ゲイツ、バラク・オバマ元アメリカ大統領も大絶賛!
「名作中の名作。世界を正しく見るために欠かせない一冊だ」 ビル・ゲイツ
「思い込みではなく、事実をもとに行動すれば、人類はもっと前に進める。そんな希望を抱かせてくれる本」 バラク・オバマ元アメリカ大統領

特にビル・ゲイツは、2018年にアメリカの大学を卒業した学生のうち、希望者全員にこの本をプレゼントしたほど。

感想・レビュー・書評

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  • まず著者が強調したいことの一つは、世界は皆が思っているよりもよいものであり、さらにどんどんよくなっている、ということである。そして、その事実をデータによって確認していく。世界がよくなっているということを強調することは正しい活動である。また、それを数値にして認識することは、何かの判断をそこから得るためにとても大事な姿勢である。

    所得が増え、子どもの死亡率が下がることで、寿命が伸び、出生率が下がり、社会の年齢構成が大きく変わるのは全世界でほぼ共通に進みつつあることだ。その事実については、ある意味では共通理解でもあり、ベストセラーになったユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』でも、現代は、飢饉、疾病、戦争を克服して、かつてないほど寿命が伸びた、という事実が強調されている。そういえば、自分の母方の兄弟は7人いるが、今それだけの兄弟がいる家庭を探すことは大変難しい。日本でもこの1~2世代の間において大きな変化があったのだ。

    この本で著者の言うことはおおむね正しいと言える。ここで大事にするべきことは、著者が使っている質問や数字の意味を、読者であるわれわれ自身が懐疑的に見る姿勢を持つことである。例えば、おそらくは著者が何度も使ったであろう質問1「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう? A.20%、B.40%、C.60%」(答えはC)である。
    この問題の日本人の正答率は7%だということだが、選択肢が、A.40%、B.60%、C.80%だとしたら結果は大きく違うものになるだろう。さらに言うと典型的なナッジングの手法でもあるが、選択肢を A.20%、B.40%、C.60%、D.80%、としても正答率が上がることが期待できる。これは、揚げ足取りだろうか。著者の主張に従うのであれば、こういった印象操作があることについても逆に疑って、より真実に近いものを知るように注意するべきなのである。

    さらに加えると、質問2「世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう? A.低所得国、B.中所得国、C.高所得国」(答えはB)という問題に至っては、高所得国/中所得国/低所得国の定義を明確にしないと質問として成立しないし、正解は中国とインドがどのレベルに当てはまるのかによって変わってくる。著者もこの後の議論においては高所得/中所得/低所得という分類ではなく、所得層を独自に複数のレベルに分けている。レベル1は1日1ドルの所得、レベル2は1日4ドル、レベル3は1日16ドル、レベル4は1日32ドル。このレベルの差で大きく生活の質が変わってくるということを具体的な例を引いて説明している。著者は、ここでレベル2とレベル3を中所得国として30億人の人がこの層にいるという。しかし、レベル2は低所得と言っても間違いではないだろうし、実際にレベル2とレベル3は差があるからこそレベルを分けている。これもまた揚げ足取りなのだろうか。

    しつこいが、質問4「世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?A.50歳、B.60歳、C.70歳」(答えはC)。これも選択肢をA.60歳、B.70歳、C.80歳にすると正解率が劇的に上がるだろうし、選択肢を増やしてA.50歳、B.60歳、C.70歳、D.80歳、としても、単に知識の問題だとしたらおかしなことだが、正答率はおそらく上がる。

    単純な「世界はどのように変化していると思いますか?」という質問についても、その質問をどういう文脈に置くのか、どういう質問と並べて訊くのかによって数字は大きく変わってくるだろう。

    ただ、著者も例に取る福島原発事故のその後の被爆被害についての事実分析(福島の原発事故による被曝でなくなった人は、ひとりも見つかっていない - 人々の命が失われた原因は被爆ではなく、被爆を恐れての避難だった)を考えると、悪いニュースはすぐに広がるが、そうでないニュースはそれが事実であろうがなかろうが拡がらない、ということについては著者が指摘する通り十分に意識をしておく必要がある。特に、福島原発事故の前にはチェルノブイリ原発事故という参照にすべき事象もあったにも関わらずだ。もちろん、チェルノブイリの事故こそ、事実が何であったのかを正しく知ることの重要性と難しさを教えてくれるものである。また、原発事故の事例に続いて書かれる環境保護を主としたDDTの禁止についても、トレードオフの関係について十分に考えるために事実を共有することの重要性を認識することができる例である。ワクチンの事故、テロの危険、飛行機事故、そういった滅多に起きないことのリスクを過大視しすぎることのデメリットについても世の中に広く共有されるに越したことはない。
    また著者の過去の経験として挙げられたものだが、モザンビーグの病院では、目の前の患者を救うことに全精力を傾けるよりも、地域全体の公衆衛生プログラムを上げることに力を使ったことが正しく効果的だったというのは素晴らしい分析とそれに基づく行動として賞賛されるべきだと思う。

    著者の言わんとすることは原則として正しく、著者が伝えようとすることもおそらくはその意図に沿って理解されると世の中はよくなるようなものだろう。そして、準備された質問がその認識を説得的にするために工夫されたものであることも間違いない。だからこそ、いったんは事実の解釈について、著者が書くことであっても懐疑的に見る姿勢を持つことが逆説的に著者の意図に沿うものなのである。

    この本を読んで、著者のいうファクトは素晴らしい、皆が気が付いていなかったところだ(自分はわかっていたけど、という態度を取る人も多いが)、目から鱗が落ちた、と単純に言う人は、おそらくはデータやメディアに騙される人だろう。本書の内容は多くのデータを元にしてはいて、多くのものよりも優れているのかもしれないが、この本に書かれていることは他のすべてのことと同じく事実に対するひとつの解釈であることは間違いない。「ファクトフルネス」の重要性を信じるのであれば、著者のいうことを事実として鵜呑みにするのではなく、より事実に近いものに当たって、そこからあなたの解釈を導き出す過程を踏むという姿勢やプロセスが大事だということだ。

    ニーチェの、「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」という言葉を侮ってはいけない。

    「事実に基づかない「真実」を鵜呑みにしないためには、情報だけでなく、自分自身を批判的に見る力が欠かせません。「この情報源を信頼していいのか?」と問う前に、「自分は自分を信頼していいのか?」と問うべきなのです。...「この情報は真実でない」と決めつける前に、「自分は事実を見る準備ができていない」と考えたいものです」

    と、訳者あとがきにある通り、虚心坦懐になることがとても重要だ。常に自分自身に帰ってくる言葉だ。こうやって今書いた私自身の書評の言葉にも。

    よい本だと思うが、データの重要性について考えるならば、この本自体を鵜呑みにしないことが重要だろう。この本の内容が間違っているということではない。この本が、内容自体ではなく姿勢を重視するものであるのだから、それに従うとするならば著者の言うことに対しても批判的に読み込む姿勢を身に付けることが著者の意図に適うことでもあるのだから。

  • これは一早く読むべき本のひとつである。

    ビル・ゲイツが卒業生全員に本書を配布したのは,以上の言葉を体現してると言える。

    我々ヒトは,10の本能的な思い込みを有していると筆者は述べている。
    結果として,現代に生きるヒトの殆どは,如何に高い教養を有していても,世界的な影響力や権力を有していても,世界の事についてはチンパンジーより答えることが出来なかった。

    本書を読む前の段階で,私自身も本書の内容に関して心当たりのある場面が幾つかあった。

    それは,私の友人の多くが,「飛行機に乗る事が怖い」と言ってくることである。
    その理由は,飛行機が墜落したら高確率で生存できないということである。

    はたして,この理由を以て,飛行機を怖がる必要があるのであろうか。
    電車にしても,自動車にしても,事故の起きる確率は一定数存在する。
    それは自分自身の不注意から,外的要因の回避が難しいところまで,幅広い要因がある。

    以上の考え方は飛行機に関しても,当然当てはまる。むしろ,飛行機に関しては自身の不注意等の内的要因から事故が生まれる事はほぼ無いし,外的要因と言っても,車の様に対向車がビュンビュン通っているわけでもない。空路は至って快適だ。
    本書によると,2016年には約4000万の飛行機が一人の死者も出さずに目的地に到着し,死亡事故が起きたのは10機であった。事故確率はおよそ0.000025%である。
    これは,雷が落ちて死ぬ確率と同じくらいである。
    そのような低確率にストレスを起こす必要は全くないという事だ。

    メディアはドラマチックな事象のみ取り扱う習性がある事から,その数字ひとつで考え込んでしまう。
    その裏に隠れている,それを包含した数字をしっかりと理解し,割合として比較するべきであると本書は述べている。

    そして,最も大切な訴えは,
    ”世界は以前より良くなっている”
    ということである。

    しかし,それを鵜呑みにするのではなく,「良くなっている」事実と,「悪い」事実を両方理解しなければならない。

    筆者が造った,「可能主義者」の目線を良しくするべきである。

    可能主義者・・・根拠のない希望を持たず,根拠のない不安を持たず,いかなる時も「ドラマチックすぎる世界の見方」を持たない人の事。


    また本書を読んで刺激を受けたことは,もはや「途上国」「先進国」の括りでは世界を表すことが出来ない,不適切であるという事である。
    もはや途上国と先進国の間のギャップは無くなりつつある,という事実を知らなければならない。

    世界はこんなにも前進しているのに,世界に関して我々は何もアップデートできていない。

    これからビジネスマンとして生きていく上で,世界を良く知る事は急務である事,そして世界に関してもっと関心を持たなければならないという事を教えてくれた本書に感謝したい。

  • この本を読んで学べる事は、事実に基づいて話そう語ろう考えようと言う事だけではなく、むしろ自分の思想や主張に対して批判的になることだと思う。
    1つ疑問に思った事は、この本の中ではたくさんの未来予想があるのだけれど、これらのいくつかはきっと外れることになる。でもそれはファクトフルネスと言えるのだろうか。データも結局は確からしいと言う事しか言えないし、そのデータに基づく推論にも誤謬が入る。僕たちに出来る事は、なるべく客観性の高いデータを根拠とし、論理矛盾のない推論を積み重ねること。そして何よりも自分が抱いている思想や主張を批判的に見続けることである

  • 仕事柄、思考の際は「データを基に」「事実ベースで」ということが叩き込まれているが、データをどのように解釈するかは難しいと日々感じている。
    本書は私たちが事実を解釈する際につい掛けがちなフィルターを教えてくれる。公衆衛生学の観点から世界の問題を例に挙げられているが、国内でも同様の事例は見受けられると思った(食品添加物、放射線、首相批判etc…)。

    データの必要性や、それを自らの思い込みによって捻じ曲げずに解釈するための考え方は本書から知ることができる。しかし私が最も大切だと思ったのは、一度知った事実も変わりゆくものであり、アップデートする必要があると認識することだった。

    私はこれまでそれなりの教育から知識を身につけてきたと思っていたが、イントロダクションのクイズは15問中1問しか正解しなかった。
    振り返れば、世界の貧困や発展途上国(この言い方が適切かわからないが)について私が持つイメージは、小中学生の頃ちょうど流行っていた「世界がもし100人の村だったら」の本やテレビ番組から得たものが大きい。
    本・テレビとも初回が2001年であるため、これらの情報はすでに約20年前のものとなっている。その間に世界は着実に進歩していることに私は気づけなかった。自分がまだ30歳にも関わらず古い考えで物を見てしまっていたことに衝撃を受けた。

    さらにこれらの情報は、既にフィルターをかけられたものであることを忘れてはならない。
    上記のテレビ番組では、貧困にあえぐ子供たちの様子がドラマチックに描かれていた。このイメージが幼い私の心に深く残ったことが、世界を悪く捉える一因になってしまったと思う。

    これを機に「世界がもし100人の村だったら」を読み返したいと思い探すと、2016年のデータで作り直したものを見つけることができた。
    https://grapee.jp/180655
    ここで示されているデータそのものはファクトといえるだろう(出典が正しければ)。しかし示し方にフィルターがかかっている。「〇〇できる人は何人、できない人は何人」という二項対立の書き方が多く、これは本書で言う「分断本能」を引き起こし得る。また、この文章を読む人は「できる人」であると想定されるため、「できない人がたくさんいる」という衝撃から事実を過大視させるだろう。
    この記事の最後には2000年版との比較があり、その点は現状を理解する点で役に立つと思った。

    世界はますます複雑化し、情報社会が加速しているが、以下のことを心にとめて生きていきたい
    ・事実は変わるものと認識し柔軟に考える
    ・既知の情報のアップデートを行う
    ・ファクトにかけられたフィルターに気づき適切に捉える

  • ここ近年、世界は平和になってきたのではと感じていた。テロや小規模な戦争はあるが大戦は起こっていないからそう思っていたのだけれど、この本を読んでやはりそうかと確信した。マスコミュニケーションでは悪いニュースばかりが流れているので、どんどん世界は悪くなっているように思わされているが、実際は全体的に裕福になってきているし、人口増加も徐々に収まりつつある。この本に書かれていることは、昔学んだことは時が経つにつれ古い情報になっているので、常に学んでいかなければならないということ。文中に出てくるマカンガの女性のように、偏見や思い込みなく人の話を聞き、きちんと状況を把握することが必要。

  • 話題になっている本ということは知っていたけれど、
    「あんまり自分の興味の範疇ではないかな…」と少し敬遠していた本。
    そんな中、(良い意味で)強制的に読まないといけないことになり、
    手に取って読んでみました。

    最初はそれほど期待していなかったのですが、
    いい感じでその期待は裏切られました。

    まず、ボリュームの割にとても読みやすく、分かりやすい。
    原著の良さというのもあるのでしょうが、
    訳者も読みやすく分かりやすい日本語を意識されていることが伺えます。

    そして、インパクト大のチンパンジーテスト。
    (自分も含めて)多くの人がチンパンジー以下の成績なはずです。
    (正確に言うと、「チンパンジー以下」という表現は正しくないのですが、
    著者や訳者もそれを分かった上であえて使用しているようです。)

    さらに、忘れてはいけないのが、
    私たちの世界に対する見方がどれほど間違っているのかを
    知らしめてくれる重要な書籍となっている点。
    想像以上に、世の中は(多くの人の努力により)改善しているようです。
    世の中を正しく認識することが、ビジネスにおいても重要ということについても同意。
    言われてみれば、確かに小中高で習った社会の授業で、
    自分の世の中に対する理解は止まっていたような気がします。
    (しかも、小中高で習ったことの多くは、唯一絶対解がある事象だっただけに、
    そこで習ったことを疑うことはほとんどなかったような気が…。
    しかし、当たり前ですが、世界は常に変化している。。)

    最後に、人間というものは、どういったことに対して、
    物事を正しくとらえることができないのかについて、各章でまとめてくれています。
    この点については、非常にわかりやすいものの、
    他の書籍を見た方がより学びがあるような気がするので、
    オマケ的な要素ととらえた方が良いかもしれません。
    (例えば、「ファスト&スロー」なんかがとてもお勧めです。)

    本の大きさとページ数に圧倒されますが、
    読んでみたら世界の見え方が変わる(かもしれない)本。
    他のFACT(世の中に関する事実)も思わず調べてみたくなると思います。

  • ゴールデンウィークに外出の予定を上手く作れなかったので、教養を深める週間にしようではないかと考え購入しました。人が常識だと思い込んでいるもののギャップやその原因を知らしめてくれる本です。この本自体から知識を入れ直すというスタンスよりも、凝り固まった頭のマッサージを受けるというスタンスで読むのが相応しいような気がします。

    イントロダクションでは世界の統計に関する三択クイズがいくつか出題されます。何の背景知識も無いチンパンジーでも33%程度の確率で答えられる計算ですが、教育を受けてきているはずの人は、それも学歴の高い人やノーベル賞受賞者を含めて、どの質問もチンパンジーを遥かに下回る確率でしか正解出来ません。唯一上回るのは地球温暖化に関する質問だけでした。女性教育の状況を問う質問や貧困を巡る質問に対しては、ほとんどの人が統計に基づく事実と比べて悲観的な回答をしています。教育レベルに問わず、文字通り「あらゆる人」がそのような状況に陥っていることを明るみにしているだけでも、この本には大きな価値があるように思われます。
    そこから先、本書は人が事実を歪めてしまう原因となりうる「本能」について解説してくれます。そんな怖いものが10個もあるのですが、それぞれ話の展開が軽妙で納得しながらサクサク読めてしまいます。

    そもそも、人の目が偏見に溢れていることを指摘するのはOKだとして、「事実を正しく見る」のための手引書なんて更に胡散臭い、と疑ってかかるのもある意味で健全な見方ではないでしょうか。私は正直かなり恐る恐る読み始めていました。ただ、作者のとても丁寧で慎重で様々なところに配慮の行き届いた語りから、信頼に値するものであることが理解出来ました。
    たとえば、作者は「数字が大好き」で、統計的な「事実」を根拠に世間の歪んだ常識を是正しようとします。ただ、そこで是正されるものや「正しさ」自体は狭義だと考えられます。なぜならば、彼の好きな統計にも社会の全ての事実を語ることは難しいはずだからです。どのような調査にもその正しさに疑いの余地があるからです。でも、彼は統計を過信しているわけではなくて、シンプルに、同じ調査方法で実施されているはずの統計調査結果同士を比べて、その範囲の誤解を解いているだけです。その限りにおいて、彼の指摘自体には誤りは無くて、誤解の解消までが彼の本書での仕事であることを分かっておくべきでしょう。提示される統計や解説に違和感をおぼえるのも普通かもしれないけれど、彼の議論の中心からは外れるような気がします。「世界はどんどん悪くなっていると思う」と回答する人が世界的に多いそうですが、その理由と思わしき「貧困率」や「戦争による死者」「災害による死者」などに関するデータをみてみると、どれも昔と比べたらマシになっているのが「事実」です。では「世界はどんどん良くなっていると思う」と考え直しなさい、と主張されているわけではなくて、余計な悲観に労力を使うのではなく、より良くするために労力を使う方が良い、と促されているように感じました。
    もう一つ、作者の豊かな人生経験に裏付けされた主張であること、しかも彼の人生における大失敗を曝け出していることが本書の強みだと思います。彼自身も当然ながら神様などではなく、むしろいくらでも誤った判断を犯してきて、その反省から辿り着いた答えが本書です。勇気ある失敗の告白の甲斐もあって、血の通った「正しさ」という感じがします。

    最後に、私自身がハッとさせられた「本能」。ネガティブ本能、恐怖本能、過大視本能。世の中の問題に対して鈍感になるのが怖いあまり、「過剰」な問題意識と、隣り合わせのはずの別の問題への無意識に繋がってしまっていることがあることに気付きました。物事を相対的に測ることが必要なときとそうでないときはあるかもしれません。ただ、少なくとも人にはかなり怖い「本能」があって、盲点が生まれてしまっているのは確かなようです。余裕をもって「正しく」物事を見定めるためには、とにかく自分の知識を常にアップデートして「常識」としなければいけません。合点。

    追記:
    本書の完成を前に作者のハンス・ロスリングは亡くなりました。本書を書くことを決めてから末期がんが見つかったそうです。その経緯があとがきに記されています。病と闘いながら書かれたものとは思えない優しく穏やかな文致で(お子様方の後のお仕事や翻訳による色付けもあってのことかもしれませんが)、失敗談も今になって思えば人生最後の懺悔のようで、心に重いものが乗ったままです。ドラマチックなものを疑え、というのも作者の主張でしたが、TEDトークの名手、という時点で大体人の心を鮮やかに動かす天才なわけです。その上で命を燃やして本を作るなんて、十分すぎるほどドラマチックです。しかしながら、ドラマチックでも正しい場合はある、という、これもまた教訓でしょうか。

  • 「世界は良くなっている」。本の主題とはズレてしまうがその事実に対して励まされる思いを持った。悲観的に考えがちな人間の特性をよく理解し、現実を正しく認識することは目的を実現するためにはとても重要である。
    この本が書き上げられた背景、訳者の巧みな表現力によって単なるいわゆる自己啓発本とは異なり、文章・書籍としてレベルの高いものを感じた。また読み返したい本。

  • 『FACTFULNESS』一気読み。早くも今年のベスト本かもしれない。曇りなくありのままに世界を見つめる技法が具体的にまとまってる。著者が人生の使命を魂とともに一冊にしたのが伝わる。ある意味で『ホモ・デウス』の副読本としても。だから読書はやめられない。

  • 世界を正しく見るために必読の書。
    既に世界的なベストセラーですが、未読の方には強くお勧めしたいです。
    ただし、次の質問に正当できた方は読まなくてもいいでしょう。
    □□□
    質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう。
    A 20%
    B 40%
    C 60%
    質問2 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
    A 低所得国
    B 中所得国
    C 高所得国
    質問3
    世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
    A 約2倍になった
    B あまり変わっていない
    C 半分になった
    質問4 世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?
    A 50歳
    B 60歳
    C 70歳
    質問5 15歳未満の子供は、現在世界に約20億人います。国連の予測によると、2100年に子供の数は約何人になるでしょう?
    A 40億人
    B 30億人
    C 20億人
    質問6 国連の予測によると、2100年にはいまより人口が40億人増えるとされています。人口が増える最も大きな理由は何でしょう?
    A 子供(15歳未満)が増えるから
    B 大人(15歳から74歳)が増えるから
    C 後期高齢者(75歳以上)が増えるから
    質問7 自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう?
    A 2倍以上になった
    B あまり変わっていない
    C 半分以下になった
    質問8 現在、世界には約70億人の人がいます。下の地図では、人の印がそれぞれ10億人を表しています。世界の人口分布を正しく表しているのは3つのうちどれでしょう?(地図は載せられないので言葉で割合を説明しますね)
    A 南北アメリカ大陸1:ヨーロッパ州1:アフリカ州1:アジア州4
    B 南北アメリカ大陸1:ヨーロッパ州1:アフリカ州2:アジア州3
    C 南北アメリカ大陸2:ヨーロッパ州1:アフリカ州1:アジア州3
    質問9 世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
    A 20%
    B 50%
    C 80%
    質問10 世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう?
    A 9年
    B 6年
    C 3年
    質問11 1996年には、トラとジャイアントパンダとクロサイはいずれも絶滅危惧種として指定されていました。この3つのうち、当時よりも絶滅の危機に瀕している動物はいくつでしょう?
    A 2つ
    B ひとつ
    C ゼロ
    質問12 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?
    A 20%
    B 50%
    C 80%
    質問13 グローバルな気候の専門家は、これからの100年で、地球の平均気温はどうなると考えているでしょう?
    A 暖かくなる
    B 変わらない
    C 寒くなる
    □□□
    一番下に、改めて問題と解答を載せています。
    告白すると、私は3問しか正解できませんでした。
    でも悲観することはありません。
    2017年に14か国・1万2000人に行ったオンライン調査では、地球温暖化の質問を除けば、平均正解数は12問中たったの2問。
    全問正解者はおらず、全問不正解だった人は、なんと15%もいたそうです。
    このクイズは、医学生、教師、大学教授、著名な科学者、投資銀行のエリート、多国籍企業の役員、ジャーナリスト、活動家、そして政界のトップまで、高学歴で国際問題に興味がある人たちにも実施しています。
    しかし、このグループでさえ、大多数がほとんどの質問に間違っていたといいます。
    一般人の平均スコアを下回り、とんでもなく低い点数を取ったノーベル賞受賞者や医療研究者もいたそう。
    安心しました。
    みんな世界のことを実はよく知らないのです。
    著者いわく、「チンパンジーの正解率は33%近くになる」そう。
    意地悪ですね笑。
    では、なぜ、私たちはかくも世界のことを知らないのでしょう?
    私たちには、世界を正しく見るのを邪魔する「10の本能」があるからだと著者は言います。
    ①分断本能(「世界は分断されている」という思い込み)
    ②ネガティブ本能(「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み)
    ③直線本能(「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み)
    ④恐怖本能(危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み)
    ⑤過大視本能(「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み)
    ⑥パターン化本能(「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み)
    ⑦宿命本能(「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み)
    ⑧単純化本能(「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み)
    ⑨犯人捜し本能(「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み)
    ⑩焦り本能(「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み)
    自分にも覚えのある本能ばかり。
    本書を読むまで、直線本能の虜でしたし、ネガティブ本能に支配されてもいました。
    社会を見渡しても、たとえば何かひとたび問題が起きると、犯人捜し本能がすぐさま発動するのを厭というほど見てきました。
    新聞の社説は、つまるところ「焦り本能」の発露でありましょう(社論に合わない論件については、逆に「焦るな」と主張します)。
    でも、これらの本能が自分には備わっていると自覚し、的確に対処できるようになれば、世界を正しく見ることができるようになります。
    もちろん、本書はその対処法を丁寧に教えてくれます。
    それにしても、世界がこんなに良くなっているとは思いませんでした。
    貧困問題の解決は決して夢物語でないことが、本書を読んで分かります。
    データが明確に物語っているのです。
    ただ、相変わらず極度の貧困に苦しむ人たちがいるのも事実。
    著者は「いいことと悪いことは両立する」と言います。
    過度に楽観視せず、と言って悲観し過ぎることもありません。
    データを読み解き、正しく対処すれば、世界を少しずつ良くすることができる―。
    何だか力が湧いてきます。
    ちなみに、本書は著者の遺作となりました。
    天国の著者に感謝したいと思います。
    本書を勧めてくれたMさんにも感謝。
    □□□
    質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう。
    A 20%
    B 40%
    C 60%
    ※答えはC
    質問2 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
    A 低所得国
    B 中所得国
    C 高所得国
    ※答えはB
    質問3
    世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
    A 約2倍になった
    B あまり変わっていない
    C 半分になった
    ※答えはC
    質問4 世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?
    A 50歳
    B 60歳
    C 70歳
    ※答えはC
    質問5 15歳未満の子供は、現在世界に約20億人います。国連の予測によると、2100年に子供の数は約何人になるでしょう?
    A 40億人
    B 30億人
    C 20億人
    ※答えはC
    質問6 国連の予測によると、2100年にはいまより人口が40億人増えるとされています。人口が増える最も大きな理由は何でしょう?
    A 子供(15歳未満)が増えるから
    B 大人(15歳から74歳)が増えるから
    C 後期高齢者(75歳以上)が増えるから
    ※答えはB
    質問7 自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう?
    A 2倍以上になった
    B あまり変わっていない
    C 半分以下になった
    ※答えはC
    質問8 現在、世界には約70億人の人がいます。下の地図では、人の印がそれぞれ10億人を表しています。世界の人口分布を正しく表しているのは3つのうちどれでしょう?(地図は載せられないので言葉で割合を説明しますね)
    A 南北アメリカ大陸1:ヨーロッパ州1:アフリカ州1:アジア州4
    B 南北アメリカ大陸1:ヨーロッパ州1:アフリカ州2:アジア州3
    C 南北アメリカ大陸2:ヨーロッパ州1:アフリカ州1:アジア州3
    ※答えはA
    質問9 世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
    A 20%
    B 50%
    C 80%
    ※答えはC
    質問10 世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう?
    A 9年
    B 6年
    C 3年
    ※答えはA
    質問11 1996年には、トラとジャイアントパンダとクロサイはいずれも絶滅危惧種として指定されていました。この3つのうち、当時よりも絶滅の危機に瀕している動物はいくつでしょう?
    A 2つ
    B ひとつ
    C ゼロ
    ※答えはC
    質問12 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?
    A 20%
    B 50%
    C 80%
    ※答えはC
    質問13 グローバルな気候の専門家は、これからの100年で、地球の平均気温はどうなると考えているでしょう?
    A 暖かくなる
    B 変わらない
    C 寒くなる
    ※答えはA

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著者プロフィール

ハンス・ロスリングは、医師、グローバルヘルスの教授、そして教育者としても著名である。世界保健機構やユニセフのアドバイザーを務め、スウェーデンで国境なき医師団を立ち上げたほか、ギャップマインダー財団を設立した。ハンスのTEDトークは延べ3500万回以上も再生されており、タイム誌が選ぶ世界で最も影響力の大きな100人に選ばれた。2017年に他界したが、人生最後の年は本書の執筆に捧げた。

「2019年 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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