小惑星探査機 はやぶさの大冒険

著者 :
  • マガジンハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838721030

感想・レビュー・書評

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  • (2010.08.20読了)(2010.08.18借入)
    小惑星探査機「はやぶさ」の発射から、帰還までを綴った作品です。随時関係者へのインタビューも挟み込まれ、解説も加えられているのですが、残念ながらわかりやすくなっているとは言い難いようです。かといって面白くない本かといえば、そんなことはありません。「はやぶさ」吉田武著、は、日本のロケット開発物語を含めた本で、それなりに面白かったのですが、「はやぶさ」のみに焦点を絞っているわけではありませんし、帰還の様子は、予想に基づいて書かれていました。予想通りに帰って来たのは驚きでした。

    ●7年間の記録(8頁)
    私は、「はやぶさ」の打ち上げ前から取材を始めて、7年間にわたりこの計画に携わる宇宙科学技術者たちに何度も会い、その証言を記録しつづけてきました。本書は、その7年間にわたる記録と宇宙航空研究機構、そして「はやぶさ」の計画を進めてきたその一部門である宇宙科学研究所が発表してきた膨大な資料を合わせて、大気圏再突入のウーメラ砂漠、そして「カプセル」が日本に戻ってくるまでの「はやぶさ」の7年間の大冒険をまとめたものです。
    ●小惑星(28頁)
    太陽の周りをどう回っているかの軌道がわかっている小惑星は約27万個が発見されています。「はやぶさ」は、小惑星に着地してその岩石の破片を地球に持ち帰る仕事「サンプルリターン」が大きな目的です。
    ●イオンエンジン(54頁)
    「はやぶさ」に搭載した「イオンエンジン」のイオンを噴く部分の大きさは、直径約10センチです。パワーは、1円玉を「地球が引っ張るほどに力」です。(パワーがとても小さい)
    燃料として「キセノンガス」が必要です。100キログラムで、往復の4年間大丈夫です。
    ●ターゲットマーカー(81頁)
    小惑星「イトカワ」に着地するための目印を先に落とした上で、その目印を「はやぶさ」から確認しながら着地する方法を取りました。その目印を「ターゲットマーカー」と呼んでいます。「イトカワ」は、とても小さい星なので、重力が地球上の約10万分の1しかありません。そのため目印の「球」を「イトカワ」に落とした時にちょっとでも跳ね返ると宇宙のかなたに飛んで行ってしまいます。いろいろ検討の結果「お手玉」と同じように「球」の中に、ビーズのような小さい玉を入れると跳ね返らないことがわかりました。
    ●イトカワの石(86頁)
    「イトカワ」の石の採集は、「はやぶさ」を「イトカワ」の表面1メートルまで近づき「はやぶさ」の下に飛びだしているラッパ状の「サンプラーホーン」から弾丸を発射し、舞い上がった石や砂のかけらがラッパに入り込むという方法で行います。(弾丸の発射はうまくいかなかった。)
    ●超小型探査ロボット「ミネルバ」(149頁)
    「ミネルバ」は超小型探査ロボットで、自力で移動する。カメラを3台搭載し、「イトカワ」の表面を撮影し、親機の「はやぶさ」に送信する。それを、「はやぶさ」が地球に中継、転送する。ターゲットマーカーと同様「はやぶさ」より先に着地させる予定でした。
    (「ミネルバ」は、「イトカワ」への着地に失敗し、宇宙のかなたに消えてしまった。)
    ●ウーメラ砂漠(250頁)
    「はやぶさ」が燃え尽き「カプセル」が帰ってくるオーストラリアのウーメラ砂漠は、世界最大の軍事、航空・宇宙実験場で、オーストラリア国防相が管理する荒涼とした地域だ。通常立ち入り禁止地域になっている。(人が住んでいたり、通行していたりするところだったら、そんなところに宇宙から物体が帰ってきたら、危ないと思っていたのですが)
    ●ヒートシールド(254頁)
    地球に帰ってくる「カプセル」は「ヒートシールド」という高熱から本体を守る「殻」を上下にかぶせてあります。大気圏突入後、高熱状態から脱すると、上下を覆っている耐熱の鎧「ヒートシールド」を脱ぎ捨てて「カプセル」だけがパラシュートで着地するんです。パラシュートが開いてからは、ビーコンという信号を出します。
    「ヒートシールド」は、ヘリコプターに搭載した赤外線センサーで探します。

    「はやぶさ」が大気圏に突入した時の地上から撮った写真が掲載されています。実にきれいにとれています。

    ●山根一真の本(既読)
    「アマゾン入門」山根一眞著、文春文庫、1987.04.10
    「変体少女文字の研究」山根一眞著、講談社文庫、1989.05.15
    「情報の仕事術1 収集」山根一眞著、日本経済新聞社、1989.07.25
    「情報の仕事術2 整理」山根一眞著、日本経済新聞社、1989.07.25
    「情報の仕事術3 表現」山根一眞著、日本経済新聞社、1989.10.24
    「ドキュメント 東京のそうじ」山根一眞著、講談社文庫、1989.12.15
    「マルチメディア版 情報の仕事術(上)」山根一眞著、日本経済新聞社、1994.09.22
    「マルチメディア版 情報の仕事術(下)」山根一眞著、日本経済新聞社、1994.12.16
    「デジタル情報の仕事術」山根一眞著、日本経済新聞社、1996.03.18
    「デジタル産業革命」山根一眞著、講談社現代新書、1998.10.20
    「小惑星探査機はやぶさの大冒険」山根一眞著、マガジンハウス、2010.07.29
    (2010年8月21日・記)

  • はやぶさに関しては、本当にいろいろな情報があちこちに溢れていたために、プロジェクトの顛末については知っているんですが、それでも知らないことはまだまだあるなぁという感じ。

    やっぱり実際に現場の近くで目にするというのが一番なんでしょうけど、さすがにそうもいかず。
    そういう意味では、現場に近い場所で記録を取り続けていた山根さんの記録を一冊の本にまとめ上げた本書は貴重なのかなーと思う。

    ネットで情報をあさってあるけど、何らかの新事実を知りたいという読者には物足りない印象かもしれません。
    発売を遅らせてでも、帰還後までをレポートしたというのは正解だったと思います。

  • 5/3

  • 惑星探査機はやぶさの打ち上げから地球への帰還までを関係者のインタビューを交えてまとめたもの
    はやぶさについて知りたい人は必読

  • はやぶさの軌跡を記録した本。きちんとはやぶさの最期までを追った本は少ないので、この本は貴重かも。専門用語も分かりやすく言い換えてあるので読みやすかった。

  • はやぶさに関わる関係者のインタビューを交えたノンフィクション。
    後書きに「中学生にわかりやすいように書いた」とあるように専門用語をかみ砕いて説明している。
    筆者がはやぶさ打ち上げから7年間追ってきているからこそわかる当時の開発者のインタビューや、当初金星の明るさほどといわれていたはやぶさの突入がなぜあそこまで光り輝いた理由が書かれている。
    その中でもウーメラ砂漠で山口カメラマンが撮影した見開きのカラー写真を見たとき川口PMの言葉を思い出した「「はやぶさ」、そうまでして君は…」

  • 良書。ひっさしぶりにわくわくしながら本を読んだ! 若干筆者の感情に「むむむ・・・」と感じるところはあったけど。

  • 2010年6月13日、『はやぶさ』は、「カプセル」と「希望」を残して、流れ星になりました。『はやぶさ』7年間、60億キロの大冒険の記録です。計画、実施したのは、アメリカでもロシアでも中国でもない、わが日本です。読書感想文など必要ないので、日本の学生さん!是非この本を夏休みに読んでください。そして『はやぶさ2』の実現にチカラをかしてください。

  • 溢れすぎた情報を整理して提供することで、興味を持った読者がネット上その他に存在するはやぶさ情報へアクセスする手助けとなるように という狙いは正しくそして有効に機能していると思える。感動・扇動的な動画その他と比べるものではなく、それらとは相互補完しあうことではやぶさひいては宇宙科学分野への興味関心をかき立てて頂ければそれが一番かと。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1947年東京都生まれ。獨協大学経済学部特任教授、宇宙航空研究開発機構(JAXA)嘱託、理化学研究所相談役、福井県文化顧問、月探査に関する懇談会委員(内閣府)、生物多様性戦略検討会委員(農林水産省)、日本生態系協会理事、NPO子ども・宇宙・未来の会(KU-MA)理事などを務める。日本の科学者・技術者を取材した20冊を超える『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)、『環業革命』(講談社)など著書多数。山根一眞オフィシャルホームページ http://www.yamane-office.co.jp/

「2017年 『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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