アメリカ、中国、そして日本経済はこうなる (WAC BUNKO 120)
- ワック (2010年4月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784898316207
感想・レビュー・書評
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最近良く読んでいる、ネットエコノミストの三橋貴明氏が日下氏と対談。というか主は日下氏で従が三橋氏。
数字を使わず説明する日下氏と数字を駆使して説明する三橋氏のコントラストが印象的。また、所々(特に後半)議論が噛み合わないまま進行する感じは面白かったです。
本書の中で、三橋氏が世間(政府)が無策だから今の若者は苦労しているんだ、というような論を展開していました。それに対し、日下氏はそもそも政府なんかに策を期待するのが間違いで、まずは若者自身が自ら努力し、切り拓いていかなければダメなんだ。他人に頼ろうということ自体に問題があるのだと語っていました。
この点は日下氏に全く賛成。
何かをしようという時、何かをなしたい時はまず自分でなんとかする努力なくしては、物事は前に進みませんもんね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前から新刊が出るたびに愛読していた日下氏と、昨年頃から注目している三橋氏との対談本です。日下氏の今までの本での主張によれば、日本経済悲観論者ではないので、両者の議論はほぼ噛み合っていたようです。
今まで好調を続けてきた中国の最後のイベントとなる上海万博が3日前(5月1日)から始まりました、万博が終了しても今の勢いを中国が続けられれば本物だと思います、答えは3年もすれば明らかになるのでこれからが楽しみです。
EUはその中での問題を抱えていてそれらの処理に忙しそうなので、今後も日米中の三角経済本(中国に資本財を輸出、それを耐久消費財にして中国がアメリカへ輸出、米国債を日本と中国に輸出して、ドルを取り戻す、p177)構造が続くのでしょうか。
本書で触れられているように、日本の本当の強みは、子供がお金と移動の自由を持っていて、彼らがアニメやゲームの発展に寄与していること、さらにそれらが日本からの押し売りではなく、世界中で求められているという点にあると思いました。
以下は気になったポイントです。
・アメリカは自国民の借金を証券化商品という形で世界中にばらまいていて、75%程度は欧州機関が購入していた(p18)
・EU成長モデルは経済が全体的に拡大していくことが大前提だったので、EUは最終的には分裂する(p27)
・2009年に雨以下の銀行は100行以上が潰れている、商業用不動産にお金を貸していたアメリカ地方銀行が潰れて地方経済がガタガタになっている(p30)
・プライムローンは全体の9割を占めるが、その延滞率が5%を超えていて、明らかに異常、日本は1%程度(p41)
・ウォール街は、ドルキャリーをして低金利のドルを購入して、金利の高い中国などの発展途上国に流すので儲かるが、国内企業は地方銀行が破綻して非常に困っている(p44)
・アメリカには、「ワシントン:政治(戦争)」「ニューヨーク:経済(サブプライムローン)」と、「田舎のアメリカ」があり、これがオバマを当選させた(p49)
・中国の融資において、お金の貸し借りには金利は固定されているが、手形割引には決まりが無い、大企業は手形割引でオカンを借りて、それを銀行預金して金利差を稼いでいる凄い世界(p57)
・中国のビルには「エレベータ」を抜いてある場合が多い(p58)
・中国は1997年までは人々は住宅販売ができず、政府から借りるという形でないと住めなかった、つまり住宅価値はゼロ、今ではゼロから増えている状態(p61)
・中国の場合、GDPが伸びていても電力利用量が落ちている、それをアメリカに指摘された結果、2009年3月に発表を打ち切った(p85)
・アメリカの貿易赤字の統計も、350億ドル程度消えている、それは武器輸出分であり、これが貿易統計に入っていないから(p88)
・日本国の資産は5493兆円、国家負債は5245兆円であり、その差額の247兆円が純資産(金融資産のみ)である(p105)
・たいていの日本金融機関は国債を購入したが、みずほコーポレート銀行、農林中金は、証券化商品を購入してしまい、両者ともに5000億円の評価損をだした(p119)
・広告をやめる理由は、当初は経費節減であったが、いまは「やめても売上は減らない」に変わった(p131)
・銀行は1000万円しか保証しないが、国債は無制限で政府が保証してくれるので、国債運用は個人にとっても定期預金よりも有利(p147)
・今までの日米中の経済関係は、日本が中国に資本財を輸出、それを耐久消費財にして中国がアメリカへ輸出、米国債を日本と中国に輸出して、ドルを取り戻すという構造(p177)
・麻生元首相のダボス会議の演説は聴衆がみな立ち上がって大拍手をしているが、テレビは報道しないのに対して、鳩山首相の「温室効果ガス25%削減」は大絶賛されたとウソの情報を流した(p188)
・世界中でコンテンツでまともに食べているのは、日本とアメリカ、漫画やアニメ(日本製は8割)は発表の形式であって、そこで表現されているものは、日本社会が到達したレベル(p215、217)
・日本経済が強い理由は、1)子供が豊富に小遣いを持っている、アメリカの2倍、欧州の3倍、2)支出と移動の自由(交通機関の発達)がある、である(p233) -
分かりやすい経済学の本だった。日本経済が駄目だ駄目だ言ってるマスメディアが上っ面しか報道してないのが良く分かる内容で痛快だったが、じゃあこれから日本はどうしていけばいいのかって内容は曖昧なままな感じ。世界の文明自体が過渡期に来てるのは間違いないんだろう