高野聖 [Kindle]

著者 :
  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 若狭に帰省する私は、同じ汽車で永平寺に向かう修行僧(宗朝)と敦賀の旅籠に同宿することなりました。その夜寝付かれぬ私は、諸国行脚をしている宋朝に何か面白い話をねだりますと、飛騨の山越えで信州へ向かっていた折の怪奇な体験を語り始めるのでした。歯切れのよい研ぎ澄まされた文体での語り口は、めくるめく幻想の世界へといつしか読む者を惑わしていきます。【泉鏡花】による明治33年の短編小説です。

  • 2020/03/16

    昔話の雪女にどこか似ている幻想的な短編でした。

    高僧が若い頃に体験した奇妙な話を汽車にたまたま同乗した若者に語って聞かせるのですが、
    険しい山道に蛇や山蛭が出てくるところから、まず非常に気味が悪い。
    特に大量の山蛭が身体に食いつき、血を吸い太っていく様子が印象的でした。

    ようやくたどり着いた山小屋で美しい女に出迎えられるのですが、この女は関係を持った男を獣に変える魔力を持っていました。
    滝で背中を流されながら女に誘惑される場面は艶っぽいですが、女の傍に妙にコウモリや猿が集ってくるな思うと、少し背筋が寒くなります。

    泉鏡花自身、師匠の反対を押し切って芸妓と結婚しているのですが、
    男を狂わす魅力的な女に対して男が抱える普遍的な葛藤を作品に昇華したように感じました。

  • 電子書籍、無料でこういうの軽く読めるのはいいわ。ちょっとした空き時間でなんとなく読んでしまった。昔の日本文学も、いいねぇ。薫りが良い。

  • これぞ怪談!

  • 予想外だったりスピーディーな展開の小説は面白い。けれど、たとえそれらを欠いていたとしても、徹底的に選び抜いた美しい言葉と巧みな構造で独自の世界観を築き上げれば人を惹きつけることはできる。
    泉鏡花を読むたびにそれを実感している気がします。

    敦賀に向かう汽車の中で言葉を交わし、同じ宿の同じ部屋に泊まることになった若者と中年の僧侶。眠れない若者は、僧侶に諸国を歩いて体験したおもしろい話を所望する。
    そこで僧侶は、若い時分に飛騨の山越えをした折の不思議な体験を話す…。

    ストーリー自体は正直、読んでいる途中で結末がわかってしまう、日本昔話にあるようなお決まりの怪談というか怪綺談です。

    それなのに、いかにも鏡花らしい、絶妙に配置した言葉によるリズミカルな文章の美しさと、目の前に映像が浮かびあがるようなきめ細やかな情景描写、そして、幻想と現実を絶妙なタイミングで行き来する「語り物」の構造の見事さがあわさって生まれる妖艶な世界観に引きつけられて、グイグイと最後まで読んでしまいました。

    百物語のお決まりの一編を、言葉選びと雰囲気づくりが上手な噺家さんにしてもらえる、ぐらいの気持ちで楽しむといい作品。

  • 怪談ですな。旅僧がむかしの体験を作者に語ってきかせるという趣向。

    内容はともかく、おびただしく振られたルビを括弧書きにくくりだしているのは読みにくい。他にやりようないのかね。

  • 現在は冬、回想は夏。蛇や蛭の描写や女の艶めかしさなど非常に映像的。
    体言止めもリズミカルで独特の雰囲気がいい。
    リアリティラインも絶妙。

  • 迷い込んだ家に住んでいたのは、男達を動物の力に変える力を持った女でした。白痴の夫が印象に残った。

  • 個人的には、歴史上で泉鏡花が最も美しい日本語を操る作家だと思っている。
    独特な文体が、より非現実的な世界観を生み、高野聖の不気味さを生み出していると思う。

  • 美しい日本語。言葉の使い方が凄すぎ。

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著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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