- Amazon.co.jp ・電子書籍 (74ページ)
感想・レビュー・書評
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若狭に帰省する私は、同じ汽車で永平寺に向かう修行僧(宗朝)と敦賀の旅籠に同宿することなりました。その夜寝付かれぬ私は、諸国行脚をしている宋朝に何か面白い話をねだりますと、飛騨の山越えで信州へ向かっていた折の怪奇な体験を語り始めるのでした。歯切れのよい研ぎ澄まされた文体での語り口は、めくるめく幻想の世界へといつしか読む者を惑わしていきます。【泉鏡花】による明治33年の短編小説です。
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電子書籍、無料でこういうの軽く読めるのはいいわ。ちょっとした空き時間でなんとなく読んでしまった。昔の日本文学も、いいねぇ。薫りが良い。
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これぞ怪談!
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予想外だったりスピーディーな展開の小説は面白い。けれど、たとえそれらを欠いていたとしても、徹底的に選び抜いた美しい言葉と巧みな構造で独自の世界観を築き上げれば人を惹きつけることはできる。
泉鏡花を読むたびにそれを実感している気がします。
敦賀に向かう汽車の中で言葉を交わし、同じ宿の同じ部屋に泊まることになった若者と中年の僧侶。眠れない若者は、僧侶に諸国を歩いて体験したおもしろい話を所望する。
そこで僧侶は、若い時分に飛騨の山越えをした折の不思議な体験を話す…。
ストーリー自体は正直、読んでいる途中で結末がわかってしまう、日本昔話にあるようなお決まりの怪談というか怪綺談です。
それなのに、いかにも鏡花らしい、絶妙に配置した言葉によるリズミカルな文章の美しさと、目の前に映像が浮かびあがるようなきめ細やかな情景描写、そして、幻想と現実を絶妙なタイミングで行き来する「語り物」の構造の見事さがあわさって生まれる妖艶な世界観に引きつけられて、グイグイと最後まで読んでしまいました。
百物語のお決まりの一編を、言葉選びと雰囲気づくりが上手な噺家さんにしてもらえる、ぐらいの気持ちで楽しむといい作品。 -
怪談ですな。旅僧がむかしの体験を作者に語ってきかせるという趣向。
内容はともかく、おびただしく振られたルビを括弧書きにくくりだしているのは読みにくい。他にやりようないのかね。 -
現在は冬、回想は夏。蛇や蛭の描写や女の艶めかしさなど非常に映像的。
体言止めもリズミカルで独特の雰囲気がいい。
リアリティラインも絶妙。 -
迷い込んだ家に住んでいたのは、男達を動物の力に変える力を持った女でした。白痴の夫が印象に残った。
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個人的には、歴史上で泉鏡花が最も美しい日本語を操る作家だと思っている。
独特な文体が、より非現実的な世界観を生み、高野聖の不気味さを生み出していると思う。 -
美しい日本語。言葉の使い方が凄すぎ。