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感想・レビュー・書評
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青空文庫で読了。太宰治の代表作の一つです。旧華族が昔を懐かしむような本は好きですが、本書は決してそのようなものではありません。ただ貴族という上流階級が故に、庶民との対比がわかりやすく、没落の大きさとそこに美しささえ感じました。愛人・太田静子の日記が参考になっていて、加えて登場人物達が皆、太宰治自身を投影しているそうです。
現代は生きにくい時代だと言う人もいますが、本書を読むと、生きにくさは時代だけではなく、人間の持つ性(さが)が大きいと思えて来ます。生きにくさに共感しつつも、完全に感情移入できないのは、私という草が、生き続けるために欠けた部分がないのかもしれません。もしくは執筆から時代が経っており、リアリティよりも時代の懐かしさが先行してしまっているのかもしれません。
「死んで行くひとは美しい。生きるという事。生き残るという事。それは、たいへん醜くて、血の匂いのする、きたならしい事のような気もする。」気になる言葉はとても多いです。やはり彼の作品レビューは難しい...ただ誰もが持つ心の闇、それがあるからこそ、共感して多くの人の支持も得ているのも確かです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
没落貴族の母と、娘と、麻薬中毒の弟と、既婚者の上原。段々と不幸せになっていくけれど、最後は少しだけ前向き?
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戦後の混乱期であり、インテリの間であらゆる議論がぶちまけられていた時代ということが前提にあるのだけど、そこからなお普遍的な要素を汲み取るとすれば、弟にあるように感じるね。反骨の陰には、何をしても喜びが感じられない生への疲弊があり、これは飽食の現代でも割と見られる現象なんじゃないか。その彼を唯一支えていたものが恋であり、主人公も恋に突き動かされ歪な形で生きていくわけだけど、ここですね。言葉で語る思想より、もっと自然で喜ばしいことがある、という終幕へ向け、日没寸前の貴族がグロテスクに我を失っていく。いささか角川のように。
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デカダンスに堕ちて堕ち切ったからこそ書けた作品なのだろう。やっぱり太宰治は心底嫌い。太宰を太宰たらしめたであろう生育環境を生み出してしまった社会の歪み。
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一家が没落していく様が悲しすぎた。
いよいよ生活の先行きが不安になってきた打開策としてかずこが当てもないのに上原の愛人
恋い焦がれ続けた男、ようやく会えたと思ったら、アレ、、、。よくある話だ。 -
初太宰かも。
安吾の不良少年とキリストから入って、不良、貴族、自殺、とかそういう言葉勘繰りながら読んじゃいそうな気がしてたけど、そんなことなかった。
人間通の文学といったのがそのとおりだと思った。小説のなかでも自分自身でも、恥ずかしさと誇りをごちゃごちゃにして悶えたり呆けたりしながら生きることや、それを細かく書くサービス感。 -
太宰の時代背景を思うとなるほど興味深い本だった。
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自分がこの物語の真意を理解できてるとは思わないけど、これと同じことは大小問わず今でも起こり続けてて、永遠に終わることはないんだろうと思う。というか、終わるときは人類の終わりかな。
直治の「人間は、みな、同じものだ」という降ってわいた言葉への違和感と抵抗。個人的にはここが一番好きで、考えさせられるところかな。 -
読んだ。