目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 初めて気づかされる当事者の話って面白い。触媒としての障害。見えないということをその場のみんなで引き受ければ、なんでも口にしなければならないので誰もがおしゃべりになり、リラックスしてゆくという。コミュニケーションを変えて人とのつながりを生む。障害がポジティブな要素として機能する例だ。「子はかすがい」類似のことわざができそう。問題は「引き受ければ」。これをどの程度「めんどくさい」「負担」と思うかは人による。それが互いの関係性次第なら「見えない人」でコミュ能力を高めないとダメ? 障害者問題全般の話になるけれど。

  • うちにあったので読んでみた。タイトルは秀逸だが、悪い意味で新書らしい経験談を主語を大きくしたような本だった。もちろん、それはそれで意味はあるのだろうが。

  • 題名のまま、な内容。

    障碍者の~、話ではないです。
    視覚がない人間の情報把握方法やら思考の方向性から
    色々思索。
    なんか目から鱗がポロポロ。

  • 美学と生物学がクロスするところーそれは「身体」です。生物学は人間以外、美学はもっぱら人間のみという違いはありますが、生物学も美学も、身体の働きやまわりの環境との関わりについて探求してきました。no.153

    【私が情報を使っているのか、情報が私を使っているのか】no.431

    【視野を持たないゆえに視野が広がる】no.486

    (好きな色の獲得)
    聞いてみると、その色をしているものの集合を覚えることで、色の概念を獲得するらしい。no597

    【視覚がないから死角がない】no.649
    見えない人は、物事のあり方を、「自分にとってどう見えるか」ではなく、「諸部分の関係が客観的にどうなっているか」によって把握しようとする。この客観性こそ、見えない人特有の三次元的な理解を可能にしているものでしょう。

    【「内」と「外」は等価】no687

    【章のまとめ】no704
    決定的なのは、やはり「視点がないこと」です。視点に縛られないからこそ自分の立っている位置を離れて土地を俯瞰することができたり、月を実際にそうであるとおりに球形の天体として思い浮かべたり、表/裏の区別なく太陽の塔の三つの顔をすべて等価に「見る」ことができたわけです。

    <メモ>
    ハイデガー「情報は命令である」
    情報が氾濫しすぎて、逆に思考(解釈)ができないアイロニー:つまり意味を生成できない

    望月さんが言っていた、「相対化できない、欲求も変わるのか」
    └一般に白人のハーフの女の子を可愛いと感じる
    └コンゴでは自ら漂白剤を塗り、白人になろうとした黒人

    ・遠山正道、林千晶が2017年に注目する人とは? 『HIP Fireside Chat』後編
    http://hiptokyo.jp/hiptalk/hipfiresidechat_03/2/

    ・「目が見えないこと」にぼくらが学ぶこと:身体研究者・伊藤亜紗
    https://wired.jp/2016/04/12/interview-asa-ito/

    ・伊藤 亜紗 - 考えるメディア
    https://media.style.co.jp/author/asa_ito/

  • つまり一人暮らしの難波さんがパックの中身を知るには、基本的に開封してみるしかありません。ミートソースが食べたい気分のときに、クリームソースがあたってしまったりする

    こうやって何事もポジティブに捉えられたら良いですね。どうしてもネガティブに考えてしまう自分がいます。それで得することなどほとんどないのに。

    言っても残りの人生50年くらい、楽しかったと思えるような人生にしたいです。そのためには、できるだけこう言った考えたができるようになれたら、と思います。

  •  タイトルから認知科学的なアプローチを想像しましたが、むしろ障害者福祉論に近い内容でした。著者は生物学を志したが途中から文系に転向したという経歴とのことで、視覚障害者について学術的に研究しているというわけでもないようです。

     とは言え中身の薄い本ということもありません。何人かの視覚障害者にインタビューした結果をもとに、障害者を一方的に弱者として扱う従来の福祉のあり方に一石を投じる試みがなされています。

     言うまでもなく、視覚障害者の世界は、晴眼者(目が見える人)が目を閉じた状態と同じではありません。彼らが世界を認識するのに使っている手法とその特徴を知ることはおおいに知的好奇心を刺激されます。たとえば、視覚は二次元であるが彼らが他の感覚で得る認識は三次元であるため、晴眼者の方が狭い領域しか“見えて”いなかったりするなど。本書では多数のエピソードを交えてそういう違いが紹介されています。

     また、紹介されているイベント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」(真っ暗闇の会場を、盲人に導かれて歩く)については別のどこかで耳にして興味がありました。いつか機会があれば行ってみたいと思います。

  • 視覚障害者の世界への一般的な入門書、かな。
    視覚障害者と付き合いのある人なら「あー、そうだねー」と頷くだろうし、視覚障害者が未知の存在である人なら「へー、そうなんだ!」と驚くだろうと思う。
    全体的に文章が柔らかいので、軽い気持ちで読みたい人におすすめ。

    著者の、「情報」ベースだけでなく、「意味」ベースの関わりも追加していきたい、という考えには納得。
    たしかに、視覚障害のある人に何かを伝えるとき、ついつい正しく詳しい「情報」を伝えようとしてしまう。それは必ずしも彼らの求めるものではないのかもしれない。
    「意味」ベースでの関わりとは、つまり、もっとお互い気楽に付き合っていこう、という解釈で良いのかな?
    そのためには、まず視覚障害者を知ることが大切。知らないものは怖い。知れば慣れる。慣れれば日常になる。

  • 障害者といわれる方々とそうでない方が、物事に対してどのような感じ方、対処の仕方の違いがあるのか、お互いの距離をどうやって縮めればよいのか。要は私たちは、障害者の方々とどのように接すれば良いのかについて、まさに目からうろこが落ちるような内容が書かれています。非常に難しい問題で、取り扱うのにも気を使うことの多いものです。それに対して、なぜ壁があるのかの理由から、それをどのようにクリアしていくのかについても、著者が接せられた方々からヒアリングされた経験などから具体的に書かれています。
    扱われているのはタイトルにありますように「目の見えない人」ですが、それ以外の身体の不自由な方々への接し方、またそもそも人との接し方について、現代人は損なってしまっていることを感じます。お互いの障害に対する努力を、語り合い、理解し合うこと、その重要さが分かる本だと思います。

  • 題材はいいが、研究ではなく取材によって書かれたもの。なので著者はこう思うとなりがち。とはいえ興味深い話も多く、個人的には実況鑑賞というべきソーシャル・ビューはちょっと面白いと思った。

  • 視覚障害者は見えない分、脳の中のスペースに余裕があり、情報を結び付ける力も高い。 また、『視点』が無い事で、表も裏も死角も無い。 欠如ではなく、バランス。むしろ我々は、見える情報に囚われ過ぎ、盲目性を帯びている。感覚を研ぎ澄ます大切さを著者は説く。 “耳で見て目できき花でものくうて、口で嗅がねば神は判らず。” “ユーモアとは視点を移動すること。” 声を出して美術作品を鑑賞する『ソーシャルビュー』ブラインドサッカーの件にある『サッカーに視力は必要無い』(確かに、ノールックパスと言うテクもある) など、「目から鱗」の気付き多し。

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著者プロフィール

東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長、リベラルアーツ研究教育院教授。マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。専門は美学、現代アート。東京大学大学院人文社会系研究科美学芸術学専門分野博士課程修了(文学博士)。主な著作に『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』『目の見えない人は世界をどう見ているのか』『どもる体』『記憶する体』『手の倫理』など多数。

「2022年 『ぼけと利他』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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