暗夜行路 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 前半はだらだらと、主人公の日常生活をとりとめなく追っていく感じで、ページをめくる手が鈍くなりがちでしたが、後半は物語がある種スリリングに展開します。
    その緩急を評価することもできますが、前半がもっとスリムであってもいいんじゃないかなとも思います。

    この時代の男性の気持ちの有り様というのは、(なぜかいつも)脆くてそれが魅力的に感じます。当時のみんながこうだったのか、それとも文学の担い手がそうなりがちだったからなのか分かりませんが、今の時代の私たちがもっている、そういう傷つきやすい部分が強調して表現されることで、真に心を揺さぶられるような気がします。

    読み通してみると、どこか『人間失格』にも似た要素が見いだせました。

  • (Kindle unlimited利用)
    けっこう有名な作品だが初めて読んだ。さすがに戦前(昭和13年刊、書き始めは明治?)のものなので現在とは価値観が違い、そこを理解して読まないと主人公の考えとか独りよがりなところとか理解できないだろう。特に女性に対する考えなど今となってはあまりに男性中心すぎる。妻となった直子に対して家庭内暴力的な扱いもあり、他の女性に対しての考え方も男の独善性がかなりある。正直主人公の時任謙作が不義の子という背景があるにせよ好き勝手やりすぎ。小説家という設定だが作品を完成させていない割には尾道、京都、鳥取大山に長期に出かけたり住んだりできるというそれなりの金持ちだし、他人に対する好き嫌いも含めいまいち共感できない。戦前だとこういう作品が傑作とされ、著者の代表作となるんだということがわかったのが収穫か。

  • 生来、ひとりの人を心底から愛せない、信頼できない、それでいて惚れやすい、だからといってとことんに惚れ込めない、何なのだろう、この性根は? 
    それを普通でない自分の生い立ちからくる自分にはどうにもならない運命的なものに求めてしまう。
    こうした思いを改めさせたのが、直子との結婚生活であった。はじめ、本気で愛することを教えてくれたのが直子の存在だった。
    直子との関係もそう一筋縄には行かなかった。ある出来事から直子との関係も複雑になってしまう。しかし、今までの自分だったら中途半端にその関係を解消してしまっていたかもしれなかったが、今度は違った。直子との距離をいったん置いて、自分を見つめ直すことをする。自分を見つめ直し、自分自身の力、思考によって、直子との関係、自分の人生を切り開いてゆく。

    暗夜行路。暗い夜道を行く。はじめはひとり彷徨い歩いていたが、小説の終わる頃には、その傍らに直子が手をとって歩いている。

  • 終盤に影大山が出てくると聞いて読んでみました。僕がみた影大山は眼下に美しい大山の影が広がる9月上旬の午前6時頃の風景でした。米子の町は朝日に輝き、美保関の灯台も見えず本に描写されていた風景とは全く別物でしたが本当に美しかった。
    志賀直哉は、大山からの光景を数十年前に訪問した時の記憶だけで書いたそうですが、季節と時間を合わせて再度見てみたいと思いました。

  • 素っ頓狂な話だった。
    良い家のジジイが息子の嫁を寝盗るって。息子もそんな放蕩親父と嫁を置いて、海外に単身赴任するか?
    不貞の子・謙作は…童貞か!
    出会う女いちいち惚れる。しまいには祖父の妾であり女中の20歳年上のお栄にプロポーズしようとしてるし。アホか。
    プロポーズする前に相手とコミュニケーションを取らない。これは時代なんだろうけど、顔盗み見てプロポーズするって。平安時代か!
    代議士を通じてプロポーズするくらいだから直子の家は良い家柄で、不貞の子からのプロポーズは断るかと思いきや、なぜかOK。なんで?
    直子は従兄弟から寝取られる。直子の家系は性に奔放なの?
    謙作が幼く独りよがりなのはキャラとしても、全体的に変な話で、明治から戦前までの日本ってこんな感じって震えたわ。

  • 主人公、謙作の心の曇りのようなものと、それを晴らす救いを描いている。その曇った精神は、謙作を彷徨わせ放蕩させる。物語の前半で、謙作は自身の秘密を知る。謙作は秘密であった事実そのものより、自分も受け継いでしまったと感じているそれに至った「血」への思いを吹っ切れなくなる。秘密を知る前の彷徨いや放蕩もその「血」に結びつけようとしてしまう。そこに直子が現われる。直子の生命力に触れ、謙作の曇りは晴れかけるが、子供の死とそれに続く思いもよらぬ事件が、謙作を曇りを超えた狂いに向わせる。しかし、それを吹っ切ろうとした謙作の死を予感させるラスト、謙作と直子のお互いを求める心がそれぞれを救う。暗く美しい物語である。
    志賀直哉自身によるあとがきが添えられ、登場人物のモデルの有無などが語られている。私小説が現実の世界にもたらす憶測や中傷などに配慮したものと思われる。人の世の変らなさを思う。

  • unlimitedにあり

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著者プロフィール

志賀直哉

一八八三(明治一六)- 一九七一(昭和四六)年。学習院高等科卒業、東京帝国大学国文科中退。白樺派を代表する作家。「小説の神様」と称され多くの作家に影響を与えた。四九(昭和二四)年、文化勲章受章。主な作品に『暗夜行路』『城の崎にて』『和解』ほか。

「2021年 『日曜日/蜻蛉 生きものと子どもの小品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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