三体III 死神永生(上)2021
死神永生=ししんえいせい と読む
2021年5月25日電子書籍版発行
著者 劉慈欣(りゅうじきん)
訳者 大森望 光吉さくら ワンチャイ 泊功
カバー 冨安健一郎
劉慈欣(りゅう じきん、リウ・ツーシン、1963年6月23日 - )は、中華人民共和国のSF作家。山西省陽泉出身。本業はエンジニアで、発電所のコンピュータ管理を担当している。
中学生のころから創作を開始。1999年、中国のSF雑誌『科幻世界(中国語版)』でデビュー。その後、銀河賞に連続して入選。2010年、第1回中国星雲賞(世界華人SF協会主催)で作家賞を受賞(韓松と同時受賞)。2015年、アジア人初のヒューゴー賞受賞者となった。
SFに興味を持つきっかけになったのはジュール・ヴェルヌ『地底旅行』で、その後アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』で本格的にSFにのめり込むようになった。
『三体III 死神永生』(さんたい さん ししんえいせい、簡体字中国語: 三体III:死神永生)は、劉慈欣による中国のSF小説。地球往事三部作(中国語版)の第三部であり、2010年11月に重慶出版社より出版された。
2021年には早川書房より日本語版が出版された。
あらすじ
危機紀元208年、面壁者ウォールフェイサーの一人である羅輯ルオ・ジーはその計略によって三体星人の地球侵略を食い止めた。だが、三体星人の存在とその侵略行動が明らかになった危機紀元の始まりにおいて、面壁計画の影で「階梯計画ラダー・プロジェクト」が極秘に発動されていた。その目的は三体星人の地球侵略艦隊にスパイとして人間を送り込むこと。
階梯計画を主導する若き女性エンジニア程心チェン・シンは、彼女に密かに想いを寄せ、名前を隠して恒星系の権利をプレゼントしていた男、雲天明ユン・ティエンミンを太陽系外に送り出し、送り出したスパイを知る計画責任者として冷凍睡眠して未来に送られることになる。そして彼女の決断は人類の行方を大きく左右することに……。
羅輯は三体世界の座標を全宇宙に放送するぞという脅しによって暗黒森林抑止を成立させ、三体世界の座標発信ボタンをその手に任せられた人間、執剣者ソードホルダーとなった。
以上のようにWikipediaで解説される三体三部作目
あまり良い要約が見つからない。
SFらしさが一番強く出ている作品なので簡単には要約しにくいのかもしれない。
著者も語っているのではあるが、この三部作目は一般向けというよりSF好き向けに書いたのだという。
特に下巻の途中からはその傾向がはっきりしてくる。
上巻では、第二部の中心となっていた面壁計画の裏で別の計画が進行しており、階梯計画という。舞台裏側をちょっと覗くような気持ちであった。
羅輯(前作2部の主人公)がかわいそうである。
下巻まで読むと200歳を超えてくる。
執剣者を程心へ交代させるタイミングでは100歳ちょっとか・・・いったい医療技術はどれだけ進んだのか。地味にすごい所のように思う。
上巻では執剣者の交代が描かれるのだけど、妻、娘と離婚・・まじか。
前作2部の気持ち良い終わり方を読んでいるだけに苦々しい思いを抱いてしまった。
下巻の200歳くらいのおしゃべりになった羅輯に少し救われたが。
でも200歳をこえて天王星で地味な仕事に従事できるとは・・。
上巻では執剣者交代のタイミングですかさず三体文明、水滴が地球に攻撃をしかけてくる。ほぼ何もできない、しない主人公程心にいらつく。
オーストラリアへ全人類を無理やり引っ越しさせる三体文明にも驚きだが・・・
宇宙にいた万有引力の重力波送信によって三体世界の座標が全宇宙に公開された事で三体文明は再び地球侵略を諦める。
そのわずか三年後に三体世界の母星が破壊(正確には太陽のひとつ)されることになった。
雲天明と程心がコンタクトを取る部分で上巻は終わる。
脳みそだけ宇宙に送られた男がちゃんと身体を三体文明に与えられているだけでも救いがあるように思う。
印象に残った点
「われわれは止まらない」ウェイドは立ち上がると、会議テーブルにそって歩き出した。「これから先、階梯計画だろうと、なにかべつの計画だろうと、おれが止まれというまで止まるな。わかったか?」ウェイドはいつもの落ち着いた口調をかなぐり捨て、怒り狂った野獣のような声で吠えた。「われわれは前進する! 前へ! 前へ! なにがあろうと前へ!」
生きているだけですでに、ものすごく幸運なのよ。これまでの地球がそうだった。いま、この残酷な宇宙では、昔からずっと、生きているだけで幸運だったの。でも、いつからか、人類は幻想を抱くようになった。自分たちには生きる資格があり、生きていることは空気のように当たり前のものなんだという幻想をね。
いま、人々は学んだ。終わりのない宴はない。あらゆるものに、かならず終わりがある。
2023/01/26(木)記述