言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • アブダクション推論
    観察データを説明するための仮説を形成する理論
    言語学習の本システムであるブートストラップサイクル。既存の知識が新たな知識を生み、語彙の成長を加速させ、さらに言葉を学習するときの手がかりとなるバイアス自体、つまり学習の仕方を洗練させていく。

  • 認知科学と言語学のコラボレーションから言語の不思議に迫る良書。前半はオノマトペを中心に扱い、後半はアブダクションを扱い、それらの知見から言語の誕生・進化・習得に対しての仮説を組み立てていく。その組み立ての道程からも学びが多い。言語に興味のある学部生にぜひ読んでもらいたい。

  • 面白かった.人間の会話や行動がいかにアブタクション推論によって行われているか,考えさせられた.

    言語を獲得する際に行う対称性推論が人間特有として生まれながらに備わっているという実験方法,結果も興味深かった.

    アブタクション推論も人間特有であり,誰でもできることだからこそ,「言葉をそのままに理解する」ことができず,過剰な一般化や論理の飛躍が発生し,いくつかの社会問題も起こっているのかな....などと考えた.

  • 普段何気なく使っている言語
    それがどのようにしてもたらされたのか
    オノマトペはなぜ言語によって異なるのか
    だが、共通するところもある
    「当たり前」が「当たり前ではない」ことに気付かされる1冊。言語の捉え方が変わった

  •  タイトル買い。言葉を学習する人間(の赤ちゃん、幼児)に着目したオノマトペの話を興味深い。チンパンジーはアブダクション推論をしないから言語を学べない。でも個体差あり。これって進化の途中を感じさせるよなあ。
     多言語の発音から意味を推量するというのが可能なのがすごかった。母音、子音って単なる音の差ではなかった!のにびっくり。

    ”人間は、アブダクションという、非論理的で誤りを犯すリスクがある推論をことばの意味の学習を始めるずっと以前からしている。それによって人間は子どもの頃から、そして成人になっても論理的な過ちを犯すことをし続ける。しかし、この推論こそが言語の習得を可能にし、科学の発展を可能にしたのである。”

     人間が言葉に迷っていくというのは、本当だったのだ。過ちを犯し続けるのだ。

  • 要旨はこれまでの今井先生の著書や「ゆる言語学ラジオ」で知っていたから大きな驚きはなかったが、オノマトペという身近でキャッチーなテーマから、一歩ずつ着々と、言語の本質・起源、人間が人間たる理由など、エベレストのような高いテーマへ進んでいく本書の流れは惹き込まれた。マクロな問いに挑む本もたまには楽しい。

  • なぜヒトだけが言語を持つのか。
    言語の発生とは。
    それを考える上でオノマトペとアブダクション推論という人間特有の学ぶ力の重要性。
    認知心理学者と言語学者の面白い言葉の不思議の物語。

  • 話題の『言語の本質』を読んだ。最近仕事でLLM周りをリサーチすることも多かったので、原理的に自然言語の仕組みというか大胆な仮説を読み込む過程がエキサイティングだった。記号接地問題や言語の身体性、自分の知識が浅かった部分がアップデートされた気がする。

  • オノマトペの話。

    オノマトペは、ギリシア語でオノマ(名前)+トペ(作る)で名前を作るという意味。いわゆる擬音語。

    音のアイコン性がある。gやzやdの様な濁音は程度が大きくマイナスのイメージを伴いやすい。ゴンゴン、ザクザク、ダンダン

    発音のアイコン性。「あ」や「お」が大きいものと結びつき、「い」が小さいものと結びつく。口の大きさ。「おおきい」と「ちいさい」。これは赤ちゃんですら気づいている法則。

    実在しないが、阻害音からなる「ザカド」「クシポチ」「テスッソ」は硬い響きを、共鳴音からなる「メレノ」「ヨヌルナ」「ワモンニ」は柔らかい響きを持つ。

    上記は耳が聞こえない人でも、その感覚がわかる。ただし、何かを咥えさせて質問するとわからないらしい。

    「かたい」はk、tという阻害音を、「やわらかい」はy、w、rという共鳴音を含んでいる。そのため、日本語を知らない外国人に「どちらがsoftでどちらがhard?」と聞くと、多くの人が正解する。

    複数の言語で共通音がある。主食には、ぱ・ば・ま・ふぁ・わ、が使われることが多い。
    鼻にはnが使われることが多く、舌にはlが使われる事が多く、粗いにはrが使われることが多い。
    赤ちゃん言葉の「まんま」はトルコ語は「ママ」スペイン語は「パパ」

    現代の普通語も、元々オノマトペだったものがある。「たたく」は「タッタッ」から、「ふく」は「フー」から(くは動詞化の古語)、「すう」は「スー」から。
    「はたらく」も「ハタハタ」から。カラス、ウグイス、ホトトギスもそれぞれ、カラ、ウグヒ、ホトトギに、鳥を表す古語のスがついた。

    オノマトペの動詞化。平安時代には「めく」を付けた。「ふためく」「がらめく」「そそめく」など。同じ頃、「ゆらりと飛ぶ」のように「と」をつける副使用法も一般化する。その後、「めく」はすたれて「つく」になる。「うろつく」「ふらつく」。江戸時代には「ぶらぶらする」など「する」が登場して現代っぽくなった。

    2歳児は片方向しか解らないことが多い。バナナを黄色と言うが、黄色の積み木を取ってと頼むと違う色を取る。ガヴァガーイ問題。

    「開ける」は多くの子供が過剰一般化する。トイレのドアを開ける。ミカンを食べたい時に開けてと頼む。日本語だと誤りだが中国だと正解。中国語の開は日本語と同様の意味に加え、電源を付けたり車を運転するときも使う。

    入るも過剰一般化される。お風呂でバスタブに入る時も入ると言うし、バスタブから出る時も入ると言う。これは、「入る」を「跨いで移動する」と認識しているため。

    小さい子供は知らない単語を聞くとモノの名前だと考える傾向がある。

    小学五年生の調査で、1/2と1/3のどちらかを尋ねると半数は間違う。中学2年生に99/100>100>101/100 と 99/100>101/100>100のどちらが正しいかを選ばせると半数以上が間違う。
    分数が接地していない。

    コップとハニーディッパーが目の前にある状況で「ハニーディッパーを取って」と言われたら、躊躇せずハニーディッパーを手渡す。2歳以下の子どもでも、未知の名前は自分が名前を知らないほうのモノの名前だと思うのだ。これを相互排他性バイアスという。

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著者プロフィール

今井 むつみ(いまい・むつみ):1989年慶應義塾大学社会学研究科後期博士課程修了。1994年ノースウエスタン大学心理学博士。慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。著書に、『親子で育てる ことば力と思考力』(筑摩書房)、『言葉をおぼえるしくみ』(共著、ちくま学芸文庫)、『ことばと思考』『英語独習法』(ともに岩波新書)、『言語の本質』(共著、中公新書)などがある。

「2024年 『ことばの学習のパラドックス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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