メアリ・ウェストマコット名義で発表されたロマンス小説第2弾。
アガサ・クリスティ自身とも重なると思われる恋愛と破局の物語。
個人的には前作の「愛の旋律」のような起伏の激しいストーリーの方が好みなので、ほぼ1人語りの筆致で進められるある意味平凡ともいえる展開は少し疲れた。
ただ、恋愛中だったり結婚している方には共感して読める部分もあるのかも…

2011年5月8日

ちょいと前に読み終わっていたけれど、その衝撃はいまだ冷めやらず。
天才とは恐ろしいものだ。
才能はその人自身だけでなく、周りも食い尽くさずにはいられない。
なにもかも全てが才能の奴隷や生贄になってしまう。
しかし、そんな物語を戦慄する思いで読みつつ、どうしようもなく惹きつけられた結果、ボリュームがあるのにもかかわらず一晩で読んでしまった。
自分がこういうストーリーにこんなにも魅了されるとは思わなかった。

初期のクリスティによくある若い男女の冒険物プラスちょっぴりロマンス(笑)
謎の一言をきっかけに、どんどん事件に深入りしていく彼らの冒険心が初々しくていい。
トミー&タペンスを彷彿とさせる。
また、謎のエヴァンスが意外なところに!というのも面白かった。

2011年4月16日

エミリー・トレファシスがいろんな手を使って「お願い」をするのがズルくて、でも可愛いから許されちゃう(笑)
トリックとしては今でも通用するとは言えないけれど、それでも読めちゃうから、やっぱりアガサ・クリスティだなあ、と。

ああ…なんて恐ろしい…悪夢のようなラストシーン。

結局、人間なんてそうそう変われるものではないということか。
自分自身に向き合う勇気を持たない者は死ぬまで己を欺き続けるということか。
そして、そんな人間に対して周囲は真実を気づかせてはくれないのか。
お互いを欺くことがお互いの平安ためだということか。

私はどうだろう…。
私にも自分自身から目を逸らすところが多々ある。
現実逃避に耽っている。
だが、そういう自分に気づいてはいる。
決して幸福な幻を見ているわけではない。
そこだけは主人公と違う。
違うからどうなのだ。
どうするのだ。

そういうことを考えさせられる話だった。
それにしても、なんという作品を書いたものだろう!

2011年3月8日

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