中学生からの大学講義 5 生き抜く力を身につける (ちくまプリマー新書 230 中学生からの大学講義 5)

制作 : 桐光学園  ちくまプリマー新書編集部 
  • 筑摩書房 (2015年5月7日発売)
3.72
  • (7)
  • (12)
  • (11)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 208
感想 : 16
5

そうそうたる大人による執筆。
コンセプトは、中学生向けに大学並みに深いことを伝える、というものだろう。
第5巻は、「自分の能力」がテーマ。この巻の前までの巻で扱った中学生から大学講義5『生き抜く力を身につける』ちくまプリマー新書世界の捉え方を踏まえ、自分の力をどう高めるか。最初の「学ぶ」ということに戻るのであろう。

一言で言えば、こういう執筆陣に共通するのは、一般人と異なる「問いの立て方」と言っていいだろう。どの設定においても、「答えの出そうな問い」というのがある。

大澤真幸 自由の条件の場合、
・「名前とは何か」、「名前は概念と同じか」:その答えとしては、概念が「それが何であるか」を示すのに対して名前は「それがある」=存在そのものを示す、という洞察が鋭い

西谷修 私たちはどこにいるのかの場合、
・「自分とは何か」ではなく、「自分はどこにいるのか」を考えることで、HOW=科学ではなく、WHY=哲学であることが示される。科学は記述であり、哲学は探究であるとする。

結局、人は自分で育つしかない。自分に必要な問いを立てる力が自分力である。教育のできることは、その手伝いまで。


大澤真幸 自由の条件
・自由=理論上は、働く余地がない、現実的には、存在を感じずにはいられない
・ある子どもの例:フレデリックとアルマン
・「名前とは何か」、「名前は概念と同じか」:その答えとしては、概念が「それが何であるか」を示すのに対して名前は「それがある」=存在そのものを示す
・どうすれば、責任を持った「自由な主体」になることができるか=存在が付与される
・アキハバラの悲劇

北田暁大 いま君たちは世界とどうつながっているか
・グローバリゼーションとジャパニゼーション
・モバイルメディアを持つことは「いつでも、どこでも、誰とでも」即時通話ができる。その反面、プレッシャーも感じる。つながらないと深読みしがち。
・土井隆義『空気を読む時代のサバイバル』「友達地獄」
・正高信男『ケータイを持ったサル』
・本田由紀『ハイパー・メリトクラシー』
・フラッシュモブ、大規模オフ
・オタクの思想とストリートの思想
・ニコニコ動画
・アニメオタクコンテンツにおける「世界観の提示」vs 「「萌え」どころの断片の提示」
・漫画の読み方の類型化:移入、表層受容、自己陶冶

多木浩二 キャプテン・クックの航跡
・18世紀のイギリスに生きた航海者:ジェームズ・クック
・社会の中で主流となる思想の変化、政治的な仕組みの変化、学問の発達といった事柄を具現化した活動
・クックの航海
1回目:天文学的な研究、地理学的な神話的大陸の発見、
2回目:神話的な大陸を直接目指す
3回目:北方航路の探求

宮沢章夫 地図の魅力とその見方
・「地図を描くとはどういうことか」
1 記号化の作業
2 グラフィカルな欲望の実現
3 概念や思想の図示
4 世界をわがものにすること
5 世界を手なずけること

阿形清和 イモリやプラナリアの逞しさに学ぶ
・「再生できる動物と再生できない動物の違いは何か」=先っぽがつくれるか
・「勉強する子と勉強しない子の境は何か」=色々な業種のプロになるためにというモチベーション

・人間はかさぶたによって生命の維持はしやすくなったけれど、その代償として再生能力を失った

鵜飼哲 〈若さの歴史〉を考える
・名前と名字:必然的な分裂
・「若い人同士が互いに教育しあう」ことから引き出されるポテンシャル
・つながるために「外側」に表現する、関心を持つ、「聞く訓練」と「読む訓練」

西谷修 私たちはどこにいるのか
・「自分とは何か」ではなく、「自分はどこにいるのか」
・科学=特定の対象、哲学=対象を限定しない
・考える力を磨く=哲学
・グローバル化の why 。世界の西洋化 例:西暦

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生き方論
感想投稿日 : 2021年10月3日
読了日 : 2022年3月7日
本棚登録日 : 2021年9月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする