憲法が変わるかもしれない社会

  • 文藝春秋 (2018年7月26日発売)
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感想 : 8
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 市立図書館から借りて読んでいたのだが,とっても刺激的な内容の本だったので,手元に置いておきたくなって,結局購入してしまった。
 本書は,高橋源一郎氏が所長をしている,明治学院大学国際学部附属研究所が主催した連続セミナー「憲法が変わる(かもしれない)社会」を元に出来た本である。毎回,その道の専門家と言われる人たちに来てもらっているのだが,その解説というか会談というか対話が,とても分かりやすいのだ。
 憲法学者の長谷部恭男氏からは「法の解釈」ということを教えてもらった。法律には全てを書いてあるわけではない。というか,そんな細かなことまで書けない。だからこそ,法律の学者がいて,全体の枠を考えながら「法の解釈」をするのであるということだろう。なるほど,そりゃそうだと思わざるを得ない。「そんなん勝手に解釈するな」とばかり思っていたが,決してそうではないようだ。また,一般市民が憲法について一生懸命考えなくてはいけない社会というのは,不幸な社会なのではないか…とも言ってくれている。共感。
 二人目は,政治思想史の研究家・片山杜秀氏。ここでは,天皇の「大日本帝国憲法」「日本国憲法」での位置づけや,今回の「おことば」の解釈などについても言及されていて,目からウロコのお話もたくさんあった。
 長谷部氏から「天才です」と言われている石川健治氏も憲法学者。96条から改憲しようとする安倍政権に対して,「96条改正は「ゲームのルール」を破壊する下剋上」と疑問を投げかける。石川はこの条文の改正は,法学的に見れば「革命」であるという。これまでの枠組みを大きく変えるのだから「革命」なのだ。そもそも3分の2条項というのは,ある時期の政治的多数で変えられないものにしてあるからこそ,わたしたちは安心して任せておけるのだ。憲法,立憲というものをじっくり考える機会となった。
 あとの二人は,森達也氏と国谷裕子氏,
 森達也氏には,オウムをおったドキュメンタリー映画『A』『A2』,それに麻原の裁判をおった著作『A3』などが,わたしの本棚にある。以前から,気になっている作家の一人である。期待に漏れずとても刺激的な話をしてくれた。ノルウェーの刑務所の様子や,犯罪者に対する対応の仕方にとてもビックリ。一度罪を犯した人を徹底的に批難し社会から抹殺しようとする日本社会との違いに愕然とした。
 国谷裕子氏は,NHKの『クローズアップ現代』のキャスターを23年間も務めた人物。この番組が政治的な圧力で幕引きになり,国谷裕子氏が降板させられたのは有名な話。時の為政者がマスコミにも圧力をかけてくる時代。いったいこの国はどこに向かうのだ。ネットでは,意見の合う人同士がフォロワーし合い「一人じゃない」と安心感を得ると共に,反対意見を持つ人たちに対しては罵り合うだけの世界を作り上げている現状。新聞や本を読まなくなり,立ち位置の違う人の意見や,違う角度から見た人の意見などを読んで考えるということをしなくなった若者たち。一方で,ネットを通じて新しい形のデモを立ち上げ「原発再稼働阻止」を訴えたのも若者たちであった。
 最後に,原武史氏との対談も収められている。『昭和天皇』という著書もある原氏の天皇論もおもしろい。今回の「おことば」にも,片山氏とは違った意見を持っているという。

 2017年11月から12月にかけて行われた公開セミナーはいずれの日も主催者の想定を超える聴衆が集まったそうだ。それだけ,憲法について考えざるを得なくなっている人が多い=不幸な社会になってきたのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会問題一般
感想投稿日 : 2019年5月27日
読了日 : 2019年5月24日
本棚登録日 : 2019年5月24日

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