この国はどこで間違えたのか ~沖縄と福島から見えた日本~

  • 徳間書店 (2012年11月21日発売)
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沖縄と福島を通して日本を考えるインタビュー集。インタビュアーは沖縄タイムス記者の渡辺豪氏。名うての論客8人のインタビューしています。
そのインタビュー相手がとにかく豪華で、ネットで見つけて即購入しました。内田樹さん、辺見庸さんは著作のほとんどを持つほどのファン。ほかにも佐野眞一さん、小熊英二さん、佐藤栄佐久さんら個性的な論客ばかりがそろいました。
いずれも沖縄と福島の現状から日本の問題点を炙り出して夢中で読みましたが、個人的には、実は本書で初めて知った福島大教授の清水修二さんのインタビューが大変興味深かったです。
原発立地自治体に国が交付する「電源3法交付金制度」は原発事故で広く知られるようになりましたが、その目的に「地域振興」が掲げられるようになったのは、実は90年代に入ってからだそうです。それから露骨な利益誘導、政策誘導が始まります。
07年に成立した「米軍再編交付金」もまったく同じ仕組みで、実にグロテスクに感じました。
原発も基地も、実は地域格差を前提にしています。原発や基地がないと、その地域の経済が立ち行かなくなる。清水さんは「地域格差が是正されると、そういうものを推進したり、稼働したりできなくなるという意味では、『原発や基地が地域格差を是正する』という国の言い分は論理矛盾だと、ずっと前から思っています」と主張しています。
千葉大教授の広井良典さんは、現状の問題点を明示するところからさらに進めて、追求すべき未来の姿にも言及しています。
キーワードは「定常型社会」。時間軸を尺度に経済成長すれば豊かになるという信仰を捨て、地域に根差した空間軸で豊かさを捉えようという考え方です。
訳知り顔の大人たちは「青臭い」というかもしれません。しかし、これまで、こうした訳知り顔の大人たちの代表のような人たちが主導してきた原発が今回こういう形で破滅的な事故を起こしました。
本書でも登場している内田樹さんは高橋源一郎さんとの対談で、原発推進派を「悪者」としたうえで、「悪者だから賢いはずだ、だから任せておいて大丈夫だという意識があった。ところが今回(原発事故で)はっきりしたのは、彼らは賢くはなかった、任せておけない」と語っています。
本書を読み、私たちも原発や基地の問題を人任せにせず、主体的に考えていくべきだろうと思いました。
それにしても本書に登場する論客たちの思想の打点の高さと言ったらないですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年3月20日
読了日 : 2013年3月20日
本棚登録日 : 2013年3月20日

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