イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003318515

感想・レビュー・書評

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  • 知的好奇心を満たすとてもおもしろい本。
    イスラーム文化の精神性、多重性、信仰だけに留まらず、社会規範としての役割など、までもわかりやすく説明されている。手元に置き、線を引いて読み返す。

  • イスラム全体を宗教・法・分派(スンニ派・シーア派)の観点で俯瞰して整理した本。多数のスンニ派に対し、イランのシーア派は密教的な立ち位置など全体感がよく分かります。1981年に書かれたとは思えないのです。

    続きはこちら↓
    https://flying-bookjunkie.blogspot.jp/2018/05/blog-post_22.html

  • スンナ派、シーア派、スーフィズムの思想的な特徴が、『コーラン』の解釈の仕方という形で、実にうまく整理されている。

  • 1981年に3回にわたって行われた講義を書籍化。メッカ、メディナそれぞれの時代の成立の歴史、メディナ期以降のイスラーム法成立と政治運営の関係、外面的な方向性を持つスンニ派と内面的な方向性を持つシーア派の比較、さらには自己を否定するがゆえに「我=神」の境地となるスーフィズムまで。再読しなくては。

  • イスラム研究の碩学による講演録(81年の講演録なので、岩波文庫というより岩波新書か岩波現代文庫のほうが向いてそう)。
    アラブをイスラム的たらしめている要素を、宗教、法と倫理、内面への道という3つの視点から解説している。表層的な制度や習慣ではないその背後にある思想やパターンが立体的に描かれていて、とても面白く読めた。著者独特の偏りがあるようなので鵜呑みは禁物っぽいが、ここまで切れ味のよいイスラム関係の本はなかなかないんじゃないか。

    しかし、この井筒俊彦って人、Wikipedia読む限り天才どころの話じゃないな。

  • イスラム教を理解する入門書として最高。非常にわかりやすい。他の有名宗教との違い、コーランのメッカ期とメディナ期の特徴、スンニー派のシャリーアと共同体思想、それに反するシーア派のハキーカの概念、そしてスーフィズムの神秘主義について、丁寧に解説している。中近東の歴史や現在も起きている国・権力者・民族の紛争を理解するにおいて、イスラムを避けて通る事は不可能であると改めて実感した。

  • 美しい日本語の使い方を学ぶ

  • 1991年(底本1981年)刊。著者は慶応義塾大学名誉教授(元イラン王立研究所教授)。

     タリバーン、オスマン・トルコ、ムハンマド、現代イラン(イラン革命)、サダム・フセインとバース党、石油とメジャー、イラ・イラ戦争や湾岸・イラク戦争、そしてイスラミック・ステート。
     かように、日本で刊行されるイスラム関連書でもテーマは多岐にわたるが、その骨とも言うべきはイスラム教だ。
     一方で、その教義や解釈、歴史的過程や社会的影響は実は地域と時代に応じて多義的であるが、報道等ではステロタイプ的な視座が解消されない。

     本書はイスラムの多義性を前提とした上で、イスラムに一本の串を指すかの如き解読指針を付与していく。
     しかも、絶妙な包丁捌きで行なう解説が簡明かつ秀逸。まず、
    ① イスラム社会の脳とも神経系とも言えるイスラム教に触れた後、
    ② 社会での骨格とも筋肉系ともいえるイスラム法と倫理にメスを入れ、
    さらに
    ③ 外面を素描した②と対極の内面・精神面に考究の筆が及ぶ。

     本書を初めに読むのもよし、幾つかイスラム関連書を読破した後に幹を入れるべく読破するも良し。何とも使い勝手の良い良書である。


    備忘録。
    ① イスラム法は神による命令・禁止規範。が、規範としてコーランは不明確。ゆえに禁止規範の内容を論理的に確定すべく、西欧的三段論法とは異質の論理性=命令法に関する文理解釈・論理解釈・勿論解釈などの考究が精緻を極める。
    ② メッカ(前半)とメディナ期(後半)でコーランの立ち位置が大きく違う。これが後世イスラム教義の違いに関わる。
    ③ 神の一元的・絶対的価値の尊重
    →⑴ 神の御手が全てを差配し、原因・結果のような因果性を否定。
     ⑵ 神の前の平等の強調と、神の絶対性(一方的権利・命令主体)と人間の無力さ(一方的義務主体)。

  • 今年から井筒先生のご著書も読まないとと思っています。まずは、入門編から。講演録ではありますが、イスラームの根底にあるものを、宗教、法と倫理、内面への道(神秘主義)の三つに分けて論じる本格的なイスラーム文化の概説です。

  • イスラーム文化の根底的精神を掘り下げて解説。

    出版年は古いが、古さを感じさせない普遍性を持つ。
    現代のイスラーム情勢を考える上でも必読と言える。

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著者プロフィール

1914年、東京都生まれ。1949年、慶應義塾大学文学部で講義「言語学概論」を開始、他にもギリシャ語、ギリシャ哲学、ロシア文学などの授業を担当した。『アラビア思想史』『神秘哲学』や『コーラン』の翻訳、英文処女著作Language and Magic などを発表。
 1959年から海外に拠点を移しマギル大学やイラン王立哲学アカデミーで研究に従事、エラノス会議などで精力的に講演活動も行った。この時期は英文で研究書の執筆に専念し、God and Man in the Koran, The Concept of Belief in Islamic Theology, Sufism and Taoism などを刊行。
 1979年、日本に帰国してからは、日本語による著作や論文の執筆に勤しみ、『イスラーム文化』『意識と本質』などの代表作を発表した。93年、死去。『井筒俊彦全集』(全12巻、別巻1、2013年-2016年)。

「2019年 『スーフィズムと老荘思想 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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