歴史とは何か (岩波新書 青版 447)

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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004130017

感想・レビュー・書評

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  • 歴史関連の書籍を読むことが多い自分にとって、改めて歴史とは何かを考えるべく購入。
    本書は欧米で歴史を学ぶ者にとって必読書と言われているほどの名著であることからいつか読んでみたいと思っていた。
    また、巷には特定の人物や歴史的トピックを扱った書籍が多いが、歴史を単なる“点”の事実で理解することよりも、その根底に流れる歴史哲学的アプローチで歴史を眺めてみることによって、視野が広がるかもしれないという期待感もあった。

    筆者のE.H.カーは純粋な歴史学者ではなく、元々イギリス外務省で勤務していた実務家であるが、そうであるが故に「現代を理解するために歴史をみる」という姿勢が終始一貫している。
    そんな著者が本書の中で「歴史は、現在と過去との対話である。」と繰り返し述べている。

    少なくとも日本の学校教育において歴史を学ぶことは、教科書に書かれている「過去に事実であったであろう事柄」を時系列に覚えていくことであり、その事柄についての因果関係などを考えたり議論したりすることは皆無である。
    自分も例外なく社会科の教師が板書する事項をひたすらノートに書き写した経験しかなく、大学受験においてさえ暗記の域を出ることはなかった。
    しかも日本の歴史教育の現場では、多くの場合において縄文時代から明治期の20世紀初頭までに多くの時間を割き、現代を知る上で大事な大正期以降の現代史には時間的制約のためにほとんどが割愛されてしまうという現実があり、日本で歴史を学ぶことと現代を知ることとの間には大きな断絶があると言わざるを得ない。

    これに対し、著者は実務家らしく「歴史というものは現在の目を通して、現在の問題に照らして過去を見るところに成り立つものである。」という見解を示す。
    そのためには現在の問題の因果関係を探らなくてはならないが、まさに事実であるとされていることの原因を探求し、様々な原因と思われる事柄の相関関係をも考慮することこそが歴史を理解することだと述べる。
    このアプローチは斬新かつ日本国内の歴史に対する認識や歴史教育を考え直させるきっかけとなり得るのではないだろうか。

    また、興味深かったのは3章において「歴史は科学である」と述べている点である。
    大学の教養課程においては、歴史は人文科学分野とされてはいるが、純粋に歴史は科学であると認識している者はほとんどいないというのが実情であろう。
    しかしながら、歴史を「事実・事象の因果関係に対し、様々な観点から仮説を設定して検証し一般化していく」というアプローチで考えていくならば、自然科学で行われているアプローチと何ら変わりないというのが筆者の主張するところである。
    自分も含め、とかく科学というと行き着く先は何らかの「法則」を導き出すことだと考えがちであるが、筆者も述べているように、それは古典科学の世界観であり、現代科学においては法則を導き出すことはゴールではない。

    そう考えると、歴史というものは動かぬ事実が過去から連なっているだけの静的なものでなく、時代や歴史家の解釈などによってダイナミックに変動する動的なものなのだと気付く。
    昨今、近隣諸国との歴史認識問題がメディアを騒がせているが、事実だけに着目するから諸外国と摩擦が生じるのだと改めて感じる。
    歴史的事実は唯一絶対なものではなく、各国・各時代の歴史家の解釈によって異なるということを前提とした上で相互協調的に因果関係を探っていき、そうすることで新たな歴史認識が生まれ、それが結果的に社会的進歩に繋がるのではないだろうか。
    そのような歴史観を得られるだけでも、本書は一読に値すると考える。

    出版が約半世紀前なためか、訳者の清水幾太郎氏の表現が少々文語的で若干現代人には読み難いのではという想いから評価点を4とさせていただいたが、大学時代に読んでおけば良かったと思えた一冊であった。

  • 歴史の見方、について視点を提示している。なるほどと思ったり、よくわからなかったり。
    歴史を研究している人向けであるが、歴史上の事象や人物を引き合いに出している部分も多くあり、またそれについての説明はほとんどないので、前提知識が必要になっている。

  • 2019年10月20日に紹介されました!

  • 歴史観と言う言葉がいろいろ言われた時期に自分なりの答えを見つけるために購入。

  • 極端に傾かない、穏当な、中庸な結論を紡ぎ続ける。これが教養であり、健全な懐疑主義であろう。

    とりわけ偉人と歴史の関係、科学なかんずく物理学と歴史学のアナロジー、善悪の判断についても歴史的という議論は興味深い。

  • 原書名:WHAT IS HISTORY?(Carr,E.H.)
    歴史家と事実◆社会と個人◆歴史と科学と道徳◆歴史における因果関係◆進歩としての歴史◆広がる地平線

    著者:E・H・カー(1892-1982、イギリス)[ケンブリッジ大学]歴史学者・政治学者・外交官
    訳者:清水幾多郎(1907-1988)〈社会学〉[東京大学文学部]

  • 読むのに時間がかかった。
    読み手の力量不足なのかね。

    内容は、まあ、漠然と思ってる様な「当たり前のこと」への裏書きって感じかな。
    整理はされたけど、特に目新しい概念ってのは無かった様に思う。

    あるいは、理解できなかっただけかもなw

  • 背景知識の無い私には後半の元ネタを理解していないと理解し辛いところがほぼ分からなかったが、この本で最も言いたいであろう前半は平易だし然もありなんといったところ。
    というかその範囲についてはほぼググっただけで出てくる。
    読むの苦労してコストかけすぎた感がちょと悔しい。

  • 歴史
    哲学

  • 難しかった。半分も理解できていない気がする。でも、面白かった。
    その中でも理解できた事といえば、『歴史とは現在と過去の対話である』という言葉には自分の中にスッと入り、よく馴染む言葉だった。
    この言葉で自分が思い付いたのは歴史の授業で学んだ事が年が進む毎に新たな解釈が現れる事だ。
    もしかするとこの思い付きは間違っているかもしれないが、これで納得した。
    この本は少し時間を経てからもう一度読む必要がある。

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