ポストコロニアリズム (岩波新書 新赤版 928)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309284

感想・レビュー・書評

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  • ポストコロニアリズムとはなにかを、わかりやすく解説している入門書です。

    まずは、コロンブスにはじまる植民地支配がとりあげられています。そこでは、自分たちとは異なる文化を生きる他者を一定のイメージによって囲い込んできたことが、具体的に解説されています。

    つづいて著者は、ファノン、サイード、スピヴァクらの仕事をコンパクトに紹介し、最後にアイヌ、沖縄、いわゆる従軍慰安婦の問題をとりあげ、現代の日本におけるポストコロニアリズムの観点からの問題提起をおこなっています。

    ポストコロニアリズムの議論は、本書で紹介されているスピヴァクの学生に対することばが示すように、講壇で語られるだけの思想ではなく、現代社会のアクチュアルな問題に密接に結びついていることを見落としてはならないように思います。しかしそれだけに、ポストコロニアリズムの考え方を入門書という枠組みのなかで紹介することは、困難な仕事であるようにも思います。本書は比較的平明なことばで書かれた入門書ではありますが、提起されている問題を共有できない読者にとっては、議論が上滑りしているという印象をいだかせてしまうのではないかという気もします。

  • 戦争、暴力のいろいろな形が窺われ、契機となる書だ。

  • [ 内容 ]
    植民地主義のすさまじい暴力にさらされてきた人々の視点から西欧近代の歴史をとらえかえし、現在に及ぶその影響について批判的に考察する思想、ポストコロニアリズム。
    ファノン、サイード、スピヴァクの議論を丹念に紹介しながら、“日本”という場で「植民地主義以後」の課題に向き合うことの意味を考える、最良の入門書。

    [ 目次 ]
    第1章 一四九二年、コロニアルな夜明け
    第2章 「食人種」とは誰のことか―カニバリズムの系譜
    第3章 植民地主義からの脱却―フランツ・ファノンとアルジェリア
    第4章 「西洋」と「東洋」―エドワード・サイードとパレスチナ
    第5章 階級・女性・サバルタン―ガヤトリ・スピヴァクとベンガル
    第6章 「日本」にとってポストコロニアリズムとは何か

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    [ 参考となる書評 ]

  • フランツ・ファノン、エドワード・サイード、ガヤトリ・スピヴァクの三人を軸に、ポストコロニアリズムの思想を概説した新書。現代の「植民地」状況について知る入門書として適当だが、カルチュラル・スタディーズゆえのイデオロギー的主張の強さには賛否があり得る。

  • ポストコロニアリズムを「植民地主義以降」として理解しながら、一方で「以降」とは「過去の省察からなされる現在の結果としてあるのだから、ポストコロニアリズムも過去と現在と未来という三つの視座との連関において考える必要がある」(はじめに、p?)と位置づける。その上で、「今はまだ他者の存在に対する傍観者でしかない私が、彼ら彼女らと同じ人間として、友人として出会うために何が必要か?」(p?)すなわち「精神的脱植民地化のため・・・―<他者>に友として出会うため」(p?)と本書の目的を据えている。

    1・2章では、コロンブス以来、いかに西洋がアメリカスで<他者>を創出してきたかを述べ、2〜5章ではファノン・サイード・スピヴァクの理論を紹介する。僕は3人の代表的なポストコロニズム論についてまったく不勉強なので、それぞれの理論の要約がこれでいいのかは全然わからないけれど、難解と評判のスピヴァクをかなりわかりやすくまとめてくれているのは、理解の助けになった。

    たとえば、本書で紹介されているスピヴァクの論をさらにまとめた『スピヴァク読本』によると、僕たちがたとえば日本で学ぶということは、「性や人種、社会的地位などに関するさまざまな偏見や差別をも無意識のうちに学んでしまっている」「しかしそれが学んだものである限り、なぜ自分がそのような偏見を育んできたのかの歴史や状況をふたたび学びなおすことで、捨て去ることもできる」(p158)。こういう視点は、僕たちが勉強するときに非常に重要な視点だと思う。ただ、これはプラトン以来の一般的な懐疑主義の焼き直しのような気も、しないではないけれど・・・。

    しかし、ポストコロニアニズムの概説を終え、それを日本に適用する6章から急激にこの本の魅力は失われていくように感じた。それはなぜならば、西洋で育まれたポストコロニアニズムの図式を、日本にそのまま適用してしまっているからではないか。「アイヌ自身が歴史の主人公として立ち現れる」ためには、本書によって図式化されたポストコロニアニズムによる「支配者」と「被支配者」の構図ではなく、まさにアイヌの歴史そのものから、彼らと彼ら以外<他者>の関係を構築していく作業が求められるべきなのではないだろうか。

  • 植民地主義の前史から書いてある点が嬉しい。ファノン、サイード、スピヴァックを取り上げて論じた各章のうち、ファノンは面白く読めたし、スピヴァックも納得だけど、サイードは「?」。6章の「日本」の章は、別途じっくり書いてもらった方が良かった気がする。

  • 2005年。

  • 夏休みの宿題でレポート提出。
    嫌々読んだんだけど、なかなか分かりやすく結構良いかも!笑
    けど、もっと背景を知っている方がやっぱり良いものだよね!

  • ポストコロニアリズム・植民地主義を多方面から捕えた一冊。
    新書版で読みやすい分量ではあったけれど、読みにくさで☆−1。語句の説明が少ないのと、湾曲な言い回しに感じる点が多かったのとで。

著者プロフィール

1955年、東京生まれ。東京大学文学部英文科卒業後、ヨーク大学で博士号取得。現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。専門はイギリス文学、カルチュラル・スタディーズ。著書に『ポストコロニアリズム』(岩波新書、2005年)、『ディズニー・プリンセスのゆくえ』(ナカニシヤ出版、2016年)、『深読みミュージカル』(青土社、新装版2019年)など、訳書にヒューム『征服の修辞学』(共訳、法政大学出版局、1995年)、バーバ『文化の場所』(共訳、法政大学出版局、新装版2012年)などがある。

「2020年 『帝国の島々 漂着者、食人種、征服幻想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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