夢のカルテ (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041000786

感想・レビュー・書評

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  •  主人公・来生夢衣は心理カウンセラーですが、特殊能力を持っています。
     何と、他人の夢の中に入っていけるのであります!
     クライエントを催眠誘導で眠らせた後、自己催眠で自分も眠り、クライエントの夢の中に入って心理的問題の原因を探ることができるのです。
     こんなことが可能になれば、カウンセリングが効率的に進みますね。

      
     本書には、4つの事件が収録されています。
     第一話で夢衣は、麻生健介刑事のカウンセリングを行います。
     そこで親密になった麻生刑事とのつながりから、3つの事件に巻き込まれていくのであります。
     物語は、夢衣が出会う4つの事件を中心に、夢衣と麻生刑事との関係・夢衣や麻生刑事の過去の問題などが縦糸となって紡がれています。
     事件の真相も面白いのですが、クライエントが見る夢を解釈していく過程が面白いです。
     支離滅裂で意味の分からない夢の断片の意味が分かっていくのはカタルシスです。
     実際のカウンセリングや夢分析もこんな風に行われているのでしょうか。

      
     第4話は、夢衣の記憶にない父親の過去や、麻生刑事の忘れていた過去の問題に夢衣と麻生刑事の関係の進展など、クライマックスにふさわしい急展開でした。
     これで、全て解決されたのでしょうか?
     まだ何か残っているような気がしますが。
     非常に映像向きのテーマであるし、実際に映像的な物語です。
     ドラマ化されなかったのでしょうか?
     今後も続編は出ないのでしょうか?
     タイトルが地味だと思います。
    「ドリームカウンセラー夢衣の事件簿」シリーズ、というのはどうでしょうか?
    (どうせ私の言うことだから、聞き流して下さい。)

     
     第4話では、夢衣の父親は、会社の不正の責任を負わされて逮捕されたことが示唆されます。
     そのことが、第4話で扱う事件と相似形を持っているのです。
     事件に深入りした夢衣が、暴力団の殺し屋チームに捕まって処刑されそうになります。
     物語では当然、間一髪で救助されるのですが、現実の社会では、このような幸運が起こるとは限りません。
     現実の社会では、悪の組織によって善人が人知れず闇に葬られることも多いのでしょうね。
     特に、民主主義体制が崩壊に向かい軍事独裁制に向かいつつある現代日本では、今後そのようなことが増えていくのではないかと、寂しいことをふと思いました。何を読んでも暗い予想に結び付くマイナス思考の私です。


     本書では、大矢博子という方が巻末に解説を書かれています。
     エンタメ系の文庫本の解説というのは、解説というより筆者の身辺雑記やエッセイのようなのも多く、脱力させられることも多いのですが、本書の解説はなかなか読ませました。
     本作品の「解説」が手際よくされた上で、著者・高野和明の他の作品について端的に「解説」されていて、他の作品にも興味を持たされました。
     文庫本の解説はこんな風に書いてほしい、という一つのお手本・型だと思います。
      http://sfclub.seesaa.net/article/411040326.html

  • 高野和明氏の作品はストーリーは違えど、カラダとココロの奥底が震える。文章表現なのか、ストーリー展開なのか。何だろう。この本もココロの底から震えてしまった。波長が合うんだろうな。この人の作品は。

  • 4つのエピソードが盛り込まれた長編、と言って良いのでしょうか。

    それぞれ、分かりやすく捻られた結末があり、カウンセラーと刑事の、出来すぎなほど綺麗な恋愛が描かれています。

  • 夢の世界に入り込める夢衣ゆい
    催眠世界で二人の夢をつなぐポイントを行き来できる能力を使ったカウンセリングで治癒確率をあげる
    恋心は恋愛転移なのか、、、

  • 夢の中に入ることができるカウンセラーのお話。


    自分と向き合うことって難しいなと感じました(o^o^o)ノ

  •  いやあ、高野和明さんは、凄いですねぇ~「ジェノサイド」のようなスケールの大きなハードボイルド小説?から、この「夢のカルテ」のような大人のためのファンタジー小説まで、そのレンジの広さには敬服します。
     中には、人物の描写が薄いなどという評価をする人もいるかもしれませんが、フロイトとユングという精神分析のルーツを羅針盤にして、人を愛するということの意味を抑圧された過去に遡って問う内容になっています。間口が広くて奥が深い物語なので、どなたにも安心して薦められます。

  • 心理療法での転移現象、主に恋愛転移が大きなテーマになっています。催眠療法専門のカウンセラー、夢衣の他人の夢に入り込めるという能力は危険ではありますが、さまざまなクライエントと夢でつながることができるところは素晴らしかったです。「幽霊人命救助隊」を思わせる、人の心のやさしさを感じさせてくれる作品でした。

  • ☆☆☆☆

  • 構成がよくできてるなと思いました。
    各章でそれぞれの事件が解決され、全体で夢衣と健介の恋愛が進みます。
    この夢衣と健介の恋愛が解説にもありますが、まあ焦れったい。
    でも夢衣が恋愛転移を懸念し悩むというのもよく理解できて、苦しい気持ちになりました。
    かつて自分も悩んだ自分の心のこととかをしみじみと思い出して、自分の心が1番わからないよねなんて思ったり。

    最終章で夢衣と健介の視点が交互に進んでいき、緊迫した構成。
    お互いがお互いの心理状態を推し量り、ふたりの優しさに心がほんのりと温かくなります。
    事件と絡み合い、緊迫した状況でそれぞれの壁を乗り越え、またふたりの心が寄り添うさまは胸が熱くなりました。

    ただ、恋愛要素はわりと良く言えば爽やか、悪く言えば深みがないので物足りないと感じるのも確か。
    ミステリ要素はしっかりしています。

    解説もわかりやすくよかったです。

  • 他人の夢に入れるという特別な能力…
    来生夢衣。
    ミステリーと恋愛のバランスがとれたとても興味深い作品だった。この作品とは正反対の内容いう別作品「ジェノサイド」も気になる。

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著者プロフィール

1964年生まれ。2001年に『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。著書に『幽霊人命救助隊』、『夢のカルテ』(阪上仁志との共著)など。2011年、『ジェノサイド』で第2回山田風太郎賞を受賞。自著のドラマ化『6時間後に君は死ぬ』では脚本・監督も務めた。

「2012年 『グレイヴディッガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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