颶風の王

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 66
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041029619

感想・レビュー・書評

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  • 静かに、沁みる。そんな小説の醍醐味を噛みしめている。

    著者は現役の羊飼い。北海道の自然の中で暮らす経験を(恐らく)存分に活かした本作は、明治から平成まで、人間の側は六代に及ぶ一族と、その一族を支えた馬の物語だ。‬

    言い方は悪いけど、衝撃的な冒頭を経てのちは、一見すごく地味な物語だ。その中に幾人もの人生と成長とを、デビュー作とは思えないほど読ませる筆力で描く。厳しい時代、厳しい自然、厳しい環境の中に、家族の情や信頼、そして孤独を丁寧に映す。

    選び取った孤独。颶風の王の気高さが美しい。‬

  • 「肉弾」を読んで面白かったので、こっちも読んでみましたが、負けず劣らず面白かったですね。どちらかと言えば、こっちの方が好みかな。家族の物語が馬とともに描かれていて、読み応えがありました。

  • 河崎秋子さん、初読みです。「颶風(ぐふう)の王」、2015.7発行、244頁の作品です。70頁まで読んできて、何という重々しさ、私の心にズシリと響きます、著者の筆先が。乱神、オヨバヌ、凱旋の の3章立て。1章(~80頁)まで読んで、とてつもない感動が。馬と人間の物語。哀しくも壮絶で身震いを覚える物語。この先、読み進められるのかという「おそれ」を抱きながら、(性根を据えて)読み進めます。
    河﨑秋子さん、1979年、北海道別海町生まれ、骨太の作家さんの登場です。「颶風の王」(2015.7)、第1章乱神に続いて第2章オヨバヌ、第3章凱旋を読みました。静かで深い感動に包まれています。忘れられない一冊になると思います。東北福島から北海道に渡った人間と馬、北海道根室(帯広)における馬と人間との何代にもわたる関わりを見事に描いた大作だと思います!

  • 内容紹介には「東北と北海道を舞台に、馬とかかわる数奇な運命を持つ家族の、明治から平成まで6世代の歩みを描いた感動巨編。」とあります。確かに間違いではないのですが。。。。
    3章に分かれ、それぞれ1・2代目(ミネと捨造)/4代目(和子)/6代目(ひかり)が描かれます。その間の一族は名前さえ定かでは無く、脇を固める人物も極端に少ない。家族の小説では無く、北国の過酷な自然と生活、そしてそれに関わる馬を中心にした作品です。
    河崎さんは北海道で牧羊をしながら小説を書いている人。牧羊家ならではの動物に対する視点を感じます。ペットに対するようなべたべたした愛情では無く、かといって蔑視や脅威でもなく、動物という存在に一種の尊厳のようなものを感じさせます。そこが、この作品の優れたところなのだと思います。

    ドラマティックなストーリーを強い文体で描いた作品です。次から次に強い文章でたたみ込んで来ます。それは一つの特長でしょう。しかし、悪く言えば行間が無い。作者が全てを押し付けてくる感じがします。もう少し読者の想像に任せるところがあっても良いのではと思います。

  • 北海道に生きる開拓民を描いているから、三浦綾子文学賞はピッタリかも。
    4代にわたる一族の歴史ではあるが、ハイライトシーンだけが詳しく描かれ、他のところは粗筋的にざっくり書かれているため、意外にさくさくと進む。
    昔の作家ならもっとみっちり書いた気もするので、そういう点は現代的かもしれない。
    全体に、なんというか、よく言えば情熱的なのだが、悪く言えば泥臭いというかグロテスクというか。その情熱に感動する人もいれば、泥臭さにうんざりする人もいるだろう。好みの別れる作家だと思う。舞台設定は三浦綾子に似ているが、作風は全く違う。
    個人的には、グロテスク自体は別に苦手でも嫌いでもないのだが、グロテスクを楽しんで書いているのに、それをいい話にしてしまうところは、あまり好きではないな。グロはそもそも悪趣味なのに、その自覚なさそうなところが。
    まあ、勢いはあるから、好きな人にはたまらないかも。映画の「レヴェナント」みたいに、そこまでやれば、もう立派!っていうくらい、この方向性を極めてみたら却って良くなるかも。

  • 北海道を開拓して行った時代からの馬飼いの子孫までの話。北海道の寒さや辛さ、 馬の従順さが鮮やかに感じられる。知らない世界を体験したような、本を読む面白さってこういう事だなと思った。

  • 章の切り方が絶妙でその後を想像させてくれて面白かったです。
    骨太でシンプルな文章が好みでした。

  • 北海道の大きな自然の中。馬と共に生きた家族。
    スケールが大きくて、自然と生きること、馬と生きること、環境の厳しさ、生きることの厳しさ。
    読みやめることが出来ず、ひたすらに読み進んだ。

  • 地も海も空も、人の願いが『オヨバヌ』ところ
    人がここで生き、山海からじきもつ(食物)を得るうえで、致し方のないこと。
    六世代に渡る語り、馬と人との絆、 捨造の奇跡の出生に心を打たれた。
    最後のシーン、孤島に取り残されてもなお、颶風にも臆することなく立ち誇り、
    命尽きるまで生き抜こうとする(アオの子孫)馬の姿が見えたとき、慟哭した。

  • 読んで良かった。
    六代に渡る人と馬との絆のお話です。絆なんて簡単な言葉では表せないかもしれない。
    颶風の王。このタイトル、しびれますね。かっこいい。
    書き出しがものすごく印象的で、書き終わりもすごくて、理想の本を読めた気分です。ほくほく。

  • すごく心に残る一冊だった。少し唐突に感じるところもあったけれど、これから、北海道の森や原の映像を見たり馬を見るたびに、この話を思い出すだろうと思う。カナダの小説家の小説を彷彿とさせた。

  • 新聞の書評欄で読んで、興味を持ち
    iBooksで無料の立ち読みをして
    読みたいなと思って、とうとう読んだという感じ
    明治の世から、平成のいまの時代まで
    血のつながりが物語を動かしていく
    捨造の人生が切なくて苦しかったけど
    力をもらったような気持ちもある
    読んでよかったな、と思う小説でした

  • 冒頭文で心をぐっとつかまれた。
    人と馬の絆。

  • よかった。

  • ひかりと島の馬の短くとも濃い交流に鼻の奥がツンとしたのは花粉症のせいではあるまい。とても良かった。

  • 明治から現代までの親子6代に渡る、人と馬との濃密な歴史の物語。
    雪崩で雪に閉じ込められた女が、一緒に閉じこめられた馬の肉を喰って生き延びた話から、
    わけあって島に飼い馬を残したまま居を変えざるをえなかった男と孫の話、
    その子孫の女子大生が、長年の馬との関係に決着をつける話など、
    私はまったく馬と関り合いのない人生だったけど、登場人物の馬への愛情や親しみがとても伝わってくる話だった。


  • 桜木紫乃のおすすめ

  • 雪崩に閉ざされた空間で馬と命を分けあう描写がゾクゾクした。
    馬を食べ、馬に食べられ、互いを分かち合う。

  • 厳しい自然の中で、馬と血肉を共した 家族の物語。馬と、この家族の関係は 単なる 愛情や感謝に とどまらず、血肉を共にした不可分の繋がりがあり、その関係は 親から子、子から孫へ代々 継がれている

    全体を通して、生きることへの執着を感じる

    子孫を守るように、自分の命を犠牲にして でも 馬を守る。常に 未来目線で、血統を守る馬と 家系を守る人間を リンクさせているように見える

    著者は本職 羊飼い?らしいが、自然や雪崩遭難時の描写が凄い

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著者プロフィール

1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞、14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、15年同作でJRA賞馬事文化賞、19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞を受賞。『土に贖う』で新田次郎賞を受賞。

「2020年 『鳩護』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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