カンガルー日和 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.54
  • (475)
  • (649)
  • (1445)
  • (95)
  • (23)
本棚登録 : 8028
感想 : 621
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061838581

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 不思議な村上ワールド満載の短編集。佐々木マキさんの挿絵が非常にマッチした作品だ。この頃の著者の作風だろうか、奇妙な前提(そしてその世界ではそれは常識である)を感覚的に捉え厳密さを持って語る作品が多い。『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』や『かいつぶり』『図書館奇譚』なんかは好みだが、全体的には及第か。

  • こんな短編書きたい

  • スパゲティを茹で続ける男が出てくるよ、とひとに勧められて読みはじめた短編集。ぜんぶ違ってぜんぶ面白かった。相変わらず捉えどころはないけれど、肩の力を抜いて楽しめた。

  • 2016.10記。

    「君の名は。」は「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」の物語である。
    (ネタバレあり。観たいけど観ていない人はスルーしてください)

    娘に請われるまま「君の名は。」をつごう3回も観てしまった。ネットのレビューのうち感心したのは、三葉が妹と踊る舞踊が「災厄の伝承」なのでは、という指摘。要するに巨大災害で最初の「ご神体」ができて以来、「入れ替わり」は宮水家に代々継承されていた、と。

    この説に従うと、三葉の入れ替わり相手が瀧であることは恋愛とは関係ない、ということになる。しかし、天災が終わり、入れ替わりが不要となったあとでも三葉と瀧は、今や名前すら憶えていない「誰か」と再会する必要を感じている。

    ここでふと思うのは、本作の下敷きとして、村上の短編小説「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」(「カンガルー日和」所収)があるのでは、ということだ。

    少し長いが冒頭の引用(新潮文庫、P.19)。
    「四月のある晴れた朝、原宿の裏通りで僕は100パーセントの女の子とすれ違う。
    たいして綺麗な女の子ではない。素敵な服を着ているわけでもない。髪の後ろの方には寝ぐせがついたままだし、歳だっておそらくもう三十に近いはずだ。しかし五十メートルも先から僕にはちゃんとわかっていた。彼女は僕にとっての100パーセントの女の子なのだ。」
    100パーセントの女の子、つまりは理想の相手。がしかし主人公の「僕」は結局話しかけることができないまま見失う。

    「・・・もちろん今では、その時彼女に向かってどんな風に話しかけるべきであったのか、僕にはちゃんとわかっている」。
    そして、「その科白は『昔々』で始まり、『悲しい話だと思いませんか』で終わる」(P.23)。

    まあ短編のすじを語るというのも野暮なわけだが、つまりは決して忘れたくないはずの相手の記憶もやはり損なわれ、そして二人の再会は・・・という話。

    「君の名は。」で三葉と瀧は二度「かたわれ時(たそがれ時)」に邂逅する。そして、本当の「再会」は朝に訪れる。今度こそ「たそがれ時」でないことはもちろん重要だ。だが、それが「朝」でかつ(私が何か見落としていなければ)季節が春、たぶん4月であることは、私の妄想の中では決して偶然ではない。新海誠監督が村上春樹への敬愛について言及していることももちろん偶然ではない。奥寺先輩の最後のセリフが「ノルウェイの森」なのもこうなると偶然ではない。

    つまりだ。「君の名は。」は、なんの必然もなく出会った相手が「100パーセント」の存在で、でもそれを忘れてしまう、そしてその後に。といういわば「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」のオマージュ的な話なのだった。やれやれ。

  • 「駄目になった王国」を読んで大好きだった先輩のこと思い出した。王国が色あせるのはすごく物哀しいこと、その通りだと思う。

    村上春樹の小説って読んでて安心する。安心して読めるって意味ではない。

  • 18のショートストーリーで構成された一冊です。シンプルなものからオチで黒笑いしてしまうもの等、短いながらも多彩な村上春樹を味わえます。なんと言っても最後に「図書館奇譚」は最も不気味で強烈なインパクトを残して嵐のように去って行きました。逃げ切るまでは誰を信じるべきなのかもわからない。夢か現実か。老人に羊男に謎の美少女、彼等は皆存在したのか。そして私自身は存在するのか。時が止まっていたように感じたのは、長い悪夢を見ていたのかもしれません。それでもまた図書館の前を通ると、置き残してきた靴音が聞こえてくるような気がするのです。

  • 愛すべき意味のない物語

  • 羊男に!また会えた!それがかなり嬉しい。
    短編集も、やっぱりおもしろいなぁ。
    村上春樹の文章の書き方や会話文がとにかく好き。思わずフフッて笑っちゃうくらい可愛いキャラにも会えたりするし。羊男もその中の一人。かわいい。羊男が揚げたドーナツ私も食べたい。
    最初から最後まで読んでいてずっと楽しかったです!素敵!村上春樹!好きが止まらない。

  • 「スパゲッティーの年に」
    一束の悲しみさえもタイマーの知らせる音だけで日常の食卓へ。

    「バート・バカラックはお好き?」

    答えを見い出せずに過ごす事は後悔になるのかな。

    「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」

    切ないの最上級をアナタに。
    とかとか好きでした。


    タイイミングて大切で、どんな素敵な本でも読みたくない時ってのはあって、この本はなんとなく最悪なタイミングでうちの手に渡ってきました笑

    でも力のある小説はやっぱり魅力的で。一気に読めました。しかも村上さんにしては読みやすくて優しい。村上さんあんまり読まないって人も読んだらいいと思います。できたら最悪のタイミングで。

  • 感覚的に楽しめる作品だと思った。村上春樹の本を一冊も読んだことがないときに読んだら、面白さが分からなかったかもしれない。
    思わず声を出して笑ってしまうところがいくつもあった。
    「4月のある晴れた朝に〜」「駄目になった王国」「とんがり焼きの盛衰」「かいつぶり」が特に好き。
    2014/3/17

全621件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

村上春樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×