誘惑者 (講談社文芸文庫)

  • 94人登録
  • 3.82評価
    • (9)
    • (11)
    • (13)
    • (1)
    • (0)
  • 12レビュー
著者 : 高橋たか子
制作 : 山内 由紀人 
  • 講談社 (1995年11月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061963443

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
アゴタ クリスト...
安部 公房
フランツ・カフカ
三島 由紀夫
遠藤 周作
ウラジーミル ナ...
谷崎 潤一郎
倉橋 由美子
有効な右矢印 無効な右矢印

誘惑者 (講談社文芸文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 以前読んだ『人形愛~』が面白かったので長編も読んでみよう、鏡花賞だし、と軽い気持ちで手に取ったけれど予想以上の面白さだった。面白い、という言葉には語弊があるかもしれないけれど、単純に読書体験として、読んでいる間の気持ちの昂ぶりを表す言葉が他にないから。

    二人のクラスメイトの自殺を幇助した女子学生の実際の事件をモチーフにしており、序章ですでに主人公は警察に取り調べられ新聞記事になっている。物語は、友人たちの自殺を見届けた彼女が何を考え、何をしたのか、三原山の火口に飛び込んで自殺した二人の少女が死を選ぶ理由はなんだったのか、を辿っていく。

    彼女たちの言動は、普遍的な思春期の少女的自意識に支えられている反面、当時(昭和20年代)に京大で心理学を専攻している主人公の思考回路は哲学的で形而上学的、ふわふわした現実逃避的な部分と、妙に生々しい現実的な部分のバランスの、不安定さが逆に絶妙のバランスになっていて最後まで飽きない。

    はっとするような表現や比喩が頻繁に出てくる、文章そのものも斬新で美しかった。煙草を吸う女友達の、すぼめた口元を見て「鶏の肛門」を思い浮かべるとか(笑)まあこれは極端な例ですが。

    自身は「生きていたくない」と思いつつ「死にたい」までには至らない主人公・鳥居哲代を、死への誘惑者だという砂川宮子、同じく死への同伴者として哲代を追い込む織田薫、それぞれのキャラクター、関係性も秀逸で、女同士の仲良しグループのこの感じ、わかるわかると世代を問わずに共感できる部分もあると思う。

    悪魔学の権威・松澤龍介は、聞くまでもなくモデルが澁澤龍彦だとわかって笑えたけど、彼を登場させずとも鳥居哲代の虚無感は表現できたのではないかという点では、不要なキャラだったかな。

  • ほとんどのめり込むようにして読んだ。
    「ヒトの明暗と暗部」と言い切ってしまうと少し違う。作中の表現にもあるが、「生の裏側からもうひとつの生がにじみ出て」くる様子を、通り過ぎていくだけのようで実はヒトを形作るファクターになっている事象とともに、濃く深く、鋭く、対比を巧く使って浮かび上がらせている。主人公の性質が、すべてに一役買っているようにも思った。
    ただ考えるのは、なぜ主人公は、より苦しいほうを選択することはしなかったのかということである。

  • 後半の緊張感、怖いもの見たさで読んだ。たまたま矢野澄子さんの小説を読んだばかりだったので、つながって驚く。

  • タイトルに惹かれて購入。著者の高橋たか子は『邪宗門』で知られる高橋和巳の夫人。
    2人の友人の自殺を見送った(?)女学生が主人公。妙にキリスト教的な価値観を感じるなぁと思っていたら、著者は実際に洗礼を受けたらしい。
    読後感が不思議と倉橋由美子と似ている。主人公と自殺した2人の友人との関係が、濃密でありながらドライで、そういうところに倉橋由美子と同じ匂いを感じたのかもしれない。

  • ちっとも生きてなんかいたくない主人公の鳥居哲代、死んでしまいたい砂川宮子、過去に自殺未遂を二回している織田薫。三原山の火口への二人の投身自殺をそれぞれに見届けた主人公の、自問自答や外界への関わり方が描かれている作品。
    無表情、どうだっていいけれども他者の深い部分への関心が止まない、自殺はしないけれど見届けることは難なくできる。織田薫が死ぬ段になっても鳥居哲代は自分ばかりを見つめていたので織田薫の姿を見ることすらしていなかった。自分に似すぎていてぞっとする。きっと私もこんな感じなんだろうなと思う。
    砂川宮子と同じ道をたどることだけを自殺を完遂する唯一の方法だと執着していた織田薫が、最後、砂川宮子より一歩踏み込んだ形で火口に身を投じたのが印象的。
    「火口の中はぱあっと明るい」
    織田薫は火口の中に本当の生があると信じ込み、死に際鳥居哲代に無理にそう言わせる。
    それを背負ってのラスト一文が鳥肌もの。自分は鳥居哲代に似てるなと感じる人はあの一文は現実のものとして、誰かに自分を見透かされているようなものとして感じるのではなかろうかと思ったり。

  • 形而下の会話をしたことないという、若い女学生がそんな観念的な会話ばかりしてたら「死にたがり」も増長するだろう。登場人物達の外的なパーソナリティを潰すことで、内的に潜在する不可知の部分を掘りおこす。内向する意識を、自殺幇助を担う主人公の脳裏に浮かぶ風景として炙りだす。静かに波が押し寄せる真暗な夜の海、掘立小屋と瓦礫が点在する荒れ寂れた焼跡、聳える火山と奈落する火口‥これらの風景が〈もう一人の私〉として浮かび上がる。もはや不可侵のエリアだ。私が私であることの間には測り知れぬ深淵がある。私は飛び越えられない。

  • 自殺幇助の話として知られているが、むしろ自殺願望の女性たちの共依存がテーマになっていて、「私自身、少しも生きたくない」という主人公も潜在的に当事者の一人であり、彼女の自殺幇助はある種の代理自殺と言えるかもしれない。主人公は知らずに友人たちを誘惑しながら彼女らに誘惑されてもいるわけで、最終的に「誘惑者」とは幇助する側ではなく、むしろ自殺する側の謂いになり、後者が「神」の側に立つ人間であることを主人公が気づいた時点でその構図は決定的になる。当時の知的エリートたちの歯の浮くような哲学議論や「悪魔学」というチープな小道具には正直うんざりさせられるが、封鎖されたキャンパス、焼け野原の東京、三原山の火口というロケーションと旅の描写が登場人物たちの心の荒涼を暗く彩っていて、怪しい魅力を放つ。

  • 心理学を学び、小説を読んだ。誘惑者的な人間はこれからも小説を読み、人間を誘惑する。面白い小説です。自殺は――他殺。

  • あんまり元気がない時に読んでしまったのでちょっと引き摺られた。
    でもなんか好きだ

  • 先日行った三原山つながりということで読んでみた。個人的にはかなり怖い話であった…

全12件中 1 - 10件を表示

誘惑者 (講談社文芸文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

誘惑者 (講談社文芸文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

誘惑者 (講談社文芸文庫)の単行本

誘惑者 (講談社文芸文庫)の単行本

ツイートする