赤い指

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062135269

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず暗い!そして重い!!

    いつも通りのヘビーな方の東野ワールド全開でした。

    今回は痴呆の母とひきこもりの息子を抱える、家庭を顧みない男が息子の殺人を隠蔽する話。
    いわゆる加害者側。
    プラス、追う刑事側も複雑な家庭事情+癌で入院中の伯父有り。
    だから多分、サブテーマは高齢化社会なんだと思う。
    事実、オチは「ばあさん実はぼけてませんでしたー」だし。それはそれで、かなーり切ないオチだったんだけど(ばあさん的に)。

    それでも結構話に穴があったと思う。
    殺人の隠蔽してるんだから、もう少し神経尖らせてもいいんじゃないかってのが結構あったし、ばあさんもばあさんで、可哀相っちゃ可哀相だけど、そういう風に息子を育てたのは他ならぬ自分じゃね・・・?なーんて気持ちもあるわけ。

    それ以上に読んでいてムキーってなったのが、東野っ!!
    『手紙』で加害者家族への社会的制裁のむごさを書いておきながら、『さまよう刃』で被害者家族の苦悩を書いたでしょ。で、今回また加害者家族の苦悩。しかも未成年犯罪。
    物語を超えて語るのはタブーかもしれないけど、こうも立場をコロコロ変えて、しかも問題提議をされると、「お前はどっちなんじゃーー!!」って気になって、イライラして、話も否定的に、目を細くしながら斜めに読んじゃう。

    本、いっぱい読みたいくらい好きだけど、知識が増えるほど先入観も増えるね。あー・・・

  • 読後の最初の感想
    「私は常に人間を好きであろう」
    でした

    一躍時の人「東野圭吾」の一冊

    家族がテーマのミステリー
    ミステリーとしてではなくて、登場人物の人間性にとても苛々させられました
    他責でしかいられい人間
    思い通りにいかないことを力でねじ伏せようとする人間
    思い通りにいかなかったことを無関心という形で処理する人間
    読んでいて、そういう人間性の一端が自分にもあるからイラつくのだろうなと

    どんでん返しの部分は、私としてはちょっとほっとしました。
    (結論としてかな)
    すべてが報われないよりは、現実的にありえないとしても
    少しでも1mmでも報われる要素が入っているとなんとなくほっとできます
    この小説はそんな一冊

    この人の小説は書いている時代の社会が反映されるので、
    自分だったら・・・ってどうしても考えてしまうな
    (今回は、介護(しかも認知症の人間)や、ひきこもり(というより家族崩壊?)
    私が育った家ではそういう問題はなかったけど、
    自分がこれから作り上げていく家族では、自分次第で起こりうる問題なんだろうなと
    恐いけど、やっぱり私は「人間を好き」でありたいとおもう

  • ゲームばかりしている中三の子どもが女の子を殺してしまう。親としてどうするするというのがテーマだ。
    「あなたの話かもしれない 私の話だったかもしれない 違っていたら幸福だ」と東野さんは書いているが、ヒトゴトではない設定で身動きできない状態で読み進んだ。

    最初は自首を考えるが妻の説得で隠蔽に走る。自首して、その後の茨の道に耐えられるかと考えると隠蔽する気持ちも分らなくはない。ありえる話だ。

    倒叙ものは犯人に感情移入することからハラハラするというタイプのものだが自分もとりうると考えると身につまされる。

    そこに加賀恭一郎が登場するのでもう勝負あったのだが、ちょっとしたことで犯人に迫っていく件はさすがだ。芝生など証拠品が多いのは読めるのだが、ダンボールに入れてるということは死体を運んだのは車ではないのではといったことから近くで車はなく自転車をもっている。といったことから推理し、特定していく。

    それだけで倒叙もの要件は満たしているのだが、
    さらに
    「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない」とか「刑事の仕事は、真相を解明すればいいというものではない。いつ、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ。」などとより高い解決に向けていくあたりが斬新なとこだ。

    また介護問題、教育問題と社会ミステリの趣もある。

    不足があるとすれば全体として軽い。単純である。また奥さんと子どもを悪者として切り捨てている。宮部みゆきだと二人の心の中にも入っていくことだろう。もっともそうすると小説全体のバランスを崩すので中篇くらいのボリュームにまとめたということだとは思う。

  • 最後まで飽きさせず、読者を引き込む力は、やはりすごいと思う。

    読んで気付いた。加賀シリーズでした。

    TV版の新参者以降、完全に阿部寛が加賀のイメージにハマってる。

    今作は、とある殺人事件の、加害者側が描かれています。

    事件を起こしてしまった家族の苦しみってよりも、身勝手さかな。

    そこに、加賀が灸をすえる感じですね。

    あ、そうそう、それと今作では、加賀の身内が登場します。

    本編よりも、そっちの方が泣けたって思ったのは私だけでしょうか。

    肝心のトリックはイマイチだったので、これくらい。

  • 3年前に読んで、再読しました。
    被害者に、加害者に、当事者に自分に置き換えてみたとき、
    いずれの立場でも耐え難い苦しみを想像でき、震えが起こります。

    この作品は、真っ当な人間とそうでない人間との差が明らかで、
    前原親子の非道徳的な振る舞いに悪態をつきたくなることもしばしばありました。
    最後、直巳の「親が悪いんだ」というセリフは、彼自身の無責任を表しているかもしれませんが、それとともに親の教育・姿勢をも表していたものと思われます。
    このような大人にはなりたくない、という反面教師にしたいものです。

  • 王道のミステリですね。さすがです。
    妻に言いなりの夫。姑、夫をないがしろにし息子のご機嫌取りに必死な女。
    引きこもりで弱虫の息子。
    息子の犯した殺人事件をなんとか隠ぺいしようと翻弄する両親のおろかさ、すべてを痴呆の母におしつけようとする息子夫婦のおろかさ、自分ではなにひとつできないくせに我が儘で尻拭いだけは両親にさせようとする息子のおろかさ…。
    1つの家族の希薄な絆が生み出した罪を、もう1つの強い絆が暴いて行く哀しい物語。

  • どうしようもない家族が巻き起こした殺人事件。最近の世相を見ると、ありえないとは言えないところ。。最後の最後に救われたような、そうでないような。

  • 表紙が真っ赤で怖くて、手元にあるもののずっと読まずにいたけど、少し読み始めるつもりで開いたら、一気読みしてしまいました。


    この親してこの子あり…ということですね。
    親は自分のことを棚に上げて、子供のことをあーだこーだ…第三者の読み手からすれば、「まんま貴方のことですし!」と思わずにいられなかったです。

    話の展開が良くて、先が読めつつも、十分楽しめました。

    この話からなにか学んだかなー。
    学んだことは特にないかな…
    でも、グイグイ読んだってことは、楽しんだということですね〜

    子育てって難しいね。

  • 東野さんは読みやすい。
    そこまでやるか?という気もするけど、人間その人の立場にならないとわからないことも多い。
    誠実でありたい。

  • 父親はまともかと思ってたら、ちゃんと終わってた。実の母親に濡れ衣を着せるなんてまともじゃない。妻に対して強く言い返せないとか、息子に理由も聞かずに怒鳴るとかそういうことをしていた結果だと思う。そして今回も臭いものに蓋をしただけ。原因を突き止めない限りまた繰り返す。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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