喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 330
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062166362

感想・レビュー・書評

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  • 愛用していたPCが壊れたので暇つぶしに読み始めて一気に読み終えた。
    自伝的小説らしいので主人公=森博嗣だとして、喜嶋先生って実在するのかな…。
    自分は感情移入する方なので、本書ラストにある主人公が生活に揉まれ大学の雑事に追われて研究が碌に進まなくなったことを独白(?)するシーンで思わず涙がこぼれそうになってしまった…。
    願わくば喜嶋先生はエキセントリックにならずVシリーズの瀬在丸紅子のように王道を突き進んで欲しい。心の底からそう願わずにはいられない。

    なんとなくバッドエンドのように見えるけれど、喜嶋先生は研究に没頭できる道を選んだのだからこれはハッピーエンドもしくはグッドエンドだと思いたい。
    amazonのあらすじのところにこの本を読んだら勉強したくなるとかが書かれていたけど、あれ本当だねw

  • 橋場君が研究の奥深さを知り、どんどんのめり込んでいく様を見ていると、何だか無性に勉強をしたくなってきます。知識欲が溢れてくるというか。

    久々に森さんの小説を読みましたが、文章のテンポや会話のリズム感、キャラクターの造形がやっぱり好きだなあ、と改めて実感。喜嶋先生が犀川先生の姿をどこか彷彿とさせるからか、S&Mシリーズから無性に読み返したくなりました。

  •  
    ミステリーではなく
    自伝書の類。
     
    短編(まどろみ消去)からの派生?
     
     
    物語は
    理系学生の日常
     
     
    何気なく
    なんとなくスルスルと
    読み進めることができる。
     
    そして
    いつの間にか
    どっぷりがっつり

    のみこまれていく感じ。
     
    主人公が
    知識欲に
    溺れるかのように
    研究へと
    落ちていく様は
    学ぶことの楽しさ
    没頭することの気持ちよさ

    まっただ中にいた頃を
    思い出させてくれる。
     
    そして
    そのままではいられないことも。
     
    意外そーで
    リアルっぽくて
    ちょっと切ない結末も
    この物語に
    ふさわしい気がした。
     
     
     
    読み終えて

    この作者が描く
    物語が好き、てだけじゃなく
    この作者が書く
    文章が
    言葉が
    好きなんだな、と
    しみじみと思った。
     
    正確で簡潔
    そして静かな世界を堪能。
     
     
    ★★★★★ 出会いに感謝。

  • 僕は文字を読むことが不得意だったから、小学生のときには、勉強が大嫌いだった。そんなに本が嫌いだったのに、4年生のときだったと思う、僕は区の図書館に1人で入った。その頃、僕は電波というものに興味を持っていたから、それに関する本を探そうと思った。その1冊を読むことで得られた経験が、たぶん僕の人生を決めただろう。意味のわからないものに直面したとき、それを意味のわかるものに変えていくプロセス、それはとても楽しかった。考えて考えて考え抜けば、意味の通る解釈がやがて僕に訪れる。そういう体験だった。小さかった僕は、それを神様のご褒美だと考えた。

  • 大学の院生と教授(助手)の小さな世界を描いた物語。
    「大人」になってしまった僕が純粋な「研究者」だったころを回想する形で描かれている。
    その「世界」は、だれもが経験できるものではなく、また儚いものであるが、とても静かで、とても美しい。
    大学院生の一人として考えさせられる本。

  • 2011/5/12読了。2011年の100冊目。

    学問の深遠さ、研究の純粋さ、大学の意義を語る自伝的小説。

    この紹介文が全て。進路選択の際の判断材料として理系の大学生なら必ず読むべきだし、文系の大学生や理系を目指す高校生でも、理系的な研究者の価値観を理解するためにも、読んでみる価値は十分すぎるほどにある。

    形式上は小説となっているが、語られる内容はほとんどエッセイに近い。それほど物語のいたるところに著者の思考が沁み渡っているように感じられた。著者の他の著書で「エッセイで語られる言葉と比較して、小説の登場人物の言葉が重みを持つのは当然だ。そこには共感を得るためのバックグラウンド、さらには人物をとりまく状況が存在しているのだから。」というような発言があった。この本は、著者が伝えたかったことの為につくられた物語なのではないか。
    立場の人物を一般化して、そこから幾つかの必要な要素を抽出したような簡潔な人物設定に、比較的せまい空間と人間関係の中で、話の動きも大きいとは言えないストーリー。一切の脚色、無駄を省いたような、そんな表面的には静かな物語から伝わってくるものが、他のどんな小説よりも深くて大きいのである。特に学問の深遠さと純粋さ、それに起因する孤独は、岐路を控えた理系学部の卒論生と言う立場もあってか、とても深く突き刺さった。
    感動させるためでも、売るためでもない、純粋に伝えるための物語であると感じられたからこそ、私自身はどんな世界で、どのように生きていきたいのか、じっくり考えてみようと思えた。数ある著者の本の中でもこれがベストと断言できるような、素晴らしい1冊であった。

  • 空気感がよい。

    大学生から院生になり、研究を続ける道を選んだ青年、橋場くんが、ステップアップしてゆく様を描いた、自伝的小説でありながら、ファンタジーのような作品。
    特に事件も何もおこらず、橋場くんの回想のようにただただ静かに時間が過ぎてゆく。

    大学の院生、教授、助教授、研究者たちの生活をそっと垣間見た感じ。
    数式のことなど分からないのだけど、知らない世界にグンと引き込まれる。

    だけど難しい数式のことなど、橋場くんや、喜嶋先生を語るにほんの一部、部分でしかない。
    彼らは、その一般人には理解しがたい数式に人生を奉げ、静かに生きているのだけれど、それって本当に幸せだよね。と思ってしまう。

    大学と云う、若い力のみなぎる賑やかさの中にあって、ただただ自らの研究にひたむきな二人の関係はとても心地よい。

    ちょっとだけ恋愛もあって…ここだけは、二人それぞれに都合のよい女性という意味では、フィクションだねぇと思ってしまいますが、物語のテイストとしては必要なのかな。

    中村先輩や、森本教授、櫻居さん、清水スピカ、沢村さん、脇を固める登場人物もよいです。

    ただ…最終章は切なさの残るものとなりました。
    これが人生ってやつなのかな。

    森さんの日本語はきれいだと思う。
    私は好きです。

  • 単調に、でも確実に流れていく時間。
    変わっていくものと変わらないもの。

    森さんの文章や哲学、好きです。
    大学生のうちに出会えてよかった。

    手元に置いておきたい一冊。

  • 工学博士、元大学助教授、森博嗣の本音だったと思います。だから泣けました。いろんな意味でとても“純粋”だと思います。森ミスの、研究者森博嗣の、学生森博嗣の原点を垣間みれたような。この本を読むと、考えても分からなかった何かを、考えて、考えて、考え抜きたくなります。何か壁を見つけて、登りたくなります。静かに。熱狂的に。純粋に。「覚えておくといい、学問には王道しか存在しない」らしいですよ。

  • 純粋な知性の輝きはモラトリアムにしかない。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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