OUT 下 (講談社文庫 き 32-4)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734486

感想・レビュー・書評

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  • 再読した桐野夏生『OUT』は、​読んだ本(2004年)​なのに、新刊を読んでいるような気分、「忘れる楽しみの極意」と言うが、こんなことをしていたらたくさんの新刊本にたどり着けない。

    *****

    深夜の弁当工場で働く主婦たちが死体をバラバラに解体して捨てるという、異業(犯罪)をしてしまう描写は目が離せない。やはり桐野夏生さんのこういう筆力はすごい。

    雅子、ヨシエ、邦子、弥生(夫殺し)それぞれに屈託を抱えていたのだから、と言っても許されるわけはないが、そんな常識外れの犯罪だけじゃない、その後、4人のたどる道がだんだん際立っていくのが示唆的だ。
    特に主役たる「雅子」は心にうごめく自己を突き破りたいために、他の人の運命を変えてしまうのはどうだろう、結果関わる人々を破滅に追いやってそして成功していくのがなんとも。雅子はそんな自由を得た後、寂蒔を感じる、けれども強くなるには孤独と簡素が必要なのだと思い至るカタルシス。

    それに比べて登場する男たちの影の薄さが、やはり女性ならではの思いのたけかもしれない。今置かれている現状が少しも変化(進歩)していないから。

  • 最初のうちは助け合いつつも、最初から各々の心のうちの感情が見え隠れしていて、それがクライマックスに向けて、段々ともっともっとドス黒いものへと変わっていくところが、お見事だなと思った。

    ラストの佐竹と雅子のやり取り。やっぱりあそこが一番面白かったな。
    雅子はあのまま、カズオとブラジルに行くんかなと思ったけど、あのシーンがあったからこそ、ラストが引き立っていた。

    桐野夏生作品はまだ2作目だけど、文章が本当うまいな。プロにこんなこと言うのは烏滸がましいけど、本当にうまいな。

    いつ警察に捕まるんだろうと思っていたけど、話の本筋はそこじゃあないんだよね。
    やっぱり、登場人物の心の動きがメインだよな。
    無我夢中でページを捲ったから、これはもう一度ゆっくり再読しよう。

  • 読み終わったあとにイヤな気分が続いた本。もう一度読みたいとは全然思わないが、印象深い一冊。

  • 上下巻読み終えました。
    かなり前に田中美佐子主演で連続ドラマやってたなぁ~と思い出し、読んでみました。

    弁当工場で深夜のアルバイトをする4人の女達。
    立場は違えど、共通しているのは全員幸せではないということ。
    4人の中の1人が夫を殺してしまったことをきっかけに、死体の解体という闇の仕事に手を染めていく女達……うーグロテスク。
    妬み、嫉み、裏切り、女の嫌なところが絶妙に描かれているのもとてもリアル。女って、一緒に罪に手を染めても、本当の仲間にはなれないんだよね。結局は自分のことが1番大事で。

    最後のヤクザとの対決は、え??そういうことだったの?と少し驚いたが、反面なんとなく納得。

    女が、カラッカラに乾いてしまうと、どんな飛び方でもできるって言われている気がした

  • 私は上巻の方が面白く感じた。しかし、ヨシエのラストの行為や、雅子と佐竹の怒涛のクライマックスは読み入る内容だった。ラストは少し感情移入しにくいが、登場人物の社会的地位や家庭内での立場の居心地の悪さなど、考えさせられることの多い作品だった。

  • 何事にも動じない感じだった主人公が窮地に立たされだんだんと崩れ始める。

    最後の雅子と佐竹の絡みであったり心情は全く理解のできないものであった。変態なのかサイコなのか、似た人は互いを惹きつけあうものがあるのだろう。

    巻末の解説にもあったように、下層階級の人間がそこから抜け出せずどハマりし犯罪に手を染めてしまう。このような現実を自分は想像しづらく、遠い世界だと感じるとともに自分の今の境遇を幸せだと感じる、

  • 上巻からの続きが気になり、急いで手に取りました。しかし、前半より読むペースが落ちました。
    上巻では、弁当工場で働く四人の結束力が描かれていて、初めの仕事の時のチームとして、またバラバラ死体事件という罪を共有することによって、彼女達は団結していました。しかし、この下巻では、1人裏切り、また1人いなくなり…。秘密の共有をしていたはずが、共有しなくなり、四人のバランスは崩れ、結束力がどんどん衰えていったのが読み進めていくうちにわかります。
    前半は、雅子の頭の良さ、賢さが目立ちましたが、後半は佐竹が沢山登場し、佐竹の過去やらブラジル人やら色々からんできて、よくわからなくなっていきました。
    大ヒットになったとされるこの作品。まだ学生の私にはよく理解できませんでした。「OUT」側ではないからでしょうか。ただ、最後の解説で述べていらっしゃるように学歴などの階級が根づいているのはよくわかりました。
    また大人になったら再読してみたいと思う作品です。

  • 深夜に読み終わってそのまま寝たら、内容はうろ覚えだけど漠然と不気味だったことは覚えている、そんな夢にうなされました。そういう本です^^
    雅子と佐竹には最後まで全く共感できなくて、逆に面白かったです。雅子や弥生たちの身の回りで起こることが佐竹の仕業だったとわかっていくくだりはほんとに恐ろしくて最高でした^^ あと、直接「放火」などの言葉を使わずにヨシエが自分の家に火をつけたことを暗示している所の文章が個人的にすごく好きでした!

  • 犯罪に手を染めた4人の主婦たちの行きつく先は…?気になりだして止まらず下巻も一気読み(笑)!これだけの犯罪のオンパレードなのに、警察は何をしているのか…ラストは、え?なんでそうなるの??と腑に落ちない感想を持ちました。


  • 弁当工場の夜勤で働く、生活に困窮した4人の主婦たち。

    ある事件をきっかけに1度死体をバラバラにしたことから様々な事件に巻き込まれていく。

    〝平凡な生活”から、どんどん人の道を踏み外していき〝OUT”な女たちになっていく。。。

    ー 選ばざるを得なかった仕事は、出世も昇級もなく蓄えができるほどの高賃金でもなく、ただ日々生き長らえることを可能にするだけで、未来への希望には全く結びつかない。
    彼女たちはそんなふうに、世の主流からは遠く隔たった《OUT》な場所に閉じ込められているのだ。 ー

    物語の結末は意外な方に傾き、OUTな女がOUTな男と出会う。
    理解しがたい描写も多いが、全体的に物事が凄くリアルで驚いた。

    桐野夏生さんの作品を読むのは初めてだったけど、とても面白かった。


    2020年読了、47冊目。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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