嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736695

感想・レビュー・書評

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  • 【加賀恭一郎シリーズ6】5話短篇集。

    どの話も途中から犯人が誰か察しがつく。
    が、加賀がどのように追い詰めていくか、その心理戦と真相が面白かった。

    長編のように、何層にも張り巡らされた伏線を回収していく重厚さはないのだけれど、東野圭吾氏なら、全ての話を長編にしようと思えば描けたであろう。もちろん! 
    それをサラッと「短編にも出来ますよ」という筆力を見せられた作品集。

  • 嘘を取り繕うために嘘を重ね追い詰められていく容疑者と加賀さんの攻防が面白かった。加賀さんはいつも事件の捜査をしながら関わる人たちを観察して楽しんでいるように見える。でも、気遣いや各人の立場を尊重することも忘れない、人間味のある刑事で素敵だなと思う。

  • 【感想】
    タイトル通り、容疑者が様々な嘘を用いて事件を攪乱させ、刑事・加賀恭一郎もまた嘘を用いて事件解決に努める。
    本シリーズのどの作品にも共通しているが、悲哀がただようというか、どれもこれも救いようがないストーリーばかり・・・
    確かにとても面白いけど、読んでいてやっぱり疲れる(笑)

    事件に関係する人々の、色んな「嘘」にまつわるエピソード。
    元バレリーナの演出家のストーリーである「嘘をもう一つだけ」、
    妻を亡くして子どもも行方不明になった男性を描いた「冷たい灼熱」、
    オリンピックを共に目指す親子を描いた「第二の希望」
    モラハラ夫と不倫妻の三角関係の話を描いた「狂った計算」、
    加賀の友人である登場人物の事故に関する「友の助言」などなど。

    どれも面白かったが、特に「冷たい灼熱」と「狂った計算」のドンデン返しが凄まじすぎて面白かった。
    特に「狂った計算」に関しては、短編で完了するレベルではない、濃密さが詰まった作品だったと思う!!

    次は「新参者」を読もうと思います。


    【あらすじ】
    東野圭吾はミステリーをさらに掘り下げた!
    正直に生きていきたいと望んでいたのに、落とし穴にはまりこみ、思わぬ過ちを犯してしまった人間たち。
    そして、それを隠すために、さらに新しい秘密を抱えこむ。
    加賀恭一郎シリーズ

    バレエ団の事務員が自宅マンションのバルコニーから転落、死亡した。
    事件は自殺で処理の方向に向かっている。
    だが、同じマンションに住む元プリマ・バレリーナのもとに一人の刑事がやってきた。
    彼女には殺人動機はなく、疑わしい点はなにもないはずだ。
    ところが…。人間の悲哀を描く新しい形のミステリー。


    【引用】
    p49
    ・「嘘をもう一つだけ」一節
    加賀の物言いは穏やかだが、その言葉は美千代の心に突き刺さった。
    この刑事がこれまでに発した台詞を彼女は思い出していた。
    何もかもがすべて、この罠に誘導するための布石だったのだ。

    「あなたの目的は」美千代は震える声で言った。「プランターに触ったと、あたしにいわせることだったのね。」
    「あなたの犯行は見事でした。いたずらに策を弄さず、極力嘘を少なくしようと工夫しておられた。あなたを追い詰めるためには、何とかもう一つあなたに嘘をつかせる必要があったのです。」


    p185
    ・「狂った計算」一節
    結婚すれば相手のことを好きになるかもしれない、そういう形の恋愛だってあってもいいはずだ。
    奈央子はそんなふうに自分を納得させることにした。
    時間が経てば、結婚してよかったと思う日が来るはずだ。

    だが隆昌と一緒に暮らし始めて間もなく、彼女は自分の選択が間違っていたことに気づいた。
    妻にしたということで安心したのか、隆昌は途端に横暴さを剥き出しにし始めたのだ。
    隆雅は奈央子のことを、自分の性欲を満たし、自分のためだけに働く人形にしておきたかったようだ。


    p213
    ・「狂った計算」一節
    この計画は、順調に進んだかのように思えました。
    ところが、全く予期せぬことが起こった。
    なんと、Bに化けたCが事故で死んでしまった。
    Aは途方に暮れたことでしょう。
    しかし、一つだけ幸運なことがあった。死体の身元が判別しにくい状態にあったのです。
    Aは最後の大勝負に出ました。つまり、死体はBであると証言し、そのままCの死体をBとして火葬したのです。

    「犯行可能なのは土曜日だけだ。しかも、君が家を出た後、生きているご主人の姿を第三者に見せなきゃならない。」
    「あたしが家を出た後は、あの人きっとすぐに福井へ行くわ。殺すチャンスなんて、ないんじゃないかしら?」
    「だから」中瀬は声を低くして言った。
    「実際には、君が出かける前に、犯行を終えておこうと思う。」


    p217
    ・「狂った計算」の一節
    「刑事さんの想像とは違っていたでしょう?」
    「計算違いだったんです。何もかも。」そういいながら、彼女は視線を落とした。
    ベッドの中の棺に眠っていたのは、坂上隆昌ではなく中瀬幸伸の死体だった。


    p245
    ・「友の助言」の一節
    加賀は一旦手帳を閉じ、何かに失望したように頭を垂れた。
    しばらくそうした後、椅子をずらし、ベッドに近づいてきた。
    次に上げた表情には、何かを訴えるような切なさがあり、萩原はどきりとした。
    「なぁ、萩原。本当のことをいってくれ。おまえは何かを飲んだはずなんだ。もし忘れているなら、思い出すよう努力をしてくれ。」


    p260
    「未必の故意だ。犯人はその犯行がうまくいくことを望んでいるが、仮にそうならなくても仕方がない。そういう種類の犯行だった。」

  • 加賀恭一郎シリーズ6作目
    短篇ということもあり、容疑者はすでに絞られていて、加賀がどういう風に事件を解決に持っていくのかが見どころでした。今回も加賀の観察力や想像力の高さが光り、なすすべなく犯人が追い詰められています。その詰め方に加賀シリーズの魅力があるのだと感じました。

    「私が彼を殺した」シリーズの新刊がでましたね。早く読みたいけど、気持ちを抑えて、加賀シリーズ順番に読んでいこうと思います。

  •  犯人側の視点から描かれる加賀恭一郎シリーズ第6弾。5つの短編が収録されており、どの事件も自分が吐いた嘘から真相が暴かれる、という構成が面白かった。個人的には「第二の希望」「狂った計算」が好みだった。それにしても、加賀恭一郎は敵にしてはいけないとつくづく感じる。

  • 短編で嘘がテーマの5つのお話が詰まっている。

    『眠りの森』が思い浮かぶ部分もあり、加賀恭一郎シリーズをこれからも読み続けたいと思いました...!

    やはり東野圭吾さんの書くミステリーが好きだなと感じた1冊です

  • 加賀恭一郎シリーズのミステリー短編集。
    それぞれが独立したお話。
    悲しみの感情が殺人に変わる人達を描く。
    それぞれのお話が独立していてさらりと読めちゃうけど、
    現実にあったら結構ゾワゾワするような事件。

    加賀さんは相変わらず鋭い。
    阿部寛の姿が脳内でチラチラ。

    ひとつ嘘をつくともう止められない人間のあやうさを、知りたいような知りたくないような、そんな気持ちで読みましたー。

  • 加賀恭一郎シリーズ短編5作

    短いながらも淡々とした推理、捜査で良いです。

    東野圭吾が書く女性たちは、愚かで腹黒く浅ましい…
    だから好きなのかもしれない(´ー`)プッ

  • 短編が5つで、身近な殺意が書かれています。加賀刑事の活躍が凄いです。
    何気ない会話で犯人を追い詰めて行く。
    細かい所も観察して隙が無いので、絶対家に上げたくない人です。

  • 嘘をつき続けるのは難しい。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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