- Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062881685
感想・レビュー・書評
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近代民主主義思想や日本の社会運動の変遷を通じて、今の日本の社会がどのように成り立っているのか、どこに問題があるのか、その視座を示してくれている。また、具体的に今の「社会を変える」=人に感動・行動を与えるための示唆やヒントにも言及されており、非常に説得力がある。
あとがきにも述べられているように、「自国の歴史や他国の思想から、違った発想の仕方を知り、それによって従来の自分たちの発想の狭さを知る。そのあと、従来の発想をどう変えるか、どう維持するかは、あらためて考える」ことが社会科学の視点であり、日本だけでなくグローバルな社会の潮流をとらえるうえでも貴重な視座を与えてくれた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
社会学者の小熊先生が、一般書として書き下ろした本です。
新書だと思って気軽に手に取ったら片手から落ちそうになる分厚さなので注意を要します。
1.小熊先生がなぜデモに出かけていくのか、
2.社会運動の思想的変遷
(戦後社会運動運動の歴史から始まったのでさらっと終わるとおもいきや、まさかのプラトンからさらいなおし!思想史さらうのと一緒デス。)
3.デモに限らず社会運動とはどのような考え方で成功していけるのか
そのあたりのことがわかります。
知識を与える側の活動家と、受け取る側の一般大衆という枠組みを避けられるように、知識層側が一般大衆をエンパワーメントしていく、
そうすれば最終的に対等な関係を維持でき、活性化された関係性(われわれ)が成立すると考えられていて、
先生が人に対して与えている信頼というものが改めて浮き彫りになる本です。
あとがきの文章で、「この本を読むまでは私の方が知識があったかもしれないが、読んだあとでは私とあなたの知識には大差がない。私を講演に呼ぶよりまわりに呼びかけて読書会でもやったほうがこの本の主旨に沿っている」というような文章があります。おそらく普通に「大差がない」と思っておられるのだと思います。このような他人に対する基本的な尊重は小熊先生の言動、著作に特徴的なところかなと思います
講演を断る面倒さを避けたいというのもありましょうが…。
社会運動の歴史に限らず、思想史において押さえておきたい人物、考え方を学ぶ最初のテキストとして良書かと存じます。新書と思うと分厚いけど思想史テキストと思えばなんとか読める薄さ! -
○議論が盛り上がること,みんなで決めたと感じること,「われわれ」を作ることが重要
○動くこと,活動すること,他人とともに社会を作ることは楽しいこと
○それ自体が楽しいとき,競争・批判・自慢は生じない -
社会運動への参加を面白いと思えるか。そのたとえに「鍋料理」を引っ張っている。なるほど〜、鍋料理って面白いし、誰でも参加できるし、それなりに美味しくなる人気料理。
キーワードは対話と参加。
別に新しい理論ではないけれど、運動や社会の関係性を分かりやすく解いてくれる。
引用された各理論を原著にたどって勉強してもいいし、議論のきっかけにもできる。中学生くらいから読んでも十分理解可能。 -
「そもそも民主主義とは何か」を掘り下げて考えている4章から6章は、アカデミックすぎて正直ちょっと辛かった。
以下、印象に残った考え方。
■歴史も伝統も創られるものである
→その時々の時代背景によって、「日本は武士道の国だ」「日本は商人気質がある」などと捉え方も変動する
■関係論的な考え方が重要
→多くの人々が自由になった現代では、「主体と客体」があらかじめ存在して関係する「個体論」的な考え方ではなく、先に関係があって「主体と客体が事後的に構成される」、「関係論」的な発想が大切なのではないか
私も、つい個体論的な発想で「あいつはダメだ」などと思ってしまう事が多いですが、「ちょっと待て、いったん頭を空にしてみよう」という「エポケー」を頭の片隅においておきたいと思います。 -
*社会を変えるには、の本だが、会社を変えるには、とか、意見の合わない人とどうアウフヘーベンするかとか、そういう身近な問題にも応用できそうなヒントがちらり。
*やはり、戦争をして儲かってきたという歴史があるようだ。
*自分の興味のある箇所は、わかりやすく書いてあるなー感じながらサクサク進むが、逆になかなか頭に入らない箇所もあった。ストレスにならないためには適当に読むべし。 -
小熊さんの本はデビュー作の『単一民族神話の起源――<日本人>の自画像の系譜』以来、ずっと本屋で見かけては読んでみたいな、と思っていました。ただ、あんまり分厚くてハードカバーなんでちょっと躊躇してたんですね。今回、たまたまジュンク堂でこの本見つけて、新書だし、他の小熊さんの本に比べると分厚くないし、新刊だし、ふっと買っちゃいました。
2012年段階の本なので、3.11.後の世間に触れつつ、2012年段階の日本社会についての考察。非正規労働者の増加、ワーキングプア、家族の崩壊、などなど既存のシステムが行き詰まっているのは、何故か?ということ。じゃあそもそもなんで上手くいってたのか?上手くいっているように見えたのか?という近現代史。
いつも思うけど、歴史教育っていうのは、現代から遡って教えていくべきではないかと。まず近現代をちゃんとやって。そこからどうしてそうなったのか、と。最終的に縄文時代に行き着ければ良いと思うんですけどね。
中盤、民主主義とは?民主政治とは?思想史、哲学史まで遡上し・・・。という途方もなくデカイ主題に挑んでいます。チョット、強引かな?って思う部分もあるし、どうしても難解なところもあります。正直、僕は飛ばすのもアリだと思います。読んだけど。
どうしてかというと、その前後だけでも凄く面白いから。
後半また、日本の現状、どうしたら良いのか、というようなお話。
どうしたらいいのか、という具体な話は、まあ例えば小熊さんはデモが好きらしいですが、その辺は小熊さんが書いているように、別にヒントだけであって具体的に行動をアジったり指示するような、そんな胡散臭いハウツーもしくは自己啓発系の本ではありません(笑)
どうしたらいいかは1人1人が自分なりに考えて動くしかないのだから、と小熊さんも考えていますね。ただ、とにかく今の日本の世の中がなぜこうなっているのか?ちょっと前どうだったのか?我々がぼんやり考えている70年代なり80年代なりのイメージは本当に正しいの?といった、考察が本当に刺激的で面白かったです。
小熊さんの本は今後も長く読んでいきたいな、と。そう思える同時代同年代の社会学者さんというか歴史学者というか、柔らかい言葉で物を書けるそういう人がいるのは嬉しい限り。
タイトルからすごくサヨクな人、本だと思われるかもしれませんが、そんなことないですよ。
まあどちらかっていうと確実に左な趣味の人だとは思います。その辺の趣味も、まあ、僕は好きです(笑)
読んだ人と内容についておしゃべりしたい本でした~。 -
第一章
ポスト工業化社会
旧システムの歪が露呈 ex.原発
→社会の変革期にある現在
第二章
「六八年」→ポスト工業化へ
かつてのステレオタイプ的な「まとまり」がなくなり、まとまらなくなる…政治、家族、運動などにおいて
第三章
50年代安保闘争…戦争はごめんだ、貧しさはごめんだ
↓
次第に分裂、内ゲバ、セクト
↓
大学の大衆化、高度成長の中の「うしろめたさ」
=68年
第四章
盛り上がる=「みんな」「われわれ」ができること
公と私
だんだん難しくなってきた!!
第五章
ルネサンス期の世界観の変化
ex.羅針盤、印刷、遠近法…
「近代の自由民主主義を支えているのは、人間は理性を行使する主体であり、理性によって世界を把握でき自己決定もできる」
第六章
ハイゼンベルクの不確定性原理
アンソニーギテンズの再帰的近代性
※関係から自己が作られる
主体の力が弱まっている
第七章
誰もが自由になってきたが、ないがしろにされている…現代的な問題意識
方法…フレーミング、モラルエコノミー、アプロプリエーション
対話、参加
「社会を変えるには、あなたが変わること。あなたが変わるには、あなたが動くこと。」
2013/02/10読了。 -
直球のタイトルだが「社会を変える」ための直接のノウハウを紹介するというものではない。多くの頁数は、日本の社会運動の歴史の紹介と、西洋の民主主義思想・近代以降の社会思想の紹介に割かれており、社会を変えることを考えるための土台の一つを提供してくれる本。やけに分厚い新書だと思ったが、中身を見る限り、読みやすさに配慮した結果だろう。
民主主義思想・近代以降の社会思想については、本来なら、それを語るだけでひと仕事になるものであろうが、本書のそれは、わりとよく耳にする論者の考え方を、それなりに簡潔にまとめているという点で、ある種実践的なものに仕上がっているかと思う。もちろん、専門の方からすれば、触れられていない部分や、簡単に説明しすぎに思われる部分があるのだろうが、「社会を変える」ための知識の土台を作るという目的からすれば、十分である。むしろ、社会のために、一人でも多くの人が動き出すことを目的にするのであれば、あまり“正確な思想史”にこだわることにも意味が無いだろう。
社会運動のための教養として、それなりの水準であるというだけでなく、これをきっかけに、民主主義や社会思想について考えてみよう、という人にとっても、ギリシアの民主主義から始まり、ベックやギデンズに至る本書のまとめ方は悪くないのではないかと思う。本書の流れをひととおり押さえておくことによって、違ったものの見方についても理解がしやすくなるだろう。現代思想の入門書として使ってみるのもアリかも。
一方で、タイトルが付された第7章「社会を変えるには」で書かれている内容については、もう少し頁を割いて書かれても良かったのではないだろうかと思う。社会運動は怖くないよ、特別な人がやるものでもないよ、デモに参加するのも楽しいよ。それは分からなくもないが、では明日から何かを始めるかという問題がある。もちろん、具体的に何を始めるかは、個人の置かれた環境によって変わってくるので、一概には言えないものだが、多くの人の目を「社会を変える」ことに向けさせようと思った場合、「それなら出来るかも」と思わせる事例などを多く紹介した方が効果があったのではなかろうか、と思わないでもない。
多くの人が、社会のことは私には関係が無いと思いがちな時代である。本書のように、社会に関心を持つきっかけとなりうる本が出てくることは、個人的に応援したい。分厚さに負けずに、若い人に手に取って頂きたい本。 -
ようやく読み終わりました。日本の現状、社会運動の歴史、民主主義・自由主義の思想の歴史など、現在の日本での社会制度の位置を知るための資料がまとめられています。自分が今から何をすべきなのか、をここから考えていくための足がかりを与えてくれる本だと思いました。
この本の意義は「あとがき」にある下記の文章に端的に示されていると思います。「教科書」としては使わないでほしい、使うのであれば「読書会」をしてほしい、という著者の思いに共感します。
「政府だ、市場だ、NPOだ、と「正解」の材料をつぎつぎとりかえたり、「でも私はピンとこない」とくりかえしながら誰かが「新しい正解」を与えてくれるのを待っていたりしても、何も始まりません。従来の発想が行き詰っているときには、材料やパーツを変えるだけではない、本当の意味での発想の転換が必要です。
そのために、自国の歴史や他国の思想から、違った発想のしかたを知り、それによって従来の自分たちの発想の狭さを知る。そのたと、従来の発想をどう変えるか、どう維持するかは、あらためて考える。そのために、歴史や他国のこと、社会科学の視点が必要になるのです。」