社会を変えるには (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881685

感想・レビュー・書評

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  • 後半、特に五章以降が興味深かった。

    自由民主主義は本来別の主義であること。
    それが近代のアメリカに関しては、偶然一致点がある状況であったこと。
    ところが、ポスト近代社会が訪れ、産業構造が変わり、経済的にも厳しい状況が続くようになって、「ないがしろにされている」と感じる人が増大して、矛盾が露呈したという。

    本書ではギデンズを援用し、ポスト近代社会を、再帰性が高い(主体も客体も常に「作り作られ」、絶えず変化した不安定な社会)とする。
    それゆえに、カテゴリーで人を括り、施策する現在の政治システムが機能不全に陥っていると説かれる。
    こうした分析は、現在起きていることを顧みると、かなり説得力がある整理だと思った。

    ただ、そこから「社会の変え方」の提言にかかると、個人的には納得できないところが出てくる。
    「自分がないがしろにされている」という感覚を足場に、参加と対話を促して、社会を変える、というのはまあなんとか。
    しかし、問題をどう「構築」し、どうフレーミングするかは、誰にでも簡単に出来ることではない。
    運動も「組織」をするのではなく、参加したい人が、いつでも、誰でも参加し、いつでも抜けられるものとする・・・というのも、どうだろう。
    理屈としては分からないでもないが、うまくコーディネートする人間がいなければ、結局立ち消えになってしまうのではないか。

    これは単に懸念ではなく、自分自身の体験から、そう思う。
    ボランティア活動を維持していくことがいかに大変かを身にしみて感じるからだ。
    社会理論を現場で役立てるために、という姿勢には共感を覚えるが、実現するのは・・・やはり相当な「役者」がいないと無理だと思う。

  • デモには興味がある。でも、参加するのはちょっと...。と思っていた自分が恥ずかしい。とんだ自己欺瞞だったと気付かされた。

    あとがきに、教科書のように読まないで欲しい、とあった。これがまさに、本書の特長だ。相手を変えよう、とするのは傲慢だし、自分だけが犠牲になればいいというのも間違いだ。お互いが変わろうとしなければ、変わりゃしないのだ。もちろん、それは綺麗事ではすまない。大変な厄介事である。でも、それこそが、いや、それだけが、真に社会を変えられる方法だろう。

  • 素晴らしい本だった。取り上げられた一つひとつの知識は既知の事も少なくなかったが、それが、「社会を変えるには」というテーマに向かって、分かりやすく言葉を尽くして説明されていく。著者はこの本を「教科書」にはせず、思考や討論のためのたたき台としてもらえればいいとあとがきで書いているが、職場で出会う若い人たちと共にこの本について議論してみたいと思う。

  • 500ページ越えの大作で期待していました。各章それぞれには学ぶ点も多いのですが、最終章のまとめのために、各章読んだ割につながりが今ひとつ見いだせない。

  • 「いま日本でおきていることがどういうことなのか。社会を変えるというのはどういうことなのか。歴史的、社会構造的、あるいは思想的に考えてみよう」と筆者。
    ポスト工業化社会の流れと、いま日本がなぜ苦境に陥っているかが非常にわかりやすく説明されている。

    ふらっと読み始めたら、めっちゃよい本。もう1回きちんと読もうと思う。

  •  本書の目的は、運動を敬遠している、あるいは忌避感を抱いている人たちに、運動の魅力を伝え、運動をしてみようかなと思わせることである。最初に反原発運動こそがあらゆる運動が開花する肝である(となりえる)ことを主張し、その後なぜ過去の日本の左翼運動が破綻したのかをわかりやすく解説し、議会制民主主義に囚われることなく、運動によってこそ社会が変えられることを力説している。後半ではいろいろな社会変革理論をとりあげているが、著者が言うように、本書は運動の正解を示すようなものではなく、むしろ議論の叩き台となるようなものである。あくまでも本書は運動を行おうという人のための導きの糸に過ぎない。したがって、本書の評価軸は、社会思想などの著者の理解の正確さよりも、果たしてこれを読んだ人が本当に運動をプラスに捉えてくれるのだろうか、ということに求められるべきであろう。それは私たちのその後の行動が示すのだから、ここで本書の評価をすることは適当でない。しかし、ここでは学術的な観点から見ることにし、その場合、社会思想の解説で一部不正確な箇所(例えばマルクスの物象化論)があったため、星を一つ減らしておく。

  • 感想
    無知のベールを被る。しかし人々が属性化されていない世界で有効なのか不明。間接民主制と多様性は真に両立するのか。全員の声を聞くのは困難。

  • なるほど。ただ自分の答えにはなっていなかった。骨太な本。

  • 色々モリモリ詰まった本。もはや旧来の政治の方法ではうまくいかない=国民が属性化されてない だれも政治に主導権?主体性を持ってると感じていない、自分は代表されていないと感じる…
    だからこそ、多くの人が対話とか社会的活動に参加する、取りこぼされた若者を取り込む(積極的労働市場政策)ことが大事。(宇野先生が言ってた熟議民主主義にもつながる)

  • ちょっと鼻につくけど、わかりやすくまとまっていました。

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著者プロフィール

慶應義塾大学総合政策学部教授。
専門分野:歴史社会学。

「2023年 『総合政策学の方法論的展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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