社会を変えるには (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881685

感想・レビュー・書評

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  • 民主主義=投票、っていう考えも根強くあると思う。政治家からすれば都合のいい論理で、選ばれたら何をやっても「多数」であることを理由に正当化される。一方で社会運動に参加するのは多くの人々にとって敷居が高い。暇もないし、他人から「活動家」と見なされるのもちょっと怖い? 
    文庫本で買ったけど結構情報量は多く、日本の社会運動の歴史、民主主義とは、その限界、社会運動に参加することの重要性とその意義について詳細に記載されていて参考になりました。後半に社会運動の戦略論みたいなところもあって、なるほど・・そういう見方もあるのか、と。
    現在の政権を見ていると選挙で結果を出すことも大事だけど、一方で官邸を包囲し続けることもより効果的かもしれませんね。

  • 読んだあとに「なるほど」となるより、書いていないことが気になるような本が好きだ。そんな本。

  • 「新書大賞2013」を受賞した作品。だけどそこまでよい作品とも思えなかった。なぜなら、あまりにも理想論、建前論に寄りすぎているからだ。内容は大半が社会運動史の概説に近く、理論的なことをダラダラと述べているだけの部分も多い。歴史や方法を知ることが社会を変えることの第1歩なのはそのとおりかもしれないが、しかしいくら高邁な理想を掲げていても、できうるかぎりの方策を講じてみても、じっさいには限界があってなかなか社会は変えられないのである。その好例が、著者がたびたび言及している原発問題だろう。あの事故いらいスッカリ日本じゅうに原発を嫌悪するムードが漂い、世論調査においてもつねに反対派が多数派を占めるようになった。それでも現在の安倍政権は、再稼働に向けて着着と準備を始めている。社会を変えようとアレだけデモをしても、けっきょくなにひとつ変わっていないではないか。理想と現実が異なるのもまたあたりまえのことであり、それで著者を責めるのも酷かもしれないが、そのことにたいするエクスキューズはもうすこし言及してほしかった。また、内容の信憑性も微妙。安保闘争などにかんするくだりは、伝聞なども多い。体系的な先行研究がすくないのかもしれないが、ならば厖大な参考文献をつくるなどして、内容の真実性を担保すべき。内容についていえば、2012年の刊行ということもあって、現在でみるとどうなのかなと思う部分があった。社会を変えようと思うことはよいことかもしれないし、その方法を学ぶことに意義はあるだろうが、本作を読んだだけではかえって絶望感だけが強まりかねない。

  • ○社会学者である小熊氏の作品。
    ○東日本大震災以降の日本社会の現状を踏まえ、「社会を変えるには」をテーマに、過去の思想史や政治史、民主主義の成立や共産主義、全共闘といった一昔前の権力闘争まで、いかにして社会を変えていくのか、どうやって社会を動かしていくのかについて、著者の論をまとめたもの。
    ○新書でありながら、内容が濃く、充実したもの。読み応えがある。

  • 多くの人々が集まって生きていくとはどういうことなのか、民主主義の根本?のようなものがわかりやすく書かれていてよかった。
    読んでいて、学級経営の到達点は、「民主的であること」を目指すことなのだと思った。

  • 特定秘密保護法に対する反対するデモを与党幹事長がテロと呼ぶ、そのタイミングで図書館からこの分厚い新書が回ってきました。ナイスタイミング!3・11以降の脱原発デモをきっかけに書かれている本ですが、ついついプラスチックワードになりがちな民主主義という言葉を根本に遡って捉えることができます。古代ギリシャまで遡って「みんなで盛り上がること」=お祭りの重要性を指摘するあたりとか、目鱗満載です。プラトンもデカルトもデュルケームもフッサールもみんな登場して今の状況へバトンを渡していきます。社会運動とか政治活動とかの本と色眼鏡で見るのはもったいない、思考停止になりそうなぐらい面倒臭くなった今を見るための眼鏡になります。「〈民主〉と〈愛国〉」とか「1968」とかの大著もこの著者らしいのですが、この一冊には論ではなく行動の書として書いている気迫が満ち満ちています。とにかく「われわれ」という言葉の可能性をしみじみ感じました。

  • 新書としては異色の1,300円する社会学者の小熊英二さんの本。
    社会を変えるにはというタイトルだが、内容は社会運動(デモなど)について。反原発についても議論している。

    結論がよくわからない本だったな。
    原発のところの海外事情については事実を淡々と客観的に書いているところもあり、そこは読みごたえがあったな。
    だけど、本当に結論がわかり難い本。
    社会学者に特有のまわりくどい言いまわしが多いからだな。フッサールとかを出しているが、カッコよくは見えるが結局どう関係があるのかよくわからないな。
    こういう本をありがたがる人間にはなりたくないな。

  • 社会を変えるというのは、どういうことなのか? いま日本で起きていることがどういうことなのか、本書は、歴史的、社会構造的、思想的に考え、社会運動の新しい可能性を探る論考。原発反対デモを社会変革の契機と捉え、社会運動の変遷(戦後日本含む)や、そもそもの民主主義の発展とその限界などの理論的背景、生活クラブや水俣病訴訟、べ平連などの社会運動の成功例や失敗例の実例などを紹介。今後、デモなどの社会運動を考えている人は一読の価値があるかもしれません。

    [ポイント]
    ◯ 今の日本社会・・・70~80年代にかけて構築された「日本型工業化社会」(大企業に中小企業が、大都市に地方都市が、男性正社員に女性と若者と高齢者が、それぞれ依存)、しかし90年代から機能不全(経済が悪くなり、規制や保護を外し、公共事業や補助金を削らざるを得なかった)
    ◯ 原発は日本の社会問題の象徴・・・戦争から始まった電力市場統制、補助金システム、無責任体制(損害賠償)、限界に来ていた原発産業、原発コスト
    ◯ 現代において共有する問題意識・・・「誰も言うことを聞かない」「自分はないがしろにされている」「居場所がない」
    ◯ 現代の日本の格差意識・・・おすそ分けの「枠」(正社員、公務員、生活保護受給者など保護されている)に入っていないという感覚
    ◯ 現代日本で「社会を変える」とは・・・「自分はないがしろにされている」という感覚を足場に動きを起こす。そこから対話と参加を促し、社会構造を変え、「われわれ」を作る動きにつなげていく。
    (「民意」がこの世に現れてきた瞬間、自分の悩みに答えが見えてきた瞬間、生き方を変える具体的方法を掴んだ瞬間、人は「まつりごと」の領域に入り込み、感動、行動する)
    ◯ デモは誰でも参加できる広場。誰でも自由に平等に、集まり意見し交流できる場。原発がこういう行動が社会に根付いてくるきっかけになればいい。

  • 社会を変えるというのはどういうことなのか。歴史的、社会構造的、あるいは思想的に考えてみようというのが本書全体の趣旨です。
    「デモをやって何がかわるのか」という問いに、「デモができる社会が作れる」との答えを至言として、社会運動が盛り上がれば良いのかなと思います。

  • デモ、対話、参加をして何が変わるのか?という問いかけに、それぞれデモ、対話、参加ができる社会ができるという至言になるほどと納得。
    声を上げなければ、行動しなければ、周りは壁のままなのである。
    60年代以前からの時代の思想の背景、高度成長期だが、部分的にはまだ給食費も払えない貧困が残っており、変わることへの後ろめたさがあったり、68年代のセクト、特に日本では武力闘争を含む前衛党などが書かれている。
    マルクス主義のお金に対する関係物象化など面白かった。

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著者プロフィール

慶應義塾大学総合政策学部教授。
専門分野:歴史社会学。

「2023年 『総合政策学の方法論的展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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