その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938532

感想・レビュー・書評

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  • 宗教団体の集団自殺事件の生き残りという女性の証言をもとに、事件の謎を明かす話。

    探偵が謎を解いていく、というよりかは、
    事件のトリックを語る4人の挑戦者(?)に対して探偵がその可能性を否定していく

    それぞれのトリックについて、細かくわかりやすく説明されていて読みやすかった

    探偵にお金を貸している相棒的な存在の女性"フーリン"の短気で喧嘩腰な地の文がテンポ良くよかった

    2022年1月5日

  • ケレン味と衒学趣味に溢れ、いわゆる「クセが強い」作風だが個人的には多重解決ミステリが好きなこともあり「こういうものが読みたかった!」とドンピシャだった。
    登場人物設定はラノベ的だが、中国語を多用することで醸成された妖しげな雰囲気がとてもいい。
    読み終わる前に著者の他作品を購入してしまった。

  • 上苙丞(ウエオロジョウ)、青い髪、オッドアイを持つ容姿端麗な探偵。非常に優秀なのだが奇蹟に固執するあまり周囲からは本来の評価より低くみられている。

    そんな彼の元に奇妙な依頼主が現れる。「私が犯人だったのかどうかを証明してほしい...」と。

    それは数十年前に起きたとある山村にあった宗教施設での集団自殺事件。依頼主はその事件の当事者であり唯一の生き残りだと言うのだ。当時の記憶は曖昧、そばには親しい人の首の切断死体...状況的には依頼主が犯人としか思えない。探偵が奇蹟の証明に挑む。

    その後、乱入者が次々と現れ依頼人そっちのけで探偵と証明バトルが起きる。何だかそれもお芝居じみてて何だこの茶番は...? と少々戸惑いを感じたのだけど、最後の方でしっかりと伏線を回収してたのでよかった。戸惑いつつも一つ一つの証明バトルは面白く、一番最後にはものすごいのが控えてて読んでて興奮した。違った角度でミステリーを表現してて見事! と思いました。

  • 2024.2.21読了

    仮説を全て否定し、奇蹟の存在証明をする、という構図がとても新鮮だった。
    キャラは濃すぎるような。

  •  発想は良い、頭も良い、しかしセンスがイマイチ。論理的思考で不可能と思える犯罪の謎を解くことを生業とするはずの探偵が「奇跡」を信じ、奇跡の実証のためにありとあらゆる仮説に反証を挙げるという設定はとても面白い。この設定ありきで考えられた事件という印象は否めないが、それを差し引いても仮説と反証の応酬は楽しめた。だが、本筋と上手く絡んでいない中国の残虐な拷問雑学や仰々しい文体、過度に容姿端麗な登場人物に小難しい人名などがことごとく邪魔をする。もっとシンプルにすれば良かったのに。

  • 山村で起きた新宗教団体の斬首集団自殺。唯一の生存者である少女は、首を斬られた少年が自分を抱えて助けてくれた記憶が残っていた。首無し聖人伝説の如き事件の真相は奇蹟か、それとも殺人事件か。

    その少女から依頼を受け、真相を追うのは奇蹟を信じる探偵・上苙丞。彼が出した結論は「奇蹟」。だが、彼の推理を覆そうと刺客たちが現れる。刺客が出す仮説を「その可能性はすでに考えた」と証言を基に切り捨てていく上苙。めくるめく推理バトルにはロジックの面白さが詰まっている。

    研ぎ澄まされていく論理は諸刃の剣。構築された砦が牢に一転する構成は見事。こういうミステリがあってもいいなと楽しめた。章のタイトルや登場人物に中国語が使われていてとっつきにくい印象があったけど、読んでみると上苙の傍にいるフーリンの立ち回りが軽妙でスパイスになっている。

    推理対決の果てに辿り着いた場所。その景色はもはや奇蹟と呼べるものだと感じた。美しい情景が頭に浮かぶ幸福感がそこにはあった。

  • 怪し気な宗教団体で起きた集団自殺に一人の生き残りが
    しかしそこには逆密室と不可能殺人があった
    これは巧妙なトリックかはたまた奇跡なのか
    探偵はあらゆる可能性を否定できれば奇跡が残ると言う
    次々と繰り出されるトリックを片っ端から否定するスタイルは斬新なミステリー作品だ

  • 初の著者作品への挑戦。
    完全にタイトルにつられ、なんか厨二心をくすぐられて購入。

    ジャンルはミステリー。すごくよく練られていて印象はグッド。だが、ミステリーあるあるでもある作者が賢すぎて(検討を重ねすぎて)ひとつ先の次元に行ってしまい、読み手が置いてけぼり現象もなきにしもあらず。そう言う意味では「すべてがFになる」と近しい雰囲気もあり。
    ただ、口調とか描写は割と軽めなので所謂ラノベのような雰囲気もありなかなか面白い。

    全ての可能性を否定することが奇跡につながると言う考え方もとても面白い。


  • ハウダニットなミステリーで、あまりに奇想天外なので途中飽きるけど、最後の理由が思ったより良い。

  • ここまで読み応えがある作品にはなかなか出会ったことがない。

    現場の見取り図なども含め、事件全体のあらましは、決して目新しくも難解でもない。むしろ古典的で単純すぎるようにさえ思える。
    どっこい、”およそ考え得る限りの犯罪可能性を否定する”ことによって真相を導きだそうとしている点で、本書は他に類をみない、斬新でレベルの高い本格推理作品になっていると思う。

    「城塚翡翠」シリーズの1作目を読んだ際、2通りの謎解きを楽しめる構造に面白みを感じたが、本作で展開される推理は2通りどころではない。しかも、すべての推理理論がかなり緻密に作り込まれている。

    さらに特筆すべきは、”手強い挑戦者たち(しかも難攻不落の黒幕がいる) VS 探偵”という対立構造を用いた”推理 VS 否定”の論理バトル的ストーリー展開だろう。
    話を引っ張る中国の女傑や、青髪イケメンの探偵をはじめとする強烈かつ魅力的なキャラクター造形も秀逸で、立ち止まって考え込むという事態はしばしば起これど、ページを繰る手が止まることはなかった。

    個人的見解ではあるが、既に高評価を得た続編もある(近々絶対に読む!)ため、映像化もほぼ間違いないのではないだろうか。というか、ぜひ映像化してほしい。(ただし、より平易なつくりが求められるとは思う。)

    こういった、精緻で機知に富んだ、舌を巻かざるを得ない作品との出会いは確かに嬉しい。嬉しいけれど・・・。
    同時に、自分は”書く側”にはなれないという現実を突きつけられたようで、ちょっと凹む。

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著者プロフィール

神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞。
第2作『その可能性はすでに考えた』は、恩田陸氏、麻耶雄嵩氏、辻真先氏、評論家諸氏などから大絶賛を受ける。同作は、2016年度第16回本格ミステリ大賞候補に選ばれた他、各ミステリ・ランキングを席捲。
続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』でも「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位を獲得した他、「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい!  2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にランクイン。さらに2017年度第17回本格ミステリ大賞候補と「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選ばれる。
また同年「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に。
他の著書に『探偵が早すぎる』(講談社タイガ)がある。

「2018年 『恋と禁忌の述語論理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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