彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940030

感想・レビュー・書評

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  • 森博嗣が帰ってきた。

  • ちょうど2016年40冊目だったので、敬愛してやまない彼の作品を。

    変幻自在ですね、森博嗣は。
    Gシリーズの一歩線を引いた感じ、Mシリーズのとぼけた感じ、とはまた違う、とてもエンターテイメントな仕上がり。

    主人公のハギリが可愛いです。少し抜けた感じが、たまらなく可愛い。ネタバレになってしまうから、多くは書けないのですが、これまでに彼が書かれてきた色々なことが、少しずつ大海に向かうようにつながってきて、それが嬉しいし楽しいし、そして少しだけ寂しいです。海に出てしまえば、それまでなんだろうかと思って。

    思想的に、共感のできる内容でした。昔から書かれてきた「自然のためを思うのなら、地下のシェルターから一度も出てこなければいい」とか「自然が尊いと決めたのは人間であって、自然ではない」とか。そういったものが、また新たな一面を見せてくれて、そのいちいちに大きく頷いておりました。
    なにが「生」でなにが「死」なのか。
    ここから、物語がどういった結論にたどり着くのか、粛々とした気持ちで見守りたいです。

  • ウォーカロンと呼ばれる人工細胞でつくられた生命体がいて、人間の寿命も長くなっている未来の話(^o^;)ウォーカロンと人間の識別を研究をしているハギリ博士(人間)の命が狙われる!(>_<)ミチルの保護者で黒髪にブルーの瞳といえば、あの方では!?と思っていたら、やっぱり出ましたねマガタ博士!しかも二世紀も昔の人と言うことが判明Σ( ̄□ ̄;)赤い魔法とウォーカロンの関係、それに百年シリーズとも絡んでくるのか?気になるけれど、まだまだ物語は始まったばかり!なので期待が膨らむ(^^)♪

  • Wシリーズ1作目。
    おそらく百年シリーズよりさらに未来の話。
    ウォーカロンと人間の区別がほとんどつかなくなった時代。その識別方法を開発したハギリ博士が命を狙われる。
    今までのシリーズよりも会話劇が少ないので、萌絵と犀川、練無と紫子、加部谷と山吹、ミチルとロイディなどの会話を楽しんで読んでいたボクとしては少し残念。
    でも、ミチルやマガタといった今までに登場した名前が登場するので、興奮する。
    森ファンにとってはとても楽しめると思うけど、森作品を読んだことがない人はわからないかもしれない。

  • もしSTAP細胞が出来てたらという未来小説。
    人間が病気になっても万能細胞で治す事が出来る。さらには人造人間のようなウォーカロンが登場する。それにつれて人類は子供を作れなくなっていった。
    面白い。文章が簡潔で淡白な書き方なので緊迫感には欠けるがリアリティに溢れている。続きが気になる。

  • いや、面白かった!
    近未来、人工細胞で作られた生命体ウォーカロン。
    その姿や中身は人間との差がほとんどなく容易に識別できない。
    彼らと共存している世界で研究者のハギリは命を狙われる。
    何に狙われ、その背景にはいったい何があるのか。
    天然モノと養殖モノの差。
    科学的で哲学的で凄くワクワクする。
    謎だらけで難しいけれど大きな秘密や陰謀には惹かれてしまうものですね。
    そしてあの博士の存在感。面白い。
    あと、余談ですがエピローグがあって良かった。本当に良かった。

  •  SFミステリというにはちょっとミステリ感薄い。

     森博嗣でした。
     まごうことなく。
     人口生命体、ウォーカロンって言葉から分かるように、あの系統です。どの、っていわれても困る。あれだよあれ、ほらっていう。どこ読んでたらいいんだろう。女王シリーズと、S&M? 真賀田四季の名前が出てくるからなぁ。S&M以降はよく知らないんだけどなんだっけ。S&Mのあと、なにかあったよねシリーズ。今はGシリーズ? ギリシャ文字のG? レタスあたりで挫折した。レタスなんとかってなかったっけ。
     この本も最終的には女王あたりに行きつくんじゃねぇかって印象でした。ミチルって名前、二回目に出てきたときに気づいた、あのミチルですか? ロイディ、どこ?
     そんで途中で接触してきた美女な。あーこれは、と思ったら案の定、「マガタ」と。完全に諸悪の根源にしか見えないよな、この字面。正直綾辻の話を読んでいて「中村青司」って名前を見るのと似た感覚がある。それか「ユイ」だな。
     たぶん、この本に書かれているような問題は、ずっと昔から延々と議論されているようなことだと思うのね。今議論されているようなことが、この本のなかでは結構あっさりクリアされているような印象もある。時間が経っているからってことだろうな。
     工学系、生物科学系の話をしているように見えて、本質は哲学だもんな、このひとの話。同一性をどこまで認めるか、究極的には「人間とはなにか」だもんなぁ。森博嗣、そういうのに興味なさそうな文体で書きつつ、すごく悩んでるんじゃねぇかって思うわ。悩むというか、考えるというか。だからまあ好きなんだよなぁ、っていう結論。
     人間とウォーカロンの違い、インスピレーションっていう。漠然としてるなぁ。発想力なのかなぁ。推測、計算は可能だけど、閃けない。両者に違いがなくなってどっちも「生きてる」からってウォーカロン主体の社会になったとしても、飛躍的な発展はなさそうだね。
     途中気になってたんだけど、人間同士での体外受精とか、そういう意味での「人間の生産」もできなくなっていたってことでいいのかな。それも人工細胞のせい? 精子と卵子が既にオリジナルで生産されなくなってるのかもしれんね。
     抜粋。


    「コミュニケーションのサインとしては、エネルギィが大きい。笑うことは、コストパフォーマンスが悪いといえます」


     この話の中では誰かが怒ったり激昂する場面ってないんだけど、それは笑う事よりももっとコスパが悪いから既に淘汰された感情表現なのかもしれない。

  • ディックの名著『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を森博嗣ワールドで展開した作品。
    人間そっくりのアンドロイド(本作ではウォーカロン)が普及した世界を舞台に人間の本質や生命とはといった古典的なテーマを交えつつ話は進んでいく。
    個人的な好みとして森博嗣が描く研究者像がすごく好きで読んでいて非常に楽しかった。
    レイチェルやフォークトカンプフ検査がどういった形でフィチャーされてゆくのか楽しみである

  • 学生の頃、「人間とアンドロイドは何が異なるのか」というようなテーマで、小論文を書かせられた。
    試験対策の課題だったか。
    捻り出して何とかそれらしい文章を書いたように記憶しているが、評価は散々だったし、自分でも答えが見出だせないまま、もやもやとした感情だけが残った。
    それを思い出した。

    物語に登場するウォーカロンには、もっと混乱させられる。
    何しろロボットのような無機質なものではなく有機体らしい。

    森先生は本当に凄い。
    実際にこういう未来が訪れるのでは無いかと思わされてしまう。
    それが恐い。
    何で恐いのだろう。
    実際にその通りになったとして、自分が生き絶えた後の世界のことだろうに。

    その恐ろしさの理由が、学生時代に合格点をもらえなかった、小論文の主題の答えになるのだろうか。
    (単純に、二世紀後にも彼女が登場したことに、恐怖したのかもしれないけれど)

    最後に。
    ウグイが生きていて、良かった。
    それが全てなのかもしれない。

  • 森博嗣版『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』か。
    個人的には「幅広く色々な作家が『電気羊』オマージュをみんな書いてくれればいいのに!そして『電気羊』アンソロジーを読みたい!!」なので、大変おいしくもぐもぐ致しました。

    どうやら森ファン向けのサービスが多いようだけれど、そちら方面は疎いので、頭に浮かぶのは「火星三部作」(の、特に『膚の下』)だったり、『ライトジーンの遺産』であったり、『華竜の宮』の陸上民と海上民だったり、『素晴らしい新世界』であったり。

    「人間て、人類てなんだ」系SFは、大変大好物です。
    続きがあるのね。楽しみ。
    これ一冊なら、そっち系SFとしてはまだまだ入口で物足りないし、エンタテイメントとしても弱いし、ね。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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