彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)
- 講談社 (2015年10月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062940030
感想・レビュー・書評
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森博嗣が帰ってきた。
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ちょうど2016年40冊目だったので、敬愛してやまない彼の作品を。
変幻自在ですね、森博嗣は。
Gシリーズの一歩線を引いた感じ、Mシリーズのとぼけた感じ、とはまた違う、とてもエンターテイメントな仕上がり。
主人公のハギリが可愛いです。少し抜けた感じが、たまらなく可愛い。ネタバレになってしまうから、多くは書けないのですが、これまでに彼が書かれてきた色々なことが、少しずつ大海に向かうようにつながってきて、それが嬉しいし楽しいし、そして少しだけ寂しいです。海に出てしまえば、それまでなんだろうかと思って。
思想的に、共感のできる内容でした。昔から書かれてきた「自然のためを思うのなら、地下のシェルターから一度も出てこなければいい」とか「自然が尊いと決めたのは人間であって、自然ではない」とか。そういったものが、また新たな一面を見せてくれて、そのいちいちに大きく頷いておりました。
なにが「生」でなにが「死」なのか。
ここから、物語がどういった結論にたどり着くのか、粛々とした気持ちで見守りたいです。 -
Wシリーズ1作目。
おそらく百年シリーズよりさらに未来の話。
ウォーカロンと人間の区別がほとんどつかなくなった時代。その識別方法を開発したハギリ博士が命を狙われる。
今までのシリーズよりも会話劇が少ないので、萌絵と犀川、練無と紫子、加部谷と山吹、ミチルとロイディなどの会話を楽しんで読んでいたボクとしては少し残念。
でも、ミチルやマガタといった今までに登場した名前が登場するので、興奮する。
森ファンにとってはとても楽しめると思うけど、森作品を読んだことがない人はわからないかもしれない。 -
もしSTAP細胞が出来てたらという未来小説。
人間が病気になっても万能細胞で治す事が出来る。さらには人造人間のようなウォーカロンが登場する。それにつれて人類は子供を作れなくなっていった。
面白い。文章が簡潔で淡白な書き方なので緊迫感には欠けるがリアリティに溢れている。続きが気になる。 -
いや、面白かった!
近未来、人工細胞で作られた生命体ウォーカロン。
その姿や中身は人間との差がほとんどなく容易に識別できない。
彼らと共存している世界で研究者のハギリは命を狙われる。
何に狙われ、その背景にはいったい何があるのか。
天然モノと養殖モノの差。
科学的で哲学的で凄くワクワクする。
謎だらけで難しいけれど大きな秘密や陰謀には惹かれてしまうものですね。
そしてあの博士の存在感。面白い。
あと、余談ですがエピローグがあって良かった。本当に良かった。 -
ディックの名著『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を森博嗣ワールドで展開した作品。
人間そっくりのアンドロイド(本作ではウォーカロン)が普及した世界を舞台に人間の本質や生命とはといった古典的なテーマを交えつつ話は進んでいく。
個人的な好みとして森博嗣が描く研究者像がすごく好きで読んでいて非常に楽しかった。
レイチェルやフォークトカンプフ検査がどういった形でフィチャーされてゆくのか楽しみである -
学生の頃、「人間とアンドロイドは何が異なるのか」というようなテーマで、小論文を書かせられた。
試験対策の課題だったか。
捻り出して何とかそれらしい文章を書いたように記憶しているが、評価は散々だったし、自分でも答えが見出だせないまま、もやもやとした感情だけが残った。
それを思い出した。
物語に登場するウォーカロンには、もっと混乱させられる。
何しろロボットのような無機質なものではなく有機体らしい。
森先生は本当に凄い。
実際にこういう未来が訪れるのでは無いかと思わされてしまう。
それが恐い。
何で恐いのだろう。
実際にその通りになったとして、自分が生き絶えた後の世界のことだろうに。
その恐ろしさの理由が、学生時代に合格点をもらえなかった、小論文の主題の答えになるのだろうか。
(単純に、二世紀後にも彼女が登場したことに、恐怖したのかもしれないけれど)
最後に。
ウグイが生きていて、良かった。
それが全てなのかもしれない。 -
森博嗣版『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』か。
個人的には「幅広く色々な作家が『電気羊』オマージュをみんな書いてくれればいいのに!そして『電気羊』アンソロジーを読みたい!!」なので、大変おいしくもぐもぐ致しました。
どうやら森ファン向けのサービスが多いようだけれど、そちら方面は疎いので、頭に浮かぶのは「火星三部作」(の、特に『膚の下』)だったり、『ライトジーンの遺産』であったり、『華竜の宮』の陸上民と海上民だったり、『素晴らしい新世界』であったり。
「人間て、人類てなんだ」系SFは、大変大好物です。
続きがあるのね。楽しみ。
これ一冊なら、そっち系SFとしてはまだまだ入口で物足りないし、エンタテイメントとしても弱いし、ね。