彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)
- 講談社 (2015年10月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062940030
感想・レビュー・書評
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森博嗣ver. 【アンドロイドは電気羊の夢を見るか】です。人間を人間たらしめるものとは一体何なのか、を巻き込まれ型主人公が何度も殺されかけながら自他に問い続ける、近未来ファンタジィ。
森先生の手にかかると、ディストピアもフラットな印象になるよなぁ。
非現実的なとこが逆に生々しい。ドラマチックな抑揚をつけて語られないんだけど、実は大変な事件に巻き込まれてる主人公。
あーこれこれ…私、森先生のこういうクールなとこやっぱ好きやねん…と久しぶりに目を細めちゃいました。一気読み!だけど、ブクログサボってはや何ヶ月…ですって…今気付いたわ…(震)。
ちょっと映画の方に浮気をしておりましたが、私のルーツはやっぱ紙だよな。ブクログだよな!ということで、お久しぶりです、ブクログ様。これからもお世話になります…。
やっぱり私は、森作品の死生観というか透徹とした人間観が好きなんだなー。
アンドロイド含む他の種に対して、人間を優越した位置に置かない、いっそ冷淡と言ってもいい位に人間の思い上がったエゴを突き放す感じが、私には理解できないからこそ憧れるのよねー。
倫理とは何かを問う体裁ではあるけれど、飽くまでも森先生のアンサはシンプル。
人間とウォーカロンに、違いは、無い!(≒無くなっていく)
以上!!
そして、やっぱり主人公と私達読者の前に現れる「彼女」の存在感。ページ数にして3ページ位なのにこの圧倒的なツメ跡残していく感たるや…恐ろしいなあ(嬉)。
森作品の彼女を主軸としたこの壮大なサーガ(STAR WARS引きずってる)は、一体どこに向かっているんでしょう。
どんな形の結末を迎えるんでしょう。
森先生、ぶっちゃけ先生の収入のディテールには興味無いから小説書いておくんなまし…と、ファンにあるまじき暴言を吐いたところで、この辺で〆ます。お粗末様でございました。
マスターamazon、いつもお世話になります…今回もまるっと転載…
ウォーカロン。「単独歩行者」と呼ばれる人工細胞で作られた生命体。人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。研究者のハギリは、何者かに命を狙われた。心当たりはなかった。彼を保護しに来たウグイによると、ウォーカロンと人間を識別するためのハギリの研究成果が襲撃理由ではないかとのことだが。人間性とは命とは何か問いかける、知性が予見する未来の物語。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
待っていました、待望の新シリーズ。Wシリーズと聞けばそれは連続していると誰もが期待するでしょう。
しかし期待はまったく外れたかのように、近未来の日本が描かれる。よくわからないまま隔離されるため、序盤は少々何が起きているのかわからずだらだらしてしまうが、この短い中で話をとんとひっくり返しておもしろくしてしまうのがまた流石、と思ってしまうのは、信者の感想かもしれない。
森さんの作品を読んでいる方は、ある単語がひたすら気になるかと思う。そしてやはり、一見なんでもない単発ものに思える話が、あのシリーズにつながっていく。
森さんのなかであの世界はこんな未来につながっていたのかと思うと、あの人の思考を少し見ることができたような、そんな勘違いができてしまう。
意外性を感じたのは、ある種の価値観、倫理観を問う世界だということ。森さんの作品で倫理が論点になるとは思いもしなかった。しかしこの考えに、正しい答えなどないのかもしれない。
5作品予定だったか、この世界での結末はいったいどういうものになるのか、期待をこめて☆は5つ。──連作がまた読めるというだけで、満足してしまっているので、正当な評価とは云えないかもしれない。 -
あなたに会うために
死ねないと思った
死なないと決めた
人類のことなんて
本当はどうでもよくって
ただあなたに会いたくて
僕一人の命を
あなたまで繋ぐために
それだけのために
みんな生きている
僕は生きている -
あらすじ(背表紙より)
ウォーカロン。「単独歩行者」と呼ばれる人工細胞で作られた生命体。人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。研究者のハギリは、何者かに命を狙われた。心当たりはなかった。彼を保護しに来たウグイによると、ウォーカロンと人間を識別するためのハギリの研究成果が襲撃理由ではないかとのことだが。人間性とは命とは何か問いかける、知性が予見する未来の物語。 -
「人間を信じるのは、人間の代表的な弱点の一つです」
「何が判別できるのですか?」
「君は、それを知っているはずだ」
「いえ、だいたいの理解はありますが、先生の表現を伺いたかったので」
「どうしてだろうね…。それは、今でも解決を見ない問題のひとつだ。人間以上のものは存在してはならない、という簡単な言葉に集約される。しかし、そんな話をしたら、人間よりも力の強いもの、正確に速く計算するもの、人間よりも友好的で、悪事を働かないもの、人間よりもエネルギィ効率が良くて、社会に対する貢献度が高いもの、いくらでも存在するんだ。ただ、それがコンパクトにまとまって、見た目が人間に近づくほど、抵抗する人たちが増える。宗教的な問題だと言いだす連中が今でもいる。神に対する冒涜だとかね…。今まで冒涜の限りを尽くしてきたのに、今さらだよね」
「ただ、人間らしい思考というものの本質を知りたかったんだ。人間はどんなふうに考えているか、ということが、つまり人間とは何かという問題の答えになると思った。」
「生物は複雑なものだ。これを作ることができるのは神のみだ、とね。だけど、結局は、単なるタンパク質だ。化合物なんだ。その仕組みは明らかになれば、いたって単純だといえる。単純でなければ、細胞は再生できない。単純だからこそ、これだけ膨大な数が集まっても、だいたい同じものになる。複雑だと思い込みたい傾向を人間は持っているんだ。自分たちを理解しがたいものだと持ち上げたい心理が無意識に働く。でも、誰もがだいたい同じように怒ったり笑ったりしているんじゃないかな」
『店員が僕のアルコールと、彼女のカクテルを持ってきた。そこで、グラスを持ち上げて、儀礼的な挨拶を交わした。これはどうしてこんなことをするのか、僕は知らない。たぶん、誰も知らないのではないか。』 -
決して突飛ではない,現在の延長線上に確かに存在するかの如き未来を,SFの要素を感じさせない筆致ですらりと描く.相も変わらず要所要所に容赦のない冷徹な皮肉が内包されているが,ふと立ち止まって,これだけ医学の進歩した現代において,生命とは,そして人とは一体なんぞやを顧みるきっかけを得る.
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新シリーズw系列第一作,電気羊に思わせるタイトルや引用の素敵さはたまらないです。先生の人工知能に関んする本をずっと読みたかった、百年と冬は触れただけであまり深く意見を述べてなかった遺憾、今作はウォーカロンと人類存在意義に関してたっぷり先生の考えを味わえることができて嬉しいあまりです~
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『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を森博嗣的にver.upし、さらに森作品のシリーズの新しいひとつに連なっているというすごさ。四季シリーズや女王の百年密室ともリンクしていく。森博嗣はやはりすごいというかとんでもないということを改めて思う。