彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
3.77
  • (144)
  • (279)
  • (229)
  • (26)
  • (8)
本棚登録 : 2790
感想 : 242
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940030

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 森博嗣ver. 【アンドロイドは電気羊の夢を見るか】です。人間を人間たらしめるものとは一体何なのか、を巻き込まれ型主人公が何度も殺されかけながら自他に問い続ける、近未来ファンタジィ。

    森先生の手にかかると、ディストピアもフラットな印象になるよなぁ。
    非現実的なとこが逆に生々しい。ドラマチックな抑揚をつけて語られないんだけど、実は大変な事件に巻き込まれてる主人公。

    あーこれこれ…私、森先生のこういうクールなとこやっぱ好きやねん…と久しぶりに目を細めちゃいました。一気読み!だけど、ブクログサボってはや何ヶ月…ですって…今気付いたわ…(震)。

    ちょっと映画の方に浮気をしておりましたが、私のルーツはやっぱ紙だよな。ブクログだよな!ということで、お久しぶりです、ブクログ様。これからもお世話になります…。

    やっぱり私は、森作品の死生観というか透徹とした人間観が好きなんだなー。
    アンドロイド含む他の種に対して、人間を優越した位置に置かない、いっそ冷淡と言ってもいい位に人間の思い上がったエゴを突き放す感じが、私には理解できないからこそ憧れるのよねー。

    倫理とは何かを問う体裁ではあるけれど、飽くまでも森先生のアンサはシンプル。

    人間とウォーカロンに、違いは、無い!(≒無くなっていく)
    以上!!

    そして、やっぱり主人公と私達読者の前に現れる「彼女」の存在感。ページ数にして3ページ位なのにこの圧倒的なツメ跡残していく感たるや…恐ろしいなあ(嬉)。

    森作品の彼女を主軸としたこの壮大なサーガ(STAR WARS引きずってる)は、一体どこに向かっているんでしょう。
    どんな形の結末を迎えるんでしょう。

    森先生、ぶっちゃけ先生の収入のディテールには興味無いから小説書いておくんなまし…と、ファンにあるまじき暴言を吐いたところで、この辺で〆ます。お粗末様でございました。


    マスターamazon、いつもお世話になります…今回もまるっと転載…

    ウォーカロン。「単独歩行者」と呼ばれる人工細胞で作られた生命体。人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。研究者のハギリは、何者かに命を狙われた。心当たりはなかった。彼を保護しに来たウグイによると、ウォーカロンと人間を識別するためのハギリの研究成果が襲撃理由ではないかとのことだが。人間性とは命とは何か問いかける、知性が予見する未来の物語。

  • 待っていました、待望の新シリーズ。Wシリーズと聞けばそれは連続していると誰もが期待するでしょう。

    しかし期待はまったく外れたかのように、近未来の日本が描かれる。よくわからないまま隔離されるため、序盤は少々何が起きているのかわからずだらだらしてしまうが、この短い中で話をとんとひっくり返しておもしろくしてしまうのがまた流石、と思ってしまうのは、信者の感想かもしれない。

    森さんの作品を読んでいる方は、ある単語がひたすら気になるかと思う。そしてやはり、一見なんでもない単発ものに思える話が、あのシリーズにつながっていく。
    森さんのなかであの世界はこんな未来につながっていたのかと思うと、あの人の思考を少し見ることができたような、そんな勘違いができてしまう。

    意外性を感じたのは、ある種の価値観、倫理観を問う世界だということ。森さんの作品で倫理が論点になるとは思いもしなかった。しかしこの考えに、正しい答えなどないのかもしれない。
    5作品予定だったか、この世界での結末はいったいどういうものになるのか、期待をこめて☆は5つ。──連作がまた読めるというだけで、満足してしまっているので、正当な評価とは云えないかもしれない。

  • あなたに会うために
    死ねないと思った
    死なないと決めた

    人類のことなんて
    本当はどうでもよくって

    ただあなたに会いたくて
    僕一人の命を
    あなたまで繋ぐために

    それだけのために
    みんな生きている
    僕は生きている

  • あらすじ(背表紙より)
    ウォーカロン。「単独歩行者」と呼ばれる人工細胞で作られた生命体。人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。研究者のハギリは、何者かに命を狙われた。心当たりはなかった。彼を保護しに来たウグイによると、ウォーカロンと人間を識別するためのハギリの研究成果が襲撃理由ではないかとのことだが。人間性とは命とは何か問いかける、知性が予見する未来の物語。

  • 「人間を信じるのは、人間の代表的な弱点の一つです」

    「何が判別できるのですか?」
    「君は、それを知っているはずだ」
    「いえ、だいたいの理解はありますが、先生の表現を伺いたかったので」

    「どうしてだろうね…。それは、今でも解決を見ない問題のひとつだ。人間以上のものは存在してはならない、という簡単な言葉に集約される。しかし、そんな話をしたら、人間よりも力の強いもの、正確に速く計算するもの、人間よりも友好的で、悪事を働かないもの、人間よりもエネルギィ効率が良くて、社会に対する貢献度が高いもの、いくらでも存在するんだ。ただ、それがコンパクトにまとまって、見た目が人間に近づくほど、抵抗する人たちが増える。宗教的な問題だと言いだす連中が今でもいる。神に対する冒涜だとかね…。今まで冒涜の限りを尽くしてきたのに、今さらだよね」

    「ただ、人間らしい思考というものの本質を知りたかったんだ。人間はどんなふうに考えているか、ということが、つまり人間とは何かという問題の答えになると思った。」

    「生物は複雑なものだ。これを作ることができるのは神のみだ、とね。だけど、結局は、単なるタンパク質だ。化合物なんだ。その仕組みは明らかになれば、いたって単純だといえる。単純でなければ、細胞は再生できない。単純だからこそ、これだけ膨大な数が集まっても、だいたい同じものになる。複雑だと思い込みたい傾向を人間は持っているんだ。自分たちを理解しがたいものだと持ち上げたい心理が無意識に働く。でも、誰もがだいたい同じように怒ったり笑ったりしているんじゃないかな」

    『店員が僕のアルコールと、彼女のカクテルを持ってきた。そこで、グラスを持ち上げて、儀礼的な挨拶を交わした。これはどうしてこんなことをするのか、僕は知らない。たぶん、誰も知らないのではないか。』

  • 決して突飛ではない,現在の延長線上に確かに存在するかの如き未来を,SFの要素を感じさせない筆致ですらりと描く.相も変わらず要所要所に容赦のない冷徹な皮肉が内包されているが,ふと立ち止まって,これだけ医学の進歩した現代において,生命とは,そして人とは一体なんぞやを顧みるきっかけを得る.

  • 「赤い魔法を知っているか?」

    全てのカギは、この言葉が握っているのかもしれない。

    舞台は、人工細胞で作られた生命体「ウォーカロン」が普及した未来。
    この世界の「人間」は肉体の大部分を人工細胞に置き換えて半永久的な命を得ており、名目上は別存在とされているものの、実の所「ウォーカロン」との違いはほとんどない。
    主人公であるハギリは現在「ウォーカロン」と「人間」を識別するための研究を行っているのだが、何者かに命を狙われることとなる。
    政府関係者の女性・ウグイに守られながら犯人を探るうち、ハギリは
    「人間とは何か?今、ウォーカロンと分ける必要は本当にあるのか?」
    という問いに直面することとなる。
    そんなハギリを見透かすように、一度きりしか読めない不思議な童話や謎の美女が現れて…。

    ミステリとSFが出会うとこんなに面白いのか!
    というのが、読後の素直な感想。
    SFとしてしっかりとした環境設定がなされているし(人間のだめになった器官が人工細胞の移植技術で取り替え可能になるあたりなんて、いかにも現実になりそう)、犯人を推察する、ミステリならではの楽しさも味わえる。
    これは、とんでもなく私好みの面白いシリーズが始まったぞ…

    今回の犯人の目的は、「あ、そっち…」とちょっと拍子抜けしてしまうもの(もっとも、私はそういうオチが嫌いでない。むしろハギリがかわいく思えたくらいだ)だったが、あちこちに散らばった伏線は、このシリーズ全体の「謎」につながるものなんだろう。
    間違いなく、あの謎の美女と「赤い魔法を知っている?」は関係してくるはず…!
    (マガタ博士はアシモフ回路のようなものをウォーカロンに組み込んでいて、「赤い魔法を知っている?」はそのキーなのではないか、なんて予想を立ててみていたり…でも、そうするとハギリが識別システムを組むまでもなく識別できちゃうことになるなぁ…)
    そう思えば、今から次作が待ち遠しくて仕方ない。

  • 新シリーズw系列第一作,電気羊に思わせるタイトルや引用の素敵さはたまらないです。先生の人工知能に関んする本をずっと読みたかった、百年と冬は触れただけであまり深く意見を述べてなかった遺憾、今作はウォーカロンと人類存在意義に関してたっぷり先生の考えを味わえることができて嬉しいあまりです~

  • 新シリーズ。SF。
    22世紀後半。百年シリーズから数十年後。

    「赤い魔法」、ミチル、ミチルの保護者と名乗る女性。
    どうしても他シリーズとのリンクが気になる。
    パティとかロイディも出てきてほしい。
    (わかってはいたけど)森さんの思考は、現実の時間より早く歩みを進めているみたい。

  • 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を森博嗣的にver.upし、さらに森作品のシリーズの新しいひとつに連なっているというすごさ。四季シリーズや女王の百年密室ともリンクしていく。森博嗣はやはりすごいというかとんでもないということを改めて思う。

全242件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森博嗣の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×